生前贈与の相続税への加算対象期間の改正点とは? 事例とあわせて解説
配信日: 2024.05.08
この改正点は、相続が発生した多くの方に影響する可能性が高いものなので、簡単な事例を交えて、概要を確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
課税対象期間の見直しの改正点の概要
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与された財産について適用されます。
1つ目の改正点は、相続税が課税される期間です。相続人等(相続または遺贈により財産を取得した方)が、その相続開始前に被相続人から暦年課税による贈与により財産を取得したことがある場合は、その財産の価額を相続税の課税価格に加算することとされています。
これは「生前贈与加算」と言われ、改正前は相続開始前3年以内の財産を対象としていましたが、7年以内の財産を含める形に見直しされました。単純に捉えれば、改正前より4年も延長された期間の財産が対象となります。
2つ目の改正点は、対象となる財産です。生前贈与加算の対象となる財産のうち、相続開始前3年以内の財産以外(延長された4年分)の財産の合計額から100万円を控除した残額が対象となります。
3つ目の改正点は、当面の間、被相続人(贈与者)の相続開始日によって加算対象期間が異なる点です。下記の図表で確認してみましょう。
加算対象期間について
被相続人の相続開始日ごとの加算対象期間は図表1のとおりです。
図表1
国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらましより筆者作成
ここでは令和6年1月1日以後の贈与財産を対象としているため、令和12年12月31日までの当面の期間の相続については、加算対象期間は丸々7年間ではなく、少し短い期間となります。
もちろん、令和5年12月31日以前の贈与財産については、改正前の相続開始前3年以内が加算対象期間となります。
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加算対象期間の具体的な事例
例えば、父(被相続人)が令和11年3月31日(相続開始日)に亡くなり、子2人(長男、次男)が相続財産を取得したケースで考えてみましょう。子2人はおのおの父から暦年課税による生前贈与を受けていました。生前贈与の内容は図表2のとおりです。
図表2:長男・次男への生前贈与額
上記の事例での加算対象期間は、令和6年1月1日から令和11年3月31日までの、5年3ヶ月の期間となります。そのため、Aの贈与は相続税の対象外となります。また、DとEは相続開始前3年以内の贈与財産となり、それ以外のBとCの合計額から100万円を控除した残額との合計が、生前贈与加算の対象となります。
長男:{(B 300万円+C 150万円)-100万円}+D 250万円+E 200万円=800万円
次男:{(B 200万円+C 100万円)-100万円}+D 150万円+E 150万円=500万円
つまり合計1300万円が、父の相続に関する相続税の課税価格に加算されます。
まとめ
暦年課税による生前贈与の加算対象期間等の改正は、令和6年1月1日以後の贈与財産に適用されることを覚えておきましょう。
相続開始日が令和8年12月31日までの期間は、改正前と同様に相続開始前3年間の贈与財産が対象となります。また、令和9年1月1日から令和12年12月31日まで(令和6年1月1日から7年経過)の相続の場合には、令和6年1月1日から相続開始日までの贈与財産が対象となります。
出典
国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー