10年前に離婚し、息子の大学卒業を機に再婚しました。再婚相手には幼い子どもが2人、“もしものとき”に再婚相手と子どもに財産が多く残るようにしたい! 可能でしょうか?

配信日: 2024.12.29

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10年前に離婚し、息子の大学卒業を機に再婚しました。再婚相手には幼い子どもが2人、“もしものとき”に再婚相手と子どもに財産が多く残るようにしたい! 可能でしょうか?
自分に万一のことがあった場合、再婚相手(後妻)の子どもが幼少であれば、今後の養育費や学費のことを考え、再婚相手(後妻)の子どものために財産を残してあげたいと考える方も少なくないでしょう。本記事で、どのような方法があるか解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

法定相続人

相続人の配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。この配偶者は、被相続人の死亡時において法律上の配偶者です。再婚している場合は、前婚の配偶者(前妻)ではなく、再婚後の配偶者(後妻)が相続人です。
 
配偶者以外の推定相続人は、法律で相続の順位が定められています。第一順位は子どもです。第一順位の相続人がいない場合には、第二順位である父母が相続人になります。第一・第二順位の相続人がいない場合は、第三順位である兄弟姉妹が相続人となります(民法887条・889条)。
 
相談例のケースでは、法定相続人は、再婚相手(後妻)と前婚の配偶者(前妻)との子ども(実子)になります。
 

法定相続分

民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産の分け方を合意できなかったときの分け方の目安です(民法900条・902条)。
具体的には、法定相続分は相続人が「配偶者と子ども」の場合、配偶者の法定相続分が2分の1、子どもの法定相続分が2分の1です。子どもが3人ときはそれぞれの法定相続分は6分の1(1/2×1/3)となります。
 
相続人が「配偶者と父母」の場合は、配偶者の法定相続分が3分の2、父母の法定相続分が3分の1です。相続人が「配偶者と兄弟姉妹」の場合は、配偶者の法定相続分が4分の3、父母の法定相続分が4分の1になります。
 

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遺留分

再婚相手(後妻)やその子どもに全財産を相続させる旨の遺言を書いても、その遺言は無効にはなりません。しかし、実子は納得しないでしょう。そこで、亡くなった方の兄弟姉妹以外の相続人には遺産の最低取り分が保障されています(遺留分)。
 
遺留分の割合は、直系尊属(親や祖父母)のみが相続人の場合はその3分の1、それ以外の場合にはその2分の1です(民法1042条)。遺留分を侵害された相続人は、「相続開始と遺留分侵害」を知ってから1年以内に侵害者へ遺留分侵害請求を行使し、お金で取り戻すことができます(民法1046条・1048条)。
したがって、遺言の内容が思いどおりに実行されない場合もあります。
 

再婚と相続

子どもを持つ親同士が再婚した場合、お互いの子どもと養子縁組をしないかぎり、再婚相手の子どもに相続権はありません。同様に前妻の間の子どもには、後妻の財産を相続する権利はありません。つまり、一緒に生活していても法律上は親子ではないので、その子どもは再婚相手が死亡しても相続人にはなりません。
 
再婚相手の子どもと養子縁組した場合には、その子どもは相談者の第一順位の相続人となります(民法809条)。万一のとき、再婚相手の子どもに財産を残す方法として養子縁組を検討しましょう。相続人が増えることで相続税の基礎控除が1人につき600万円増えるので、相続税の節税になります。ただし、実子がいる場合は基礎控除に算入できるのは1人までです。
 
相談例のケースでは、法定相続人は再婚相手(後妻)とその子ども、および相談者の実子となります。
 

再婚と遺言

遺言がない場合、遺産の分け方は法定相続分が目安です(民法900条・902条)。今回の相談例は再婚相手(後妻)の子どもが幼少なので、今後の養育費や学費のことを考える必要があるでしょう。自分が万一のときに再婚相手(後妻)と子どもに財産を相続させたい場合は、遺言を作成しておくのが有益です。
 
遺言は、自筆証書遺言に比べ手数料はかかります。公正証書遺言で作成しておくと、法律の専門家が作成し、公証役場で保管されるので、遺言の形式不備等により無効になるおそれがなく安心です。
ただし、トラブルを回避するには、前妻の子どもの遺留分を侵害しないように遺言書を作成するとよいでしょう(民法1042条)。
 

生命保険金の受取人の変更

生命保険に加入している方は、多いと思われます。前妻を死亡保険金の受取人に指定していた場合、再婚相手(後妻)またはその子に受取人を変更しましょう。
離婚後そのままにしておくと、死亡保険金は前妻に支払われます。この手続きには、受取人である前妻の同意は不要なので、簡単に受取人の変更ができます。
 
生命保険金は受取人が指定されている場合、受取人固有の財産として扱われ、遺産分割の対象にはなりませんので、死亡保険金を巡って帰属のトラブルを回避できるでしょう。
 

出典

デジタル庁 e-GOV 法令検索 民法(809条、900条、902条、1042条など)
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
法務局 自筆証書遺言書と公正証書遺言書の比較
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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