20年物のエアコンを使う親に、10万円の最新式の省エネエアコンをプレゼントすると贈与になりますか?
配信日: 2025.01.04
執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
贈与と贈与税
そもそも贈与とは、どのようなことをいうのでしょうか。少し難しい話になりますが、民法では、「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」としています。
つまり、Aさんが自分のお財布からエアコンを買ってプレゼントするとご両親に言い、ご両親が承諾すればエアコンのプレゼントは贈与となるわけです。贈与を受けた人には贈与税が課税されますが、すべての贈与が課税の対象になるわけではありません。
Aさんは、エアコンをプレゼントすることで贈与税を払ったり、税務署に申告したりする必要がないか、またどの程度の贈与なら贈与税がかからないかを確認したいとのことです。
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額で課税されるかどうかを判断します。基礎控除が110万円あるので、1年間の合計が110万円以下であれば、申告・納税の必要はありません。
気を付けておきたいのは、贈与税は贈与を受けた人に課される税金なので、基礎控除額は贈与を受けた人ごとに110万円となることです。1年間に複数の人から贈与を受けた場合も、その贈与を受けた合計額から控除できる基礎控除額は贈与者の人数にかかわらず110万円です。
図表1
例えば、図表1の例1でYがXから1年間に100万円の贈与を受けても、Yが同じ年にほかの贈与を受けていなければ贈与税はかかりません。また、例2ではXは合計200万円を贈与していますが、贈与を受けたYとZが同じ年にほかに贈与を受けていなければ、それぞれ110万円の基礎控除額を超えていないので、贈与税はかかりません。
図表2
一方、図表2の例3のようにYがXから100万円、Zからも100万円の贈与を受けた場合には、合計額の200万円が基礎控除額110万円を超えるので、Yは贈与税の申告をして納税しなければなりません。
親への援助
ただし、今回のAさんのケースは、贈与税の課税対象にならない可能性があります。国税庁ホームページ(※)では、贈与税がかからない財産として「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」としています。
Aさんの両親は少ない年金を節約しながら生活しており、Aさんは今ある20年前の古いエアコンを買い替えてあげたいと考えているのです。昨今の夏の猛暑を考えればエアコンは生活必需品ですし、10万円のエアコンは決してぜいたく品でもありません。したがって、Aさんが扶養義務者として両親にエアコンをプレゼントしても、贈与税の課税対象にならない可能性が高いと思われます。
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冷蔵庫もプレゼントしても贈与税はかからない?
親への援助が贈与税の対象にならない場合は、1年間に110万円までという非課税の基準は考えなくてもよくなります。ただし、課税されるか非課税なのかは個々のケースで異なり、最終的に税務署に判断をゆだねることになります。であれば、110万円の基礎控除額を超えない範囲でプレゼントをするほうが安心ではないでしょうか。
冷蔵庫も最新式のものは、省エネ性能が高くなっています。新しいものに買い替えることで、電気代も抑えられるので、ご両親も喜ばれるでしょう。ただし、Aさんご自身の家計や老後資金の準備も重要です。無理のない範囲で援助を考えましょう。
出典
(※)国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者