<相続税対策>遺言状。相続の内容を指定する。作成の目的とポイント
配信日: 2017.08.22 更新日: 2019.01.07
遺言状作成の基本ルール
遺言状は被相続人の意思が反映できるため、財産処分、配分方法などを指示できます。これが遺言状を作成する目的です。しかし「自宅の土地は長男に、銀行預金は長女に相続させたい」といった単なるメモ書き程度のものは、遺言状としての効力は全くありません。
もし遺言状を自分で書くときは、必ず自筆で(パソコン利用などはダメ)、書かれた日付を正確に、自分の署名と捺印を忘れずに、といった必須条件をクリアする必要があります。内容についても、誤解を与えやすい表現やあいまいな表現を避け、財産の記載漏れのないように、仕上げる必要があります。必ず1人で書くことが前提で、夫婦共同での遺言状などは認められません。
効力を発揮させるための注意点
遺言状は、書いた後に時間が経つにつれ、気持ちが変化することもあります。とくに自筆で書く遺言状は、何回でも書き直しが可能です。初めから書き直してもいいですが、文字を棒線で引き内容を一部修正することもできます。作成者の死後、遺言状が何通か発見されたときは、いちばん新しい日付で書かれたものが効力を発揮します。相続人の1人または複数が、家庭裁判所の検認を受ける前に、勝手に見たりすると効力を失います。
遺言状はなるべく正確さが必要なため、注意点として、
①箇条書きを原則とする
②土地・家屋については登記簿の表記に
③組織の名称や株式の数量は正確に表記
④期日に吉日などの表現は使わない
⑤遺言者の氏名は戸籍上の氏名で
⑥預金残高は変動するので「すべて」といった表現で
⑦偽造防止のため封印する
⑧ビデオや録音はしない
といった要件を満たすことが大切です。
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遺言状がないと「遺産分割協議書」を作成
遺言状がない場合は、相続人同士で財産をどのように分けるのかの、話し合いが必要になります。どの財産を誰が相続するのかを話し合い、全員が納得し合意した後に「遺産分割協議書」をつくり、それに署名・捺印がなければ、手続きは完了しません。そのために、かなりの日数を要すこともあります。
各人の遺留分が尊重されることは前提です。また相続人の配偶者などが話に加わると、混乱することもあるので、法定相続人だけでの話し合いが最善です。しかし、意見が対立する事態を避ける意味でも、遺言状は効力を発揮します。遺言状があれば、遺産分割協議書は不要で、遺言内容に沿って円滑に相続を進めることができるからです。
極端な内容は遺言が無効になる
例えば、複数の相続人がいるにもかかわらず「全財産を長女に相続させる」「長男の嫁に半分の財産を相続させたい」といった極端な内容の遺言は認められません。法定相続人に最低限の権利として「遺留分」が認められているからです。遺留分とは法定相続分の2分の1にあたる分です。
遺言状は、この遺留分を侵害しないことを前提に書かれることが大切です。どうしても遺言者が遺留分を侵害してまで相続額を変更したいときには、生前に相続人たちと話し合いの機会をもち、正しく自分の意向を伝え、遺留分を放棄してもらう必要があります。
遺留分を考慮した遺言状は有効
遺留分を侵害しなければ、「世話になった長男には少し多めに」とか「親戚の子にいくらか形見分けをしたい」という内容の遺言状は有効です。他の相続人の遺留分を侵害しない範囲で、相続額を指定することが出来るからです。このため被相続人が、法定相続とは異なる内容の相続をさせたい場合には、遺言状は不可欠になります。遺言状の末尾に、なぜこのような財産配分にしたのかという遺言者の気持ちや、希望する葬儀の方法を書くことができます。これは通常の遺言内容とは別に「付言事項」として記載されるもので、遺言者の心情を相続人に理解してもらい、より円滑な相続を実現することに役立ちます。