更新日: 2019.08.16 贈与

「祖父母が孫へ教育資金をまとめて贈与」は注意!改正で非課税制度はどう変わった?

執筆者 : 新美昌也

「祖父母が孫へ教育資金をまとめて贈与」は注意!改正で非課税制度はどう変わった?
祖父母等の直系尊属から30歳未満の孫などに教育資金を贈与する場合、一括であっても1500万円まで贈与税がかからない、教育資金の一括贈与の非課税制度があります。2019年3月31日までの適用期限が2年延長され、2021年3月31日までとなる一方、従来に比べ条件が厳しくなりました。
 
この制度は従来、祖父母などが孫などに教育資金を一括して贈与しておけば、祖父母などが亡くなった時に相続財産から除かれるので、相続税対策としてよく利用されていました。この節税部分が改正され、相続税対策にも影響がでます。改正後の条件を確認しておきましょう。
 

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新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

教育費っていくらかかる?

文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」の結果によると、「学習費総額」(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、公立幼稚園23万4000円、私立幼稚園48万2000円、公立小学校32万2000円、私立小学校152万8000円、公立中学校47万9000円、私立中学校132万7000円、公立高等学校(全日制)45万1000円、私立高等学校(全日制)104万円となっています。
 
ちなみに、学校教育費は授業料、入学金、学用品費、通学用品費などを、学校外活動費は学習塾、習い事などへの支出をさします。
 
幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間、全て私立に通った場合の学習費総額は約1770万円、全て公立に通った場合には約540万円かかります。大学進学となるとさらに学費がかかります。
 
大学の初年度納付金(入学金、授業料、施設設備費)は、国立大学82万円、私立大学文科系学部115万円、私立理科系学部152万円となっています(文部科学省調査、平成28年度)。
 
4年間では、国立大学250万円、私立大学文科系学部370万円~420万円、私立大学理科系学部530万円~580万円程度です。このように私立大学の場合は、進学先の学部により大きく学費が異なるので留意しましょう。
 
大学等への進学となると下宿する方も多いと思います。生活費も年間120万円以上は準備しておきたいところです。
 

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教育資金の準備

高等学校までは公立に通うことができたとしても、国立大学への進学はハードルが高く、私立大学に進学せざるを得ないという現実もあります。すでに見たように、比較的学費の負担が軽い私立大学文科系学部でも4年間の学費が370万円~420万円もかかります。
 
こうした多額の資金をどうやって準備すれば良いのでしょうか? 子どもが生まれたときからコツコツと積み立てるのが理想です。手段としては学資保険や「つみたてNISA」などがあります。原資は児童手当を活用すると良いでしょう。
 
しかし、大学の教育資金の準備を十分に行っているご家庭は多くなく、大学生の3人に1人が「貸与型奨学金」を利用しているのが現実です。もし、祖父母から支援してもらえるのなら、信託銀行などが扱う「教育資金贈与信託」を活用してみてはいかがでしょうか?
 
通常、贈与は年間110万円まで非課税ですが、この制度を活用すれば1500万円まで非課税で教育費の支援を受けることができますし、祖父母にとっては相続税対策にもなります。
 

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教育資金の一括贈与の税制改正

改正前は、この制度を利用して贈与した教育資金は相続税の対象になりませんでした。2019年4月1日以降は、贈与が相続開始前3年以内の場合、以下の場合を除いて一括贈与した教育資金の残額が相続税の対象となりました。
 
・贈与された孫が23歳未満である
・学校等に在学している
・教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講している

 
その他の主な改正点としては、「受贈者の所得要件の追加」「教育資金の範囲の見直し」「教育資金口座に係る契約の終了事由の見直し」があります。
 
「受贈者の所得要件の追加」に関し、改正前は受贈者に所得制限がありませんでしたが、改正後は前年の合計所得金額が1000万円を超える場合は、この非課税制度が利用できなくなりました。
 
「教育資金の範囲の見直し」に関し、学校等に直接支払われる入学金や授業料などの金銭のほか、改正前は500万円という限度がありますが、学校等以外の者に支払われる金銭についてもこの非課税制度を利用できました。
 
例えば、学習塾や習い事の費用、その物品の購入費、ピアノなどのレッスン料、ピアノなどの購入費、通学定期代や留学のための渡航費などです。
 
改正後、2019年7月1日以降、受贈者が23歳以上の場合、この非課税制度を利用できる教育資金の範囲が「学校等の入学金や授業料」「通学定期や留学渡航費用」「教育訓練給付金の対象となる教育訓練の受講料」に限定されました。
 
「教育資金口座に係る契約の終了事由の見直し」に関し、改正前は受贈者が30歳になった時点で残額がある場合、贈与税が課税されていました。
 
改正後は、2019年7月以降、30歳の時点で「学校等に在学している場合」または「教育訓練の支給対象となる教育訓練を受けている場合」には、それが終了する日、または40歳になる日のいずれか早い日まで、贈与税が課税されなくなりました。
 
出典
文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー