もし親が亡くなったら、どんな手続きが必要になる?
配信日: 2020.01.26
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
目次
まず行わなくてはならないことは?
親御さまに万が一のことが起きたとき、お気持ちは分かるのですが、悲嘆に暮れている暇はありません。まず行わなくてはならないのは、病院などで医師から「死亡診断書」を取り付けることです。
また、親御さまが亡くなった場所が病院ではなく自宅などの場合は、検視などが行われて死亡診断書に代わる死体検案書が発行されます。死亡診断書を受け取ったら、遺体となった親御さまを安置場所に移します。
そして、親御さまが亡くなられた場所、親御さまの本籍地、届出人の所在地のいずれかの市区町村役場窓口に宛てて「死亡届」と「埋火葬許可書(火葬許可証)」を、死亡を知ってから7日以内に提出しなくてはなりません。なお、これらの提出は葬儀屋が提出の代行してくれることがあります。
なお、火葬許可証は火葬を行うときに必要で、火葬が済むと火葬許可証に押印して返してもらえます。押印された火葬許可証はお墓へ納骨するときに必要です。
14日以内に行わなくてはならない手続き
親御さまに万が一のことが起きたとき、14日以内に行わなくてはならない主な手続きを以下に列挙しました。なお、手続きは亡くなられた親御さまの住民票のある市・区役所、町村役場の各窓口です。
親御さまが老人ホームなどにご入居され、住宅地特例の適用を受けている場合、以下の手続きを行うのは、親御さまが老人ホーム入居前に住んでいた市・区役所、町村役場の各窓口です。
■国民年金の支給停止
老齢基礎年金や障害基礎年金をもらっているときに行います。あわせて、未支給年金の手続きも行いましょう。
■介護保険資格喪失届と保険証の返納
■国民健康保険や後期高齢者医療制度の資格喪失届の返納
あわせて、葬祭費などの請求も行いましょう(※葬祭費等の請求期限は2年以内です)。
■住民票の抹消届
■世帯主変更届
亡くなられた親御さまが世帯主の場合に行います。
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法的な手続きや税金の手続き
もし、亡くなられた親御さまの遺言書が見つかった場合はどうでしょうか?
公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)といわれる遺言の場合、原本が役所に保管されているため検認の手続きは不要です。ただし、自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)や秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)の場合は、家庭裁判所にて検認という手続きが必要になります。
検認を行わないと遺言書が封入された封筒を開封することすらできません。検認は「いつまでに行わなくてはならない」ということはないようですが、遺言書がある以上、遺言書に沿った遺産の手続きが行われますので、検認は早めに行うべきでしょう。
※検認自体は、その後の相続手続きのために発見後速やかに行う必要があります。
もし、亡くなられた親御さまの遺産を相続しない、ということであれば相続放棄の手続きが必要です。原則として相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所にて手続きを行います。親御さまに実は莫大な借金があった場合などに、相続放棄は有効かもしれませんね。
亡くなられた親御さまが商売等を営む自営業者や、年収2000万円以上の給与所得者などの場合、準確定申告が必要です。準確定申告は原則として相続の開始を知ったときから4ヶ月以内に、亡くなられた親御さまの住所地を管轄する税務署にて行います。
また、親御さまの遺産を相続する場合、その相続する遺産の額が多額(=具体的には基礎控除額以上)の場合、相続税の申告と納税の手続きが必要です。原則として相続の開始を知ったときから10ヶ月以内に、亡くなられた親御さまの住所地を管轄する税務署にて行います。
遺産の形見分け(いわゆる遺産分割協議)が済んだら行う手続き
遺産の形見分けが済んだところで行う手続きは、名義変更がメインになります。では、名義変更にはどのようなものがあるのでしょうか?
■預貯金
まずは金融機関に必要書類について問い合わせをしましょう。そして書類を持参・手続きを行います。通帳のないネットバンクもお忘れなく。
■住まい
一戸建ての場合、土地と建物のそれぞれの名義変更が必要です。司法書士の先生に依頼したほうがスムースかもしれませんね。依頼しない場合は、住まいのある住所地を管轄する法務局等で手続きします。
■株式
証券総合口座のある証券会社等で手続きを行います。
■自動車
運輸支局か自動車検査登録事務所に必要な書類を持参するとともに、必要な書類を記入し、手続きを行います。
期限等はないものの、なるべく早く済ませたほうが良い手続き
本人だけが有効な運転免許証やパスポートなどの返納などです。また、亡くなられた親御さまが一人で住まわれていたのだとしたら、電気・ガス・水道の解約手続きも早いほうがよいでしょう。
まったく使っていなかったとしても基本料金の徴収があります。同居している家族がいるのであれば、電気・ガスを供給してくれる各社、水道局に連絡して名義変更の手続きが必要です。
クレジットカードについて
そもそもクレジットカードは、クレジットカードそのものを相続できません。ですので、家族カードを利用している人は、家族カードの利用ができなくなる可能性があります。また、クレジットカードの未払い代金は相続の対象になります。
また、クレジットカードの利用によって貯まるポイントは相続できないことが多いようですが、航空会社が提供しているマイルは相続できる場合があるようです。いずれにせよ、カード会社に確認してみましょう。
まとめに代えて
ふだん、親御さまが亡くなられたときのことを考えることは少ないでしょう。そして、いざ親御さまが亡くなられてしまうと精神的なショックは計り知れないものがあります。しかし、やらなければならないことや、やったほうがよいことは、けっこうあるものなのです。
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役