更新日: 2020.07.03 その他相続
相続手続きの3つの「タイヘン」軽くする方法って?
1.出生時からの戸籍を取るのも大変だし、その束を何度も提出しなくてはならないので「タイヘン!」
2.銀行から送られてくる冊子を読んで、自分の場合に必要な書類を理解するのが「タイヘン!」
3.遺言書があると、家庭裁判所へ行かなければならないのでしょう? 「タイヘン!」。
こうした「タイヘン!」が、近年変わりつつあります。本稿では、まだ相続を経験していない人から、相続手続きに今直面している人まで、「タイヘン!」を軽くする方法を、やさしく解説します。
執筆者:酒井 乙(さかい きのと)
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。
目次
「法定相続情報一覧図」を取得すれば、戸籍の束を何度も提出する必要はない
相続が発生すると、手始めに直面する手続きの1つが亡くなられた方の「出生から死亡までの戸籍」の取得です。転勤などで何度も転籍を繰り返していると、さまざまな市区町村から戸籍を取り寄せなければならず、苦労する手続きです。
そして、苦労して集めた戸籍の束を、重くなった相続関係書類の全体の束からそのつど探し出して提出するのがとにかく面倒、というイメージをお持ちの方が多いと思います。そのような方には、「法定相続情報一覧図」の取得をおすすめします(※1)。
この書類は、相続人(またはその代理人)が取得し、提出した戸籍謄本や除籍謄本をもとに、被相続人(亡くなられた方)と相続人の関係を法務局が証明してくれるものです。
この書類があれば、銀行や税務署へ戸籍謄本の束を提出する必要はほぼなくなります(※2)。従って、銀行口座がたくさんあるような方には、取得することで手間や時間を短縮するなどのメリットがあります。
ただし、出生から死亡までの戸籍が1~2通で、相続手続きを行う銀行が1、2件程度の方であれば、そのまま戸籍の原本などを持って手続きしたほうが早いでしょう。本証明書を取得するにも、申請書への記載などの手間があり、かつ申請から取得まで少なくとも10日ほどかかるからです。
ウェブ上で自分の相続パターンの必要書類が分かる
金融機関へ相続を申し出ると、「相続のお手続きについて・・・」などのタイトルが付いた冊子が送られてくる場合があります。
その中には、「遺言書がある場合は○○○の書類が必要」、「遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合は□□□の書類が必要」など、さまざまな相続方法に応じて必要書類が書かれており、「いったい、自分のケースで必要な書類は何?」と混乱してしまいそうです。
そうしたお客さまへの対応として、ウェブで必要書類が分かるサービスを提供している金融機関があります(※3)。
自分の相続情報(遺言書の有無、亡くなられた方と相続人との関係など)を入力すれば、自分が用意すべき書類のリストが表示され、提出する書類の様式をその場でダウンロードすることもできます。
こうしたウェブ上での相続ナビゲーションを提供している金融機関は、本稿執筆時(令和2年5月現在)、まだ一部ですが、ウェブが使える方にとっては利用価値の大きいサービスといえるでしょう。
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自筆証書遺言保管制度を利用すれば、家庭裁判所の検認を省略できる
自宅などで遺言書が見つかった場合、まず行わなければならないのが家庭裁判所での「検認手続き」。
検認の申立時には、戸籍謄本などの書類を提出する必要がある(※4)上、検認時には裁判所へ出頭する必要があり(かつ、申し立てから出頭まで、1ヶ月近くかかります)、面倒だと考えている方は多いと思います。
もし、自分で遺言書を作成、保管を考えている方であれば、「自筆証書遺言保管制度」の利用を検討されてはいかがでしょうか。本制度を利用すると、原則、家庭裁判所での検認は不要となるため、相続発生時、迅速に遺言書の中身を確認でき、相続の各種手続きを開始できます。
本制度は、令和2年7月10日から開始される予定で(手続きの予約は同7月1日から)、すでに専用ホームページも立ち上がっています(※5、一部は準備中)。
相続手続きのさらなるIT化が進行している
上記に限らず、相続の「タイヘン!」は数多くあります。故人が生前にエンディングノートを準備するなどの「終活」を進めていなければ、なおさらです。
現在、政府が中心となって、相続手続きのIT化が進められています(※6)。実現すれば、これまで分散していた市区町村役場での各種手続きが一元化、または省略化されたり、これまで各金融機関から取り寄せなければならなかった残高証明を1つのポータルサイトから申請できるようになったりします。
今、「タイヘン!」な相続手続きも、近い将来、もう少し「ラクチン!」になるかもしれません。
(出典および注釈)
(※1)法務局「法定相続情報証明制度」
(※2)平成29年の制度導入から3年以上が経過したため、ほとんどの金融機関で戸(除)籍謄本に代えて「法定相続情報一覧図の写し」の提出で手続きを行っていますが、一部の金融機関では未対応の可能性があります。不明な場合は、事前に金融機関へ確認すると良いでしょう。
(※3)一例として、ゆうちょ銀行の「相続Web案内サービス」があります。
ゆうちょ銀行「相続Web案内サービスのご案内」
(※4)必要な書類については、裁判所ホームページをご覧ください。
裁判所「遺言書の検認」
(※5)法務省「預けて安心!自筆証書遺言書保管制度」
(※6)政府CIOポータル「死亡・相続ワンストップサービスの推進」
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。