遺言がしやすくなった?7月から始まった法務局での自筆証書遺言書の保管制度、そのメリットは?

配信日: 2020.09.30

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遺言がしやすくなった?7月から始まった法務局での自筆証書遺言書の保管制度、そのメリットは?
遺言というと死を連想させるため、忌み嫌う文化があります。しかし人生100年時代の高齢化社会を迎えて、認知症になる人の数も増加傾向にあります。平均寿命も延びているとはいえ、健康でいられる期間は残念ながら平均寿命と一致するわけではありません。
 
意識がしっかりしているうちに、自分がいなくなった後、財産を誰にどう使ってほしいのか、書面に残しておくことは、後に残された家族がもめることを避けるためにもとても大切なことでしょう。
 
相続法の改正により、2020年7月10日から、法務局における自筆証書遺言書の保管制度が開始しました。どんな制度で何が優れているのでしょうか。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

自筆証書遺言って何?

読んで字のごとく、自分で書いた遺言書のことです。自分で書くことができれば、遺言者本人のみで作成できるため、手軽で自由度の高いものです。証人も不要ですので、内容を誰かに事前に開示する必要もないですし、気が変わればいつでも書き直すこともできます。遺言者自身が作成するため、ほとんど費用もかかりません。
 
ただし、手軽で自由度が高いがゆえに次のようなリスクがあります。
 

リスク
  • 書き方には一定のルールがあり、そのルールに従わないと無効になってしまう
  • 相続人に発見されないことがある
  • 内容を改ざんされる恐れがある
  • 紛失・焼失の可能性
  • 保管場所を忘れる可能性
  • 遺言者が亡くなると、まずは家庭裁判所へ持ち込んで検認(遺言書の存在を明確にする)手続きが必要

 
などです。このようなリスクや手間の軽減になるのが、2020年7月10日から開始された、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度です。
 

法務局での保管のメリットは?

法務局は、遺言書の原本およびデータを長期間適正に管理してくれます。遺言書を預けた本人は、保管番号が記載された保管証を受け取ります。本人が遺言書の閲覧、保管申請の撤回、変更の届出などをする際や、相続人が遺言書を閲覧する、あるいは遺言書情報証明書の交付請求をする際に保管番号があると手続きに便利です。
 
法務局に預けておけば、本人、遺族ともに全国のどの遺言書保管所でもモニターによる閲覧が可能です。また、相続人には遺言書の存在が不明な場合でも、遺言書保管所で遺言があるかどうかを確かめることができます。
 
遺言者が亡くなり、相続人が遺言書の内容の証明書の請求や遺言書を閲覧すると、遺言書が法務局に保管されていることを、その他の相続人等に通知してくれます。ですから、遺言書の存在を知らずに遺産分割してしまい、後から遺言書が出てきてもめるという事態を避けることができます。また、家庭裁判所の検認の手続きは不要になります。
 

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法務局保管の費用は?

自宅でこれまでどおり自筆証書遺言書を保管しても、その有効性が失われるわけではありません。
 
しかし自宅保管のリスクを考えると、法務局での保管費用は、以下のとおりで決して高いものではありません。公証人役場で作成する公正証書遺言は、一般に10万円程度の費用がかかりますが、それと比較すると安価でできます。

法務局保管の注意点は?

法務局へ申請に行っても、自筆証書遺言の書き方を指導してくれるわけではありません。遺言書の有効性を判断してくれるわけでもありません。ですので、書き方は自分できちんと本やネットなどで調べた上で、書かなければなりません。
 
また、遺言書、申請書、各種請求書等は、事前に作成しておきます。保管申請には予約が必要で、本人自らが顔写真付きの本人確認書類を持って管轄の法務局へ実際に行って手続きをします。郵送ではできませんので、本人が入院している、あるいは体調がすぐれず出頭できないなどの状況では申請ができないことになります。
 

まとめ

厚生労働省「平成29年度 生涯医療費(男女計)」によると、1人当たりの生涯医療費は2700万円で、そのうちの半分(1350万円)は70歳以上にかかっていることがわかります。つまり、70歳以降は、加齢に伴う体の不具合が誰にでも出てくる可能性が高いことを示しています。
 
人生にはいろいろな節目がありますが、70歳を超えると、そろそろ「遺言適齢期」と言えるのかもしれません。遺言書は、若い時期には書いてはいけないという決まりがあるわけでもありません。むしろ、早くから準備をし、変更があればその都度書き直すくらいでもよいのかもしれません。
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士


 

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