更新日: 2019.09.18 その他保険
つみたてNISAよりも「有期型の変額保険」の方が、しっくり来る?
「つみたてNISA」と同じように、「積立投資」を訴求した商品として「(積立型の)有期型の変額保険」があります(以下、本稿では「積立型の有期型の変額保険」を「有期型の変額保険」と表記します)。
「つみたてNISAはやっていない」という読者の方でも、「有期型の変額保険なら、やっているよ」という方がいらっしゃるのではないでしょうか?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
そもそも「変額保険」とは?
そもそも「変額保険」とは、どのような保険なのでしょうか?
変額保険は生命保険の一つです。
生命保険に「定期」「養老」「終身」の3種類があるのはご存じだと思いますが、変額保険は「養老(=有期型)」と「終身」の2種類で、「定期の変額保険」はありません。
また、生命保険の保険料の払い方には、月払いや年払いなどの「平準払い」と、支払いはまとめて一度だけという「一時払い」があります。変額保険にも「平準払い」の商品と、「一時払い」の商品があります。生命保険文化センターでは「平準払い」を「積立型」と表現していますので、筆者もそれに習いたいと思います。
本稿では変額保険のうち、「有期型」で「積立型」について、述べていきます。
有期型の変額保険には満期がありますので、満期金があります。満期金も、解約返戻金と同様に最低保証がありません。つまり、満期金の金額も「運用の成果しだい」だと言えます。
筆者は、「有期型の変額保険」と「つみたてNISA」は、「積立投資」という点で共通していると思っております。しかし、つみたてNISAの認知と普及がイマイチなのに比べ、有期型の変額保険の人気が高まっているように感じるのは、なぜでしょうか?
「有期型の変額保険」と「つみたてNISA」には、実はいくつもの違いがあります。以下に、その違いを列挙してみたいと思います。
違いを知ることで、「有期型の変額保険」と「つみたてNISA」のどちらかを選んで積立投資をするのか、それとも両方を行うのか、あるいは両方とも行わないのかをご検討されてみてはいかがでしょうか。
有期型の変額保険とつみたてNISAの違い
・保険
そもそも有期型変額保険は生命保険の一つですが、つみたてNISAは投資信託です。なので、つみたてNISAには生命保険の機能がありません。
・保険料控除
有期型変額保険は要件を満たせば「一般の生命保険料控除」の対象ですが、つみたてNISAは投資信託です。なので、つみたてNISAの投資元本(積み立て金額)は控除の対象になりません。
・運用期間中の課税
有期型変額保険とつみたてNISA、どちらも運用期間中の運用益については非課税です。
・運用終了後の課税
有期型変額保険を中途解約した時、もしくは満期を迎えた時に、利益(=課税対象となる所得)があれば、雑所得として総合課税の対象となります。
解約返戻金もしくは満期金から、払い込んだ保険料の総額を差し引き、さらに特別控除50万円を引きます。その金額を2で割った数字を、その年の給与所得や事業所得などと合算し、所得税と住民税を計算します。
一方、つみたてNISAから生じる利益は非課税です。
・非課税期間
有期型の変額保険は運用を続けている間、つまり中途解約するか、満期までの間の運用益が非課税です。
一方、つみたてNISAの非課税期間は20年間です。また、最後の非課税期間は2037年から2056年までの20年間です。
対象となる投資信託(特別勘定)
有期型の変額保険の場合は、商品の中に用意された「特別勘定(=投資信託)」の中から選ぶことになります。
一方、つみたてNISAの対象となる投資信託は120本程度ありますが、実際に選ぶことができるのは、窓口となる金融機関や証券会社によって異なります。数本程度というところが多いのではないでしょうか。
・乗り換え(スィッチング)
有期型の変額保険は特別勘定を乗り換える(スィッチング)ことが可能です。例えば「世界株式」という特別勘定から、「世界債券」という特別勘定に乗り換えるなどです。
しかし、つみたてNISAの場合は、他の投資信託に乗り換えることができません。
・申し込み手続きの利便性
有期型の変額保険は、「生命保険募集資格+変額保険販売資格」を持った生命保険募集人が、説明と申し込み手続きの立ち合いを行います。一方、つみたてNISAは、金融機関や証券会社によってはインターネット上で手続きを行うことができます。
・申し込み手続きの時に必要なこと
有期型の変額保険は、申し込み手続きの時に「健康告知」もしくは「健康診査」が必要です。なので、健康状態が芳しくなければ、申し込むことができません。一方、つみたてNISAは、いわゆる「マイナンバー」と「本人確認」が必要となります。
・費用(=コスト)の負担について
有期型の変額保険とつみたてNISA、共に投資信託に特有のコストである「購入時手数料」はゼロです。一方で、同じく投資信託に特有のコストである「信託報酬(=運用管理費用)」は掛かります。
有期型の変額保険に特有のコストとしては、「保険関係費用」と「解約控除」が挙げられます。その一方で、つみたてNISAには「保険関係費用」はありません。また、解約時に掛かる「信託財産留保額」は、ほとんどの対象商品でありません。
以上、有期型の変額保険とつみたてNISAの比較を試みてみました。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役