就業不能保険と死亡保障保険はセットで契約したほうがいいの?
配信日: 2019.07.29
執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
くらしとお金のFP相談センター代表
https://fplifewv.com/
国家公務員や東京でのFP関連業の実務経験を積み2005年に出身地の宮城県仙台市で起業。
2010年から現在まで東北放送ラジオにてお金やライフプランについてのレギュラーコーナー出演中。
全国経済誌「週刊ダイヤモンド」の保険特集に毎年協力。独立起業後に住宅ローンを借りて、土地を購入しマイホームを建てた経験から、相談者にリアルなマイホーム購入・住宅ローンについてのアドバイスも行える。本当に安心して購入できるマイホーム予算についてアドバイス多数。
東日本大震災以前から防災・減災の観点からのマイホーム購入アドバイスを行い、相談者の減災につなげる。
自治体や企業等からのライフプラン研修の講師を務める際にはクイズ・ゲームを取り入れ受講者に楽しんでいただくことが得意。
2児の父であり、仙台で毎年「子育てママの家計塾」を開催して子育て中の家庭に実体験から育児の悩みに答える。
学習塾にほとんど通わせずに自身の子どもの進学校合格へ導いた経験から「お金をかけない子育て」についてもアドバイスを行っている。
収入保障保険に就業不能保険をセット
「標準生命表」が改定され、2018年4月に多くの死亡保障保険の保険料が値下げされたことを、以前紹介しました。死亡保障保険(主に収入保障保険)の保険料の値下げ改定を行う際に、就業不能保険の役割をセット(特約付加)できるように商品改定されたものがあります。
このセット商品は、死亡または高度障害が対象だった支払い条件に、就業不能状態を特約付加できるものです。これまで、就業不能保険に関心を持たなかった方が加入を考えるきっかけとなりました。
しかし、単独の就業不能保険と収入保障保険にセットする就業不能特約には、大きな違いがいくつもあります。
収入保障保険にセットするメリット
収入保障保険にセットする就業不能特約の場合、免責期間がありません。60日や180日といった免責期間がある単独の就業不能保険とは異なり、収入保障保険の支払い条件に該当したときから保険金が支払われます。
また、保険金が支払われたら、保険料の払い込みは免除になります。単独の就業不能保険の多くは、保険金が支払われている期間も保険料を払い続ける必要があります。
さらに、単独の就業不能保険は就業不能状態から回復した場合、保険金の支払いがストップするのに対し、収入保障保険にセットしている就業不能特約の場合は、一度保険金支払い事由に該当すれば保険期間満了まで保険金が支払われます。
就業不能保険金支払い期間中に死亡した場合、単独の就業不能保険は保険金の支払いがストップしますが、就業不能特約は死亡後から保険期間満了まで、遺族年金に切り替わり保険金が支払われます。
※一部の商品には例外があります。
単独の就業不能保険と収入保障保険を別に契約する場合のメリット
今契約している収入保障保険はそのままにして、別途、就業不能保険に加入する方法もあります。国内大手保険会社の商品には、セットのように見えても実際は別々の契約であることが少なくありません。
一般的に、収入保障保険とセットの場合は、就業不能時の保障金額と死亡した際の遺族年金が同額です。それに対して、別々に契約する場合は、就業不能状態になった場合と死亡時の保障金額をそれぞれ必要に応じて設定することができます。
就業不能時は生活費や医療費がかかるため、それらが不要になる死亡時(死亡後)よりも出費がかさみます。そういった意味では、保障金額の設定に際して自由度が高い別契約は、メリットがあると言えるでしょう。契約途中で死亡保障だけを減額することも可能です。
また、別契約であれば高度障害状態になった場合には、収入保障保険と就業不能保険の両方からそれぞれ保険金の支払いを受けられる可能性があります。収入保障保険での高度障害の支払要件は、
・両眼の視力を全く永久に失ったもの
・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・一上肢を手関節以上で失い、かつ、一下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
・一上肢の用を全く永久に失い、かつ、一下肢を足関節以上で失ったもの
となります。
前回お伝えしたように、「精神疾患を支払い対象外とする就業不能保険」や「在宅療養で、職種を問わず業務に従事できない状態のみ、保険金を支払う就業不能保険」においては、保険会社の審査次第で、これらの高度障害が就業不能状態に該当するかが決まります。
しかし、国民年金法や身体障害者福祉法で、ある程度の障害等級の認定を受けた場合に支払われる就業不能保険であれば、これらの高度障害に該当すれば保険金が支払われるでしょう。
介護保険も含めて検討してみましょう
就業不能状態に近いものとして、要介護状態があります。介護保険を収入保障保険とセットにした商品もあります。
支払い基準を、約款所定の要介護状態としているものや、公的介護保険に連動させているものもあります。要介護状態によっては、就業不能と同等に考えることもできます。
「就業不能保険までは必要ない」と考えても、「介護保険は必要」と考える方もいるでしょう。また、就業不能保険の保障期間は、70歳や80歳までといった期間限定です。当然その期間内に就業不能状態にならなければ保険料は掛け捨てです。
しかし、介護保険には終身介護保障をしてくれるものもあります。そのため、高齢になったときの要介護状態も想定して、若いうちから介護保険(終身介護保障)に加入して就業不能状態に近い要介護状態に備える方法もあります。
保険商品は複雑化していますので、自分に必要と考える保障内容と期間を、きちんと考えて選んでください。
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者