失業時の基本手当を受け取るには? vol.1(自己都合編)
配信日: 2020.06.05
しかし、これから増える可能性があるのが「失業」です。残念ながら自主都合の退職だけでなく、会社の業績が落ち、倒産や雇用の継続が困難な場合の失業が増える可能性が高くなりました。
失業して新たな仕事を探す際には、雇用保険加入者が対象の失業保険(基本手当)を受け取ることができます。では、失業保険の給付金とはどんなものでしょうか。
執筆者:西川誠司(にしかわ せいじ)
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)、キャリアコンサルタント
ウェディングドレスショップ「Atsu Nishikawa」を17年間経営。
接客の中でこれから結婚するおふたりのお金の不安や子供を授かったときの給付金や育児休業のこと、また親からの贈与や年金のことの悩みを伺い、本格的にファイナンシャルプランナーとして活動を始めました。
みなさまの「小さな疑問や不安」を分かりやすく解決していくことを目指しています。
失業保険(基本手当)とはどんなものか?
失業保険とは、雇用保険の被保険者が定年・倒産・解雇・契約期間の満了・自己都合等により離職し、失業中の生活を心配することなく新しい仕事を探し、1日でも早く再就職するために支給されるものです。失業とは「就職しようとする意志といつでも就職できる能力がある」と定義されています。
さらに、失業には下記の3種類に分かれます。
(1)自己都合、本人に重大な過失のある場合の解雇、定年退職者(65歳未満)※1
(2)特定受給資格者 ※2(倒産や解雇など)
(3)特定理由離職者 ※2(期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者、その他、正当な理由のある自己都合により離職した者)
基本手当の所定給付日数(基本手当の支給を受けることができる日数)は、受給資格に関わる離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間、および離職の理由などによって決定され、90~360日の間でそれぞれ決められます。
基本手当の受給期間は原則、離職した日の翌日から1年間で、この期間を経過した場合は、所定の給付日数が残っていても原則として基本手当は受給できません。例外的に下記のような場合は延長される場合があります。
<受給期間の延長>
・病気やケガ、妊娠、出産などの場合は最長3年間の延長
・60歳以上の定年等による離職の場合は最長1年間の延長
さらに、失業の原因(上記の3種類)によって、支給が開始される時期にも違いがあります。今回は失業の原因が「(1)自己都合による退職」についてお伝えいたします。
受給のための要件
基本手当の受給のための要件は、
(1)離職し雇用保険の被保険者でなくなっていること
(2)働く意思と能力があるにもかかわらず、就業につくことができない状態であること
(3)離職の日以前2年間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月(被保険者期間)が通算12ヶ月以上あること
※ただし、特定受給資格者または特定理由離職者の場合は、離職以前の1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上あること
となっています。
自己都合の基本手当の支給開始日
支給の開始日は退職の理由によって違います。自己都合退社の給付制限は基本手当を受ける方すべての方に共通の「待機期間(7日間)」と、自己都合退社に適用される「給付制限期間(1~3ヶ月)」があります。
給付制限期間が3ヶ月から1ヶ月になる理由は、天災や正当な理由(職場で不当な扱いを受けた・体調に関わる問題・転勤や事業所の移転により勤務が困難になったなど)です。詳しくはハローワークにご相談ください。
自己都合の基本手当の所定給付日数
所定給付日数とは、基本手当の支給が受けることができる日数のことです。日数は退職理由と年齢、算定基礎期間などで決められます。自己都合の所定給付日数は全年齢共通です。算定基礎期間とは、基本手当の対象となる被保険者期間のことです。
基本手当の金額の算出方法
雇用保険で受給できる1日当たりの金額を、基本手当日額といいます。基本手当日額は、賃金日額に給付率を乗じた金額です。
賃金の総額には含まれるもの、含まれないものがあります。
含まれるものには住宅手当・通勤手当・時間外手当などがあり、含まれないものには臨時に支払われる賃金、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)があります。詳しくは、「厚生労働省 第5 賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲 ※3」をご覧ください。
さらに賃金日額には上限があり、年齢によって上限が異なります。※4
給付率には幅があり、賃金日額、離職日の年齢によって異なります。給付率は賃金の低い人ほど高くなります。※4
基本手当受給の手続き
基本手当受給の手続きが必要です。手続きは本人の住所地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)で行います。
(1)雇用保険被保険者離職票(2種類)を会社から受け取る(複数社ある場合は、短期間でもすべて準備をします)
(2)本人の住所地(住民票)を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)で求職の申し込みをして、「離職票」の提出をする
(3)受給資格決定されると、公共職業安定所より雇用保険受給資格者証が交付され、失業の認定日(原則4週間に一度)が指定される
(4)失業認定日に公共職業安定所に出頭し、雇用保険受給資格者証、失業認定申告書を提出し、失業の認定を受ける
(5)ハローワークの窓口にて求人活動を行う
(6)4週間に一度、失業認定を行う
(7)雇用保険の基本手当が給付される
失業認定における求職活動の実績として認められないものがあります。
・新聞、インターネット等で求人情報の観覧
・インターネット等による民間職業紹介事業者や労働者派遣事業者への登録
手続きに必要な書類は以下のようになります。
●雇用保険被保険者離職票(2種類)
●個人番号確認書類(いずれか1種類)
1.マイナンバーカード
2.通知カード
3.個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
※身元(実在)確認書類((1)のうちいずれか1種類/(1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可))
(1)1.運転免許証、2.運転経歴証明書、3.マイナンバーカード、4.官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
(2)1.公的医療保険の被保険者証 2.児童扶養手当証書など
○写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
○印鑑
○本人名義の預金通帳、またはキャッシュカード(一部指定できない金融機関があります。ゆうちょ銀行は可能)
(参照)ハローワーク インターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」※5
まとめ
「失業時の基本手当を受け取るには?」を自己都合編、特定受給資格者(倒産、解雇等)の全2回でお伝えいたします。今回は、自己都合による離職のため、受給までの日数が特定受給資格者よりも1~3ヶ月多くかかります。
次に働く職場が早く見つかることも大切ですが、急ぐあまりに、自分の価値観や思いとかけ離れた職場を選択してしまうと、ワークライフバランスが崩れる、体調が崩れる、そして何よりも「自分自身の大切なもの」を見失ってしまうかもしれません。
雇用保険の基本手当の受給は被保険者にとっての権利です。基本手当を受給しながら、自分の価値観を見つめなおす時間としても大切な期間です。
※1 定年退職者の中で継続雇用を希望していない方
※2 参照:ハローワーク インターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
※3 参照:厚生労働省「第5 賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲」
※4 参照:厚生労働省「雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ」
※5 参照:ハローワーク インターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
執筆者:西川誠司
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)