更新日: 2021.04.21 損害保険
新年度スタート。気を付けたい自転車の事故
自転車は事故によって被害者になることもあれば、加害者になることもあります。加害者で1億円近い損害賠償を命じられた判決事例もあります。
安全運転を心掛けるために、最近の自転車事故の状況を確認してみました。自分自身の状況に応じて、万が一に備えた保障について考えてみましょう。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
自転車事故の半分は出合い頭の事故
警察庁の調べによると、令和元年の自転車関連事故は8万473件(自転車が第一当事者または第二当事者になった交通事故で、自転車相互の場合は1件と計算)となっています。
第一当事者とは、最初に交通事故に関与した当事者のうち最も過失の重い者のことをいいます。事故件数は前年から5168件も減少していますが、これは交通事故全体も減少しているからで、全交通事故に占める割合は20%前後を推移していて減少はしていません。
自転車関連事故の内訳は下記グラフのとおりです。車両相互の事故は相手当事者が自動車や2輪車、自転車等の場合です。
資料:警察庁 自転車関連交通事故の状況(2019年)
自転車関連事故8万473件のうち人対車両が2831件(全体の3.5%)、車両相互が7万4947件(93.1%)、単独車両が2691件(3.3%)等となっており、ほとんどが相手も車両の場合の事故となっています。
さらに相手の車両の内訳を見ると、自動車が6万5929件、2輪車が3672件、自転車が3030件で、自動車が圧倒的に多くなっています。自動車との事故では出合い頭が4万3件(全体の49.7%)で最も多く、次が自転車の右折時および左折時の車両相互事故で、左右合わせて2万1737件(27.0%)となっています。
自転車単独の事故が全体の3.3%しかないのは少ないような気がしますが、自転車が単独で転倒したり工作物に衝突したりしても警察を呼ぶとは限らないので、警察が把握できていない事故が多数あるのではないでしょうか。
自転車事故の3分の2は法令違反をしている
次に同じ警察庁の調査結果から、自転車関連事故のうち法令違反の事故だけ取り上げて、グラフにしてみました。
法令違反は「信号無視」「通行区分」「横断・転回等」「環状交差点」「優先通行妨害」「交差点安全進行」「徐行場所」「一時不停止」「自転車通行方法」の9種類と、安全運転義務の「ハンドル操作」「ブレーキ操作」「前方不注意」「動静不注視」「安全不確認」「安全速度」の6種類、その他や違反不明等に分けています。
資料:警察庁 自転車関連交通事故の状況(2019年)
令和元年の1年間で自転車(第一当事者・第二当事者)の法令違反事故件数は5万2612件あります。その中で最も多いのは安全運転義務の「安全不確認」で1万7109件(法令違反全体の32.5%)、次が安全運転義務の「動静不注視」で1万31件(19.1%)、その次が交差点安全進行で9416件(17.9%)となっています。
安全運転義務の安全不確認と動静不注視は似ていて、これらは例えば、見通しの悪い交差点で相手車両を見落としたり、認識はしていたものの判断を誤ったりして起きた事故等が該当します。
法令違反の事故件数を1日あたりで計算すると144件になります。法令を守って運転していれば防げた事故はかなりあったはずです。自転車の運転で、信号を無視したり歩道で歩行者の通行を妨害したりする姿は度々見かけます。
子どもから高齢者まで、自転車を運転する人はいつでも加害者になりえます。ひとたび大事故が起きると、加害者も被害者も人生が大きく変わってしまうかもしれません。また、冒頭でもお伝えしたとおり、加害者には1億円もの損害賠償を命じられることもあります。事故が起きることのないよう、一人ひとりが優しい運転を心掛けたいものです。
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者