更新日: 2021.05.06 生命保険

生命保険の契約で同性パートナーを保険金の受取人にできる?

生命保険の契約で同性パートナーを保険金の受取人にできる?
同姓パートナーを受取人に指定できる保険商品が増えています。同姓パートナーを受取人とする保険を契約するためには、どのような手続きが必要なのか解説します。
蟹山淳子

執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)

CFP(R)認定者

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。

パートナーシップ制度の広がり

昨今、多様性を尊重する考えが広まるとともに、LGBTなど性的少数者のカップルを認めるパートナーシップ制度を導入する自治体が増えてきました。東京新聞 TOKYO Webによれば、2021年4月1日現在、導入自治体数は100に達したということです。
 
パートナーシップ制度を導入した自治体では、結婚している夫婦と同じ関係の同性カップルが「パートナーシップ証明書」の発行を受けられます。そして、2015年に渋谷区と世田谷区でこの制度がスタートして以降、それまで親族しか認められなかった生命保険の受取人に、同性のパートナーの指定を認める生命保険会社が増えてきました。
 
現在は、約半分の保険会社で同性パートナーを受取人にして加入できるといわれます。
 

同性カップルに生命保険は必要?

「パートナーシップ証明書」によって2人の関係が公に認められるようになりましたが、残念ながら法的拘束力がないため、戸籍上の夫婦に認められている権利が認められません。
 
例えば、万一どちらかが亡くなったとき、遺された同性パートナーには相続の権利がありません。そのため、遺産は亡くなった人の親族が相続することになります。遺言書を遺したとしても、もし亡くなった人の親や子どもがいる場合は、相続の権利を主張(遺留分減殺請求)されれば、すべてを同性パートナーに遺せない可能性があります。
 
その点、生命保険の保険金は、法定相続分とは関係なく、受取人に指定された人が受け取れます。したがって、自分に万一のことがあった場合にパートナーにお金を遺す方法の1つとして、生命保険の利用が有効となります。
 

生命保険を契約するために必要な書類

同性パートナーを受取人として認める場合も、生命保険会社によって必要な書類はまちまちです。大きく分けると、パートナーシップ証明書の提出を必要とするか、会社独自の書類を提出するかの2つに分かれます。
 
まず、パートナーシップ証明書を必要とする保険会社の場合、住民登録している自治体がパートナーシップ制度を導入していなければ申し込めません。また、中にはパートナーシップ証明書とともに、任意後見契約や合意契約の公正証書を求める保険会社もあります。
 
任意後見とは、将来本人の判断能力が低下した場合などに、本人に代わって法律行為や財産管理などを行う後見人を自ら指名しておく制度です。公正証書によってパートナーを任意後見人に指名する契約を結び、将来、例えば認知症で判断能力が低下したときなどに、家庭裁判所に申し出て任意後見監督人を選定してもらったうえで、パートナーが後見人になります。
 
後見人であれば、本人に代わって介護サービスの契約や、本人のために必要なお金を銀行口座から引き出すこともできます。なお、渋谷区では任意後見契約と合意契約の公正証書がパートナーシップ証明書の条件となっています。
 
パートナーシップ証明書を必要とせず、所定の書類や住民票などで契約できる生命保険会社もあります。居住地にパートナーシップ制度がなくても、生命保険に加入できます。なお、契約の際、訪問して同居実態を確認するケースもあるということです。
 

ちなみに

自動車保険でも、同性パートナーを配偶者として認める保険会社が出てきました。これにより、同性パートナーを「夫婦限定」の契約や個人賠償責任保険の補償の対象とすることができるようになります。また、住宅ローンでも、同性パートナーを連帯保証人として認める銀行や、同性カップルがペアローンを組める銀行が登場しました。
 
配偶者として税制上の優遇措置が受けられない、相続の権利が認められないなどの不平等はまだありますが、同性カップルを夫婦として認める動きは少しずつ広がっているようです。
 
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者

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