更新日: 2021.05.09 その他保険

自転車保険加入率は全国平均でどれくらい?

自転車保険加入率は全国平均でどれくらい?
新型コロナウイルス感染症が終息しない中で、新しい年度が始まりました。通学や通勤で密を避けるために自転車を利用する人も多いでしょうが、事故への備えは大丈夫でしょうか?
 
近年、自転車の事故で加害者側に高額な賠償命令が出るケースもあり、被害者救済のために保険加入を義務化する条例の制定が広がってきています。そこで、自転車保険加入の現状について調べてみました。
松浦建二

執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/

死亡・重傷事故加害者の40%は自転車保険に加入していなかった

スマートフォンを操作しながら自転車を運転する人や、イヤホンで音楽を聴きながら自転車を運転している人を時々見かけますが、それが原因で重大な事故が起きることもあります。下記は賠償額が高額になった一例です。
 

資料:岡山県交通安全協会「自転車関連事故に関する高額賠償事例」
 
これだけ高額になると、保険でもなければ支払える人のほうが少ないような気がします。しかし、加害者に支払い能力がなくて払えず、被害者が泣き寝入りすることは避けなければなりません。そこで頼りになるのが賠償責任保険(自転車保険)です。自転車事故等で加害者としての賠償責任を問われた時に、この保険から支払うことができれば、被害者だけでなく加害者も救われます。
 
警察庁「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」によると、自転車対歩行者死亡重傷事故において、運転者の52%は24歳以下と若く、損害賠償責任保険等に加入していたのは60%にとどまっていたとのことです。つまり40%の運転者は保険に加入していなく、被害者に対して責任を果たせたのでしょうか?
 

自転車保険の加入率は義務化で上昇

自転車事故で被害者へ損害を補償できる保険(共済)の名称は自転車保険とは限らず、個人賠償責任や日常生活賠償等の場合もあり、火災保険や自動車保険の特約で加入している人も多いです。一般的に同居の家族は補償対象になるので、重複して加入していないか家族に確認するとよいでしょう。
 
昨今は加入義務の条例を制定する自治体が増えており、それに伴い自転車保険の加入率が上がってきています。
 
下記のグラフは、au損害保険が毎年調査している「全国自転車保険加入率調査」から、2020年度の都道府県別加入率を表したものです。赤色は2021年(令和3年)4月1日現在、自転車保険の加入が義務化された地域(国土交通省ホームページの「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」で確認)です。
 

資料:au損害保険株式会社「2020年度 全国自転車保険加入率調査」
 
加入率の全国平均は59.5%で、前年に比べて2.2%上がっています。都道府県別では京都府が73.1%で最も高く、2番目の滋賀県(70.8%)、3番目の兵庫県(70.5%)までが70%を超えています。加入率が最も低いのは島根県の35.1%で、次が新潟県(39.5%)、その次が富山県(39.7%)で、この3県が40%を下回っています。
 
京都府と島根県では倍以上の差があります。都道府県によって加入率に大きな差が生じている理由は、自転車損害賠償責任保険等への加入が義務化されているかどうかだと考えられます。
 
グラフでは義務化している都道府県を赤色にしていますが、加入率が高い都道府県は全て義務化しています。一部の県では義務化しても低いですが、まだ日が浅いだけで、翌年の調査では大幅に上がっているでしょう。
 

自転車加入の動機は加入が義務付けられたから

次に同じau損害保険の「全国自転車保険加入率調査」から、自転車の事故に備える保険に加入したきっかけを確認してみました。このグラフでの義務化地域とは、山形県・埼玉県・東京都・神奈川県・山梨県・長野県・静岡県・滋賀県・京都府・大阪府・奈良県・愛媛県・福岡県・鹿児島県および義務化している市がある宮城県・石川県・愛知県のことをいいます。
 

資料:au損害保険株式会社「2020年度 全国自転車保険加入率調査」
 
保険加入の主な動機は、加入が義務化していない地域では「自転車購入の際に加入を勧められたから」が最も多く、次が「テレビや新聞などで自転車事故のニュースを見たから」となっていますが、義務化している地域では「生活圏の自治体で保険加入が義務付けられたから」が最も多くなっています。
 
また、動機を一つひとつを見ると消極的な動機(受け身の動機)が多いのが気になります。「自転車購入の際に加入を勧められたから」「保険会社などから加入を勧められたから」「会社や学校から加入を勧められたから」は、いずれも誰かに勧められたからであり、勧められなければ加入しないかもしれません。
 
このような調査結果を見ると、賠償責任保険等への加入を促進するには、購入するタイミングや乗るタイミングで誰かが勧めること、そして加入を半強制的にすることが非常に効果的だとわかります。
 
自転車を運転する時は交通ルールを守り、マナーよく安全運転を心がけましょう。そして、もしもの事故に備えて自転車保険(賠償責任保険等)には必ず加入しておきましょう。
 
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者

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