生命保険会社の激動の5年間 ~保有契約件数は増えたのか?減ったのか?~
配信日: 2021.09.17
皆さんの保険選びの参考資料として、過去5年間の業績から、生命保険会社の現状を確認してみました。別稿の生命保険会社各社の新契約件数に続いて、今回は保有契約件数に着目しました。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
10社の保有契約件数が前年比マイナス
まず、生命保険会社42社の個人保険の保有契約件数を一覧表にしてみました。表は2016年度から2020年度まで5年間の保有契約件数を、2020年度の件数順に並べてあります。件数の単位は「千件」と「件」が混在しています。
SOMPOひまわり生命(旧 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命)
FWD富士生命(旧 AIG富士生命)
大樹生命(旧 三井生命)
ニッセイ・ウェルス生命(旧 マスミューチュアル生命)
ソニーライフ・ウィズ生命(旧 ソニーライフ・エイゴン生命)
イオン・アリアンツ生命(旧 アリアンツ生命)
はなさく生命
個人保険で2020年度の保有契約件数が最も多かったのは、新契約件数と同じく日本生命で2971.4万件もあります。計算上は国民の約4人に1人が加入している非常に大きな数です。2番目はアフラックの2380.4万件、3番目は第一生命の2027.4万件、5番目の明治安田生命までが1000万件を超えています。
2016年度以降の変化を確認してみると、2020年度が2016年度よりも増加している保険会社が34社ある一方で、2016年度よりも減少している保険会社が5社あります。特にかんぽ生命は1715.0万件から1589.3万件へ125.7万件も減らしています。前年度比では10社が件数を減らしています。
保有契約は前年度の保有契約に当年度の新契約が足され、解約や満期、保険金支払いによる契約終了分等が引かれます。多少新契約件数が減ったとしても保有契約件数は前年比で増えることが多いので、今回のように保有契約件数が前年比で10社も減ることは、あまり例がありません。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けました。特に“三密回避”による新契約の減少が大きく影響していると考えられます。
ただ、厳しい状況下でも保有契約件数を順調に増やしている保険会社はあり、6社は4年連続で保有契約件数を増やしています。インターネット経由で加入できるライフネット生命やアクサダイレクト生命等は、新型コロナウイルス感染症の拡大が追い風になっているようです。
個人年金保険の保有契約件数が増加したのはわずか7社
個人保険の次に、個人年金保険の保有契約件数も確認してみました。表は2020年度の個人年金保険の保有契約件数が多い順に並べてあります。
個人年金保険でも2020年度の保有契約件数が最も多かったのは日本生命で、413.7万件になります。2番目が住友生命で318.3万件、3番目が明治安田生命で235.8万件となっています。2020年度に保有契約件数が100万件以上あるのは6社のみ、10万件以上では23社となっています。
2019年度から保有契約件数を増やした保険会社はわずか7社しかなく、2016年度比でも8社しかありません。しかし、ソニー生命やマニュライフ生命のように4年連続で順調に増やしている生命保険会社もあります。超低金利時代では契約件数が増えても利益につながりづらいことから、多くの生命保険会社が販売にあまり積極的ではなく、今後はさらに減っていくと考えられます。
超低金利時代が続いても新型コロナウイルス感染症が拡大しても、生命保険会社の保有契約件数が激減することはあまり考えられません。しかし厳しい時代が続くと、42社もあれば変化があらわれる会社がいくつか出てくるかもしれません。保険選びの参考までに、各社の動向にも注目していきましょう。
※保険会社の決算内容は保険会社のホームページに載っています。詳細については各保険会社のホームページで直接確認してください。
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者