更新日: 2021.10.08 医療保険
高額療養費制度があるから医療保険はいらない?
この制度があるため、民間の医療保険は加入しなくても良いという意見もありますが、実際はどうなのでしょうか?
執筆者:福島佳奈美(ふくしま かなみ)
【保有資格】CFP(R)・1級ファイナンシャルプランニング技能士・DC(確定拠出年金)アドバイザー
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務。子育て中の2006年にCFP資格を取得、FPとして独立。「ライフプランニング」をツールに教育費や保険、住宅ローンなど家計に関する悩みを解決することが得意です。
高額療養費制度とは
70歳未満の場合、医療機関や薬局で支払う医療費の自己負担額は3割ですが、高額の医療費がかかった場合、さらに自己負担を減らせる「高額療養費制度」があります。
自己負担の上限額は年齢や所得水準によって異なりますが、一定額以上の医療費はかからない仕組みになっています。また、同一世帯での自己負担額は一定の条件で合算することができます。但し、入院時の食費負担や差額ベッド代、先進医療費等は対象外です。
以前は、70歳未満の所得区分は3段階でしたが、平成27年1月に5段階に細分化され、自己負担限度額も見直されましたので、上位所得者の自己負担額は増えています。また、1年間で3カ月以上限度額を超えた場合は、「多数回該当」として、4カ月目以降は該当基準額が下がる仕組みです。
高額療養費制度の計算ルール
高額療養費がもらえるかどうかの限度額を計算する場合、医療費を単純に合計するというわけではなく、下記のようなルールがあります。
1、月単位で計算
2、受診者ごとに計算
3、医療機関ごとに計算(院外処方の薬代は発行した病院の医療費に含む)
4、医科と歯科は分けて計算(同一医療機関でも分ける)
5、入院と外来は分けて計算(入院が複数月にわたるときは分ける)
6、世帯合算する場合、負担額21,000円以上のもののみ合算(70歳未満のケース)
このようなルールで計算すると、限度額を超えるのは意外と難しいようです。
収入が多い世帯や預貯金が少ない場合、医療費の負担には要注意
高額療養費では、所得が高い区分の方の限度額は25万円を超えます。多数回該当では、14万100円に下がりますが、限度額未満の金額は自己負担しなければなりませんので、医療費だけでかなりの負担となるでしょう。
さらに、入院時の差額ベッド代や通院にかかる交通費など、予想外のお金がかかる費用もありますので、民間の医療保険に加入しないなら、預貯金を十分に確保しておく必要があります。
収入もそれなりに増える40代から50代では、子どもの教育費や住宅ローンの負担も重く、預貯金が思うように増えないこともあります。また、20代から30代の若い世代では、収入もそれほど多くなく医療費の負担は意外と重く感じるでしょう。
治療が長引いた場合や、重い病気になった場合、一生涯付き合わなければならないような病気になった場合など、預貯金や高額療養費制度だけでは不安……という方は、対応できるような民間医療保険も検討すると良いでしょう。
Text:福島佳奈美(ふくしま かなみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、DCアドバイザー、ふくしまライフプランニングオフィス代表