「個人事業所に雇われると社会保険に入れない」これって本当?
配信日: 2020.01.08
社会保険に加入するかどうかは本人の勤務時間・勤務日数だけでなく、勤務する事業所が社会保険適用事業所かどうかで決まります。
現行制度上、どのような事業所が該当するのでしょうか。言い換えると、どのような勤務先であれば、従業員は社会保険に加入することになるのでしょうか。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
法人は社会保険の強制適用事業所
社会保険(厚生年金保険・健康保険)が適用される事業所に、フルタイムあるいはその4分の3以上の時間・日数で勤務する人については、厚生年金保険・健康保険制度に加入することになります。
また、フルタイムの4分の3未満であっても、従業員501人以上の大企業に、週20時間以上勤務する場合も対象です(【図表1】)。正社員だけでなく、アルバイト・パート勤務の人でもその対象になりうるといえます。
その社会保険の適用事業所は強制適用事業所と任意適用事業所に分かれています。強制適用事業所とは、【図表1】の従業員に社会保険に加入させる義務がある事業所です。
一方、任意適用事業所は、当該事業所に勤務する人に社会保険に加入させる義務はありません。では、強制適用事業所とはどのような事業所が該当するのでしょうか。
まず、株式会社など法人の場合は業種に関わらず、強制適用事業所です。法人に勤務し、【図表1】の要件に該当する人は社会保険に加入することになります。厚生年金保険制度は最大70歳まで、一方、健康保険制度は最大75歳までの加入です。
個人事業所の場合は業種や従業員数による
一方、法人ではない個人事業所に勤務する人については、業種や従業員数しだいで社会保険に加入します。
個人事業については、業種により適用業種と非適用業種に分かれています。非適用業種とは農林水産、サービス(接客業・理容美容業など)、法務(弁護士業など)、宗教(神社・寺院・教会等)といった業種が該当します。
そして、それ以外の業種(製造、建設、運輸、金融など)は適用業種になります。
個人事業の非適用業種の場合であれば、従業員数に関わらず、強制適用事業所になりませんので、事業所として加入義務がありません。冒頭で触れた、弁護士法人ではない個人の弁護士事務所などでの正規雇用職員は、社会保険に入らないということにもなるでしょう(【図表2】)。
一方、個人事業の適用業種の場合、事業所の従業員数によって加入するかが決まります(【図表2】)。従業員が5人以上の事業所であれば、強制適用事業所になるため、加入することになります。
これから就職・再就職する予定の人は、自身の勤務時間・勤務日数だけでなく、事業所の種類や従業員数などを見て、社会保険の加入対象となるかを確認してみましょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー