2021年1月1日から地震保険の保険料はどう変わる?
配信日: 2020.03.29
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
これまでの振り返り
2021年1月1日から地震保険の保険料が変わります。この改変は、2017年1月1日と2019年1月1日に続く3度目なのです。
さらにさかのぼると、2015年9月30日に「地震保険の保険料率は全国平均で19.0%アップする必要がある」と発表されました。
全国平均で保険料率をアップする必要があるとした理由は、「被害予測による危険度計算を、あらためて行った結果」とされています。しかし、保険料率は2014年7月に、すでに全国平均で15.5%アップしたばかりでした。
こういった経緯から、今回は2017年・2019年・2021年の「3段階に分けて」、地震保険の保険料率を変えることにしたのです。2017年1月1日の保険料率は、2014年7月1日の時と比べて、全国平均で5.1%アップしました。
続く2段階目の2019年1月1日では、2017年1月1日の時と比べて、全国平均で3.8%アップしました。前回に比べるとアップした率が縮小しており、その理由は「耐震性の高い住宅が普及した」ということが挙げられています。
2021年1月1日からの保険料率は?
2021年1月1日には、保険料率は2019年1月1日の時と比べて、全国平均で5.1%のアップになります。その理由は「震源モデルを更新し、地震リスクが若干上昇した」ということが挙げられています。
この3段階に分けて行われる保険料率のアップは、2015年9月30日の時と比べて、全国平均で14.7%増となります。
2021年の改変は具体的にはどうなるの?
前提として、地震保険の保険料は、「建物の構造」によって「イ構造(=耐火建築)」と「ロ構造(=非耐火建築)」に分けられています。そして、それは都道府県ごとに異なります。ただし、損害保険会社による違いはありません。
地震保険は、建物と構造と都道府県、それに保険期間や払い方、割引の適用など、さまざまの条件が同じならどこの損害保険会社で契約しても保険料は同じ金額です。
また、2021年1月1日に変わる地震保険の保険料率は、全国一律でアップするわけではありません。保険料率がダウンする道府県もあります。
具体的にご紹介します。
条件例:保険期間は1年間、地震保険金額1000万円、割引なし
・イ構造(=耐火建築)で7800円→7400円
北海道・青森・新潟・岐阜・京都・兵庫・奈良
・ロ構造(=非耐火建築)で1万3500円→1万2300円
北海道・青森・新潟・岐阜・京都・兵庫・奈良
・イ構造(=耐火建築)で1万4400円→1万1800円
愛知・三重・和歌山
・ロ構造(=非耐火建築)で2万4700円→2万1200円
愛知・三重・和歌山
・イ構造(=耐火建築)で1万2600円→1万1800円
大阪
・ロ構造(=非耐火建築)で2万2400円→2万1200円
大阪
・イ構造(=耐火建築)で1万2000円→1万1800円
愛媛
・ロ構造(=非耐火建築)で2万2400円→2万1200円
愛媛
以上のように、地震保険の保険料がダウンする道府県もありますが、数は少ないですね。
■保険料がアップする金額(=つまり差額)が1500円以下の県は、以下のとおりです。
条件例:保険期間は1年間、地震保険金額1000万円、割引なし
・イ構造(=耐火建築)で7100円→7400円
岩手・秋田・山形・栃木・群馬・富山・石川・福井・長野・滋賀・鳥取・島根・岡山・広島・山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島
・ロ構造(=非耐火建築)1万1600円→1万2300円
岩手・秋田・山形・栃木・群馬・富山・石川・福井・長野・滋賀・鳥取・島根・岡山・広島・山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島
・イ構造(=耐火建築)で1万700円→1万1800円
宮城・山梨・香川・大分・宮崎・沖縄
・イ構造(=耐火建築)で8500円→9700円
福島
・ロ構造(=非耐火構造)で1万9700円→2万1200円
宮城・山梨・香川・大分・宮崎・沖縄
■保険料がアップする金額(=つまり差額)が2200円以上の県は、以下のとおりです。
・イ構造(=耐火建築)で1万5500円→1万7700円
茨城・徳島・高知
・イ構造(=耐火建築)で2万5000円→2万7500円
千葉・東京・神奈川・静岡
・イ構造(=耐火建築)で1万7800円→2万400円
埼玉
・ロ構造(=非耐火建築)で3万8900円→4万2200円
千葉・東京・神奈川・静岡
・ロ構造(=非耐火建築)で3万2000円→3万6600円
茨城・埼玉
・ロ構造(=非耐火建築)で3万6500円→4万1800円
徳島・高知
アップする金額が最も高いのは、ロ構造で徳島・高知の5300円。ダウンする金額が最も大きいのは、同じくロ構造の愛知・三重・和歌山の3500円です。
地震保険の見直し
2021年1月1日に保険料がダウンする都道府県にお住まいの方は、この機会に地震保険を見直すことも考えてみてはいかがでしょうか。
そもそも地震保険を掛けることができるのは最長で5年です。また、地震保険は単体で契約することはできず、火災保険を主契約として、火災保険とセットで契約することになります。
主契約の火災保険の期間が、例えば10年間だったとしても地震保険の保険期間は最長5年間なのです。また、地震保険の満期は火災保険の満期に合わせる必要があります。もし、火災保険の満期までが3年間なら、地震保険の保険期間も3年間ということです。
地震保険の保険料を「なるべく安いまま最長の5年間続けたい」ということでしたら、主契約になっている火災保険と地震保険と一緒に契約をし直す必要があるかもしれません(主契約になっている火災保険を現状のまま続け、地震保険だけを契約し直すということもできます)。
ところで、2021年1月1日以前、つまり保険料が変わる前に契約を済ませておけば、変更前の保険料で最長5年間の契約を続けることはできるのでしょうか。
変更前の保険料で5年間の契約をしたいのであれば、保険料を5年間分一括で支払う必要があります。加えて、地震保険の保険料を5年間分一括で支払う場合、主契約の火災保険の保険期間を5年以上とし、火災保険の保険料も一括で支払わなくてはなりません。
例えば、2020年12月31日に保険期間5年の地震保険の契約した場合、保険料の支払い方法を「年払い」にすると、変更前の保険料は1年分のみとなり、残りの4年分は変更後の保険料になります。「月払い」で契約した場合は、変更前の保険料はわずかに1ヶ月分ということです。
前述したように、2021年1月1日の保険料改変は、2017年、2019年に続く3段階目です。もし、2016年12月31日に地震保険の契約をし、保険料を5年間分一括で払っていれば、2021年12月31日までは当時の保険料で契約が続きます。
このような場合、例えば2020年12月31日に地震保険を契約し直し、5年間分の保険料を一括で払えば、「3段階のうちの2段階目」の保険料で2025年12月31日まで契約を続けることができます。
ただし、契約当初の保険料(3段階よりも前)が1年分存続するため、契約し直さないほうが有利であると考えることもできます。
地震保険……変わるのは保険料だけではない?
地震保険は、2021年1月1日に変わるのは保険料だけではありません。長期係数といわれるものも変わります。長期係数とは、地震保険の保険料を、2年分以上をまとめて払う場合に使う数字のことです。
具体的には、以下のとおりです。
保険期間 改定前の長期係数→改定後の長期係数
2年間 1.90→1.90
3年間 2.80→2.85
4年間 3.70→3.75
5年間 4.60→4.65
例えば、東京のイ構造(=耐火建築)の場合、2020年12月31日までに地震保険を保険金1000万円、割引等はなしで契約し、5年分の保険料を一括で払うと、【2万5000円×4.60=11万5000円】となります。
これが、2021年1月1日以降に、地震保険を保険金1000万円、割引等はなしで契約し、5年分の保険料を一括で払うと、【2万7500円×4.65=12万7875円】となるのです。
保険料を2年分以上一括で払う場合、保険料に年数を掛けるのではなく、長期係数を掛けるので1年当たりの保険料がお得になります。
しかし、前述のとおり、保険期間が3年、4年、5年の長期係数は軒並み上がっていますので、保険料を一括で払う時のお得度は下がってしまうともいえますね。
まとめに代えて
地震保険の保険料は全国一律にアップするのではなく、県によっては保険料がダウンする都道府県もあります。また、保険料率がアップする都道府県であってもアップする金額は一律ではなく、差があります。
そして、長期係数が上がるということも忘れてはいけないポイントです。以上を踏まえ、地震保険を契約し直すのか否か、検討してください。
なお、本稿はあくまでも情報の提供が目的であり、地震保険の契約をお勧めするためのものではありません。
(参考)
損害保険料算出機構「地震保険基準料率の届出について P.3、P.4」
損害保険料算出機構「記者発表資料」
損害保険料算出機構「地震保険基準料率 届出のご案内 P.2、P.5」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役