更新日: 2020.07.13 生命保険
生命保険のキホン 保険金受取人の変更に本人の承諾は必要?
保険金受取人の変更方法や課税関係についてポイントを解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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生命保険の登場人物
生命保険を契約する場合、3名の人物が登場します。保険契約者、被保険者、保険金受取人の3名です。保険契約者は保険料を支払う義務のある人をいいます。通常、保険契約者は実際に保険料を支払う人(保険料負担者)と同じですが、保険契約者と実際に保険料を支払う人が違う場合もあります。
被保険者は、保険の対象になる人のことです。例えば、死亡保険の場合はこの人が死亡したときに保険金が支払われます。保険金受取人は、保険会社(保険者)から保険給付を受ける者として指定された人をいいます。
生命保険の課税関係は、保険料負担者、被保険者、保険金受取人の関係で決まります。例えば、死亡保険金を受け取った場合、保険料負担者と被保険者が同一であれば相続税が課税されます。異なる場合、保険料負担者と保険金受取人が同一人であれば所得税、別人であれば贈与税が課税されます。契約形態に留意しましょう。
保険金受取人の変更に本人の承諾は不要
保険金受取人の変更は、保険契約者から保険会社に対する意思表示(保険会社所定の請求書の提出)によって行います。保険金受取人の変更は保険事故(死亡・満期など)が生じるまでは、被保険者の同意を得て行うことができます。保険金受取人の承諾は不要です。
保険法では、保険金受取人の変更の意思表示は、保険会社にその通知が到達したとき、保険契約者が通知を発したときにさかのぼって効力が生じると規定しています。
例えば、保険金受取人を離婚後、元妻から子どもに変更する通知が保険会社に到達する前に被保険者が死亡したとしましょう。この場合、保険金受取人の変更が保険会社に到達したときに効力が生じるとすると、元妻に保険金を請求する権利があることになります。これは保険契約者の意思に反することになりますので、通知の効力を到達時ではなく発信時にしたのです。
遺言で保険金受取人の変更はできる?
保険法では遺言により保険金受取人を変更できることが規定されています。遺言の効力が発生するのは死亡のときです。そうすると、次のような不都合が生じる場合があります。
つまり、遺言の内容を知らない保険会社が旧保険金受取人に保険金を支払ってしまう事態です。
そこで、保険法では保険金の二重払いを回避するために、遺言による保険金受取人変更は、保険契約者の相続人が保険会社に通知しない限り、変更を保険会社に対抗(主張)できないと規定しています。
保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合
保険金受取人の変更は、保険事故が発生するまではいつでも行うことができます。発生後は変更できません。
保険金受取人が死亡し、保険契約者が新たな保険金受取人を選定する前に保険事故が生じた場合、保険金受取人は誰になるのでしょうか。
この場合、保険法によると、約款に異なる定めがない限り、保険金受取人は、その相続人全員がなると定められています。
相続人が複数の場合は、保険約款の規定により、平等の割合によるものと、民法の法定相続分の割合による場合があります。
例えば、死亡保険金が1800万円で相続人が妻と子ども2人だとすると、平等割合では各人600万円の保険金を受け取る権利を取得しますが、法定相続分の割合では、妻が900万円、子どもが各450万円の保険金を受け取る権利を取得します。
保険金受取人と課税関係
生命保険は出口課税です。つまり、保険金などを受け取ったときに、保険料負担者、被保険者、保険金受取人の関係によって課税関係が決まります。保険期間の途中で受取人を変更しても、その時点で課税されることはありません。
保険金受取人を変更する場合は、将来の税金も考えて決めましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。