更新日: 2021.06.23 控除

生命保険に加入すると税金が安くなる「生命保険料控除」どれだけ安くなるの?

執筆者 : 新美昌也

生命保険に加入すると税金が安くなる「生命保険料控除」どれだけ安くなるの?
納税者が生命保険や医療保険、個人年金保険などの保険料を支払った場合には、その年の1月1日~12月31日に支払った保険料のうち一定額が所得から控除でき、所得税・住民税の負担を軽減できます。これを生命保険料控除といいます。
 
平成24年1月1日以後に締結した保険契約等と平成23年12月31日以前に締結した保険契約等では、生命保険料控除の取り扱いが異なります。
 
生命保険料控除を受ける手続きは、会社員やパートタイマーなら基本的に勤務先の年末調整で、自営業者なら確定申告で行います。生命保険料控除のポイントを解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

生命保険料控除の対象となる保険契約等

生命保険料控除の対象となる保険契約等には、生命保険契約等、介護医療保険契約等および個人年金保険契約等があります。ただし、保険期間が5年未満の契約で、いわゆる貯蓄保険や貯蓄共済は対象になりません。
 
また、外国生命保険会社等または外国損害保険会社等と国外において締結したもの、ならびに信用保険契約、傷害保険契約、財形貯蓄契約、財形住宅貯蓄契約、財形年金貯蓄契約なども該当しません。短期少額保険の保険料も対象外です。
 

生命保険料控除の対象となる人

例えば、妻が契約者である生命保険契約の保険料を夫が支払っている、というケースはよくあると思います。この場合、夫が支払った保険料は夫の生命保険料控除の対象となるでしょうか?
 
生命保険料控除の対象となる生命保険契約等とは、その保険金等の受取人のすべてが、自己または自己の配偶者、その他の親族であることが要件となっていますが、契約者が誰であるかは要件とされていません。
 
したがって、契約者が妻であっても、この条件を満たす限り、保険料を支払った夫が、生命保険料控除の対象となります。
 
一方、夫が保険料を支払ったとしても、保険金等の受取人が離婚した妻である場合などは、生命保険料控除の対象になりませんので留意しましょう。生命保険料控除を受けるには、受取人を子どもなどに変更しておく必要があります。
 

生命保険料控除の額

平成24年1月1日以後に締結した保険契約等と平成23年12月31日以前に締結した保険契約等では、生命保険料控除の取り扱いが異なります。なお、控除できる支払保険料等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。
 
●平成23年12月31日以前に締結した保険契約等
「一般の生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2つがあり、控除できる上限額は所得税で合計10万円、住民税で合計7万円です。「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」とも控除額の計算方法は同じです。計算方法は以下のとおりです。
 
所得税
2万5000円以下:払込保険料の全額
2万5000円超5万円以下:支払保険料×1/2+1万2500円
5万円超10万円以下:支払保険料×1/4+2万5000円
10万円超:一律5万円
 
住民税
1万5000円以下:払込保険料の全額
1万5000円超4万円以下:払込保険料×1/2+7500円
4万円超7万円以下:払込保険料×1/4+1万7500円
7万円超:一律3万5000円
 
●平成24年1月1日以後に締結した保険契約等
「一般の生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」に加え、「介護医療保険控除」が創設されました。
 
控除できる上限額は所得税で合計12万円、住民税で合計7万円です(2.8万円×3=8.4万円ではありません)。「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」とも控除額の計算方法は同じです。計算方法は以下のとおりです。
 
所得税
(支払った保険料の合計額):(生命保険料控除額)
2万円以下:払込保険料の全額
2万円超4万円以下:払込保険料×1/2+1万円
4万円超8万円以下:払込保険料×1/4+2万円
8万円超:一律4万円
 
住民税
1万2000円以下:払込保険料の全額
1万2000円超3万2000円以下:払込保険料×1/2+6000円
3万2000円超5万6000円以下:払込保険料×1/4+1万4000円
5万6000円超:一律2万8000円
 
なお、生命保険料控除の対象となる個人年金保険は、生命保険契約のうち個人年金(退職金を除く)を給付する契約で、「年金の受取人は、保険料もしくは掛金の払い込みをする者、またはその配偶者となっている契約であること」「保険料等は、年金の支払いを受けるまでに10年以上の期間にわたって、定期に支払う契約であること」「年金の支払いは、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期または終身の年金であること」といった条件を満たすものでなければなりません。
 
この条件を満たさない場合は、商品名が個人年金保険でも、支払保険料は個人年金保険料控除の対象ではなく、一般生命保険料控除の対象です。
 
介護保険も一般生命保険料控除の対象になるものがありますので、商品名に惑わされないようにしましょう。また、損害保険会社が扱っている商品(医療保険、がん保険など)の中にも生命保険料控除の対象となるものがあります。損害保険会社の商品だから生命保険料控除の対象にならないというわけではありません。
 

新契約と旧契約の双方に加入している場合の控除額

一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除の対象となる保険契約について、旧制度が適用される保険と新制度が適用される保険の両方に入っている場合の控除額はどうなるのでしょうか?
 
一般生命保険料控除と個人年金保険料控除については、旧制度と新制度でそれぞれ計算して合計できます。ただし、合計した場合の各控除の適用限度額は、所得税4万円、住民税2万8000円です。
 
旧制度の適用限度額は、所得税で5万円、住民税で3万5000円です。旧制度のみで所得税の控除額が4万円超の場合は、旧制度適用契約の控除額のみで控除します。合計するよりも、この方が得です。
 
各控除の金額を計算したら最後に合計します。ただし、新・旧あわせて制度全体の適用限度額は所得税で12万円、住民税で7万円です。
 

生命保険料控除の効果

まれに、控除額の分、税金が安くなると勘違いしている人がいます。生命保険料控除は、税額控除ではなく、所得控除ですので、課税される所得額が少なくなるにすぎません。実際の節税額は、所得×税率です。同じ控除額でも税率の高い人のほうが節税効果は高いです。
 

生命保険料控除の手続き

毎年10月頃、生命保険会社等から生命保険料控除証明書が送られてきますので、大切に保管しておきましょう。給与所得者(会社員など)は、会社からもらう給与所得者の保険料控除申告書に必要事項を記入して、生命保険料控除証明書を添付して会社に提出します。
 
一方、個人事業主(自営業者)は、確定申告の時に生命保険料控除証明書を添付して税務署に提出します。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
 

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