更新日: 2020.09.04 その他保険

国民健康保険「傷病手当金が支給される」ことをご存じですか?

執筆者 : 新美昌也

国民健康保険「傷病手当金が支給される」ことをご存じですか?
傷病手当金は、被保険者が病気またはケガのため仕事ができない場合に、給与の3分の2を支給する制度で、会社員等の健康保険加入者に支給されます。自営業者などが加入する国民健康保険では任意給付であり、市町村の国民健康保険では給付実績はありません。
 
この度、特例的に新型コロナウイルス感染症に感染、または発熱等の症状があり、感染が疑われる人で、仕事を休んだ従業員に、国民健康保険からも傷病手当金の支給が可能となりました。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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国民健康保険とは

すべての国民はなんらかの医療保険に加入しなければなりません。国民健康保険制度は、原則として被用者保険等の適用者以外の国民(学生、自営業者など)すべてが被保険者となります。
 
保険者は、市町村(特別区を含む)と医師や弁護士などを対象とする国民健康保険組合です。
 
保険給付の種類は、基本的に会社員が加入する健康保険と同じです。疾病または負傷に関しては療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費、移送費、高額療養費及び高額介護合算療養費の支給、出産に関しては出産育児一時金の支給、死亡に関しては葬祭費の支給(葬祭の給付)があります。
 
その他、傷病手当金、出産手当金の支給がありますが、これらは会社員などが加入する健康保険と異なり、任意給付となっています。傷病手当金、出産手当金は働けなくなった方の収入を補てんするものだからです。

傷病手当金(国民健康保険)の対象者

傷病手当金は任意給付することはできますが、市町村が運営する国民健康保険では支給実績はありません。この度、新型コロナ対策の一環として国民健康保険加入者の一部も特例的に傷病手当金の給付対象となりました。
 
対象となるのは、国民健康保険の加入者のうち、会社等に勤めている人で新型コロナウイルス感染症に感染または発熱等の症状があり、感染が疑われるため労務に服することができなくなり、給与等の全部または一部の支払いを受けることができなくなった人です。
 
新型コロナウイルス感染症に感染または発熱等の症状があり感染が疑われる場合とは、風邪の症状や発熱が続いている場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合などを目安としています。結果として、新型コロナウイルス感染症に感染していなかった場合も含みます。
 
国民健康保険加入者でも、学生や自営業者などは対象になりません。労働時間など一定の要件を満たさないために健康保険などの被用者保険に加入できない人が対象です。
 
個人事業主の家族で、青色専従者給与の支払いを受けている人も支給対象となります。これらの方は、健康保険の加入者と同じように就業不能による収入の減少を補てんする必要性があるからです。

傷病手当金(国民健康保険)の支給額

業務外の事由による病気やケガの療養のため働けなくなり、会社を連続3日休んだ場合、4日目から、「直近の継続した3カ月間の給与収入の合計額を就労日数で除した金額×2/3×日数」の現金が支給されます。ただし、給与等の一部が勤務先から支給される場合は、支給額が調整されます。
 
例えば、直近3カ月の給与収入が60万円(20万円×3)で直近3カ月の就労日数が60日の場合、1日当たりの収入の2/3は1万円×2/3=6667円となりますので、10日間新型コロナウイルスの影響で働けなくなった場合の傷病手当金は最大6667円×7日=4万6669円です。
 
適用期間(労務に服することができなくなった起算日の適用期間)は令和2年1月1日から9月30日の間で、療養のため労務に服することができない期間です(入院が継続する場合等は最長1年6カ月まで)。

傷病手当金(国保)の申請方法

申請方法は4種類の申請書を記載のうえ、(1)公的機関が交付した顔写真付きの身分証明書、(2)被保険者証、(3)印鑑、(4)世帯主の口座がわかるものを持参のうえ、担当窓口に提出します。申請者は、対象者の世帯の世帯主です。詳しくは市町村のホームページなどでご確認ください。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

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