更新日: 2020.03.04 その他年金

【FP解説】年金の「知らないと損!」 傷病手当金と障害年金を併給する

執筆者 : 和田隆

【FP解説】年金の「知らないと損!」 傷病手当金と障害年金を併給する
全員が加入しているにもかかわらず、学校でも習わないし、周りに知っている人も少ない年金制度。そのような理由からか、「さあ、もらおう」とするとすでに手遅れになっている場合も。「しまった!」と、ほぞをかむ思いをしなくてもすむように、あらかじめ知っておきたい知識の数々をお伝えします。
 
第10回は「傷病手当金と障害年金を併給する」です。
 

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和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「まず、傷病手当金」が一般的

会社勤めをしている人が病気やけがで就労できなくなった場合、まず、傷病手当金を受給し、その後、症状を見ながら、障害年金の受給を検討するのが一般的です。会社の総務課や人事課などの担当者も、そのような順序で手続きをするように勧めるでしょう。しかし、このやり方では損をすることがあります。

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傷病手当金とは、どんなもの?

傷病手当金は、病気やけがで就労できなくなった人の生活を金銭面から支援するための制度で、健康保険から支給されます。
 
受給条件は、
(1)病気やけがの療養のための休業であること
(2)病気やけがの原因が業務上(通勤途上を含む)ではないこと
(3)仕事に就くことができないこと
(4)連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
(5)休業した期間について、原則として給与の支払いがないこと

などです。
 
傷病手当金の日額は、簡潔に表現すれば、給料の日額の3分の2で、支給期間は最長1年6ヶ月間です。

傷病手当金と障害厚生年金の間の調整

ただし、傷病手当金と障害厚生年金の両方が受給できる場合は、両者の間で調整が行われます。まず、障害厚生年金が優先的に支給され、傷病手当金の1日分と障害厚生年金の1日分を比較して、傷病手当金の1日分のほうが多い場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。
 
この比較をするとき、障害厚生年金の額は、障害等級が2級以上に該当すれば障害基礎年金も受給でき、「障害厚生年金+障害基礎年金」の額とされます。
 
会社勤めの大半の人で傷病手当金のほうが障害厚生年金より多く、したがって、傷病手当金を受給している間は、障害厚生年金の請求をする必要性がないわけです。「まず、傷病手当金。次に、障害年金」と言われるのはこのためです。

障害基礎年金の場合は別

ところで、障害年金は、病気やけがの初診日によって受給できる年金の種類が異なります。初診日が厚生年金保険の被保険者期間であった場合は、障害厚生年金(上記の例でいえば、2級以上だと障害厚生年金+障害基礎年金)が支給され、初診日が国民年金の被保険者期間であった場合は、単独の障害基礎年金が支給されます。
 
このため、就労できなくなった病気やけがの初診日が国民年金の被保険者期間であった場合は、障害厚生年金ではなく、単独の障害基礎年金を受給することになります。
 
ところが、単独の障害基礎年金と傷病手当金の間では、調整をするという規定がありません。したがって、初診日が国民年金の被保険者であった場合の病気やけがで就労できなくなった人は、傷病手当金と障害基礎年金の両方を全額併給できるわけです。
 
こうなると、障害年金の請求をのんびり行うわけにはいきません。特に「最近になって症状が重くなった」と主張して請求をする事後重症請求の場合は、請求月の翌月分から支給されますので、請求を急ぐ必要があります。請求が遅れると、それだけ損をすることになります。
 


 

例:Aさんの場合

会社員のAさんは、一般雇用でフルタイム勤務でしたので、給与から厚生年金保険や健康保険などの社会保険料が控除されていました。Aさんには就職前に病院を受診し、初診日に内臓疾患が見つかりました。
 
ただ、症状が軽かったのでフルタイム勤務ができていたのですが、数ヶ月前に症状が急激に悪化、翌月から休職をしました。休職中は給与が支給されないという規則の会社でしたので、傷病手当金を請求、併せて、障害基礎年金も請求しました。この結果、どちらも支給され、当面の生活の不安は小さくなりました。
 
初診日に加入していた年金制度をきちんと把握して対応することの重要性がここにあります。

傷病手当金と障害厚生年金が供給されるケースも

上記のケースとは異なって、傷病手当金と障害厚生年金の間でも調整がない場合があります。それは、傷病手当金の対象となった病気やけがと、障害厚生年金の対象となった病気やけがが異なる場合です。
 
内臓疾患で障害厚生年金を受給していた人が交通事故で重傷を負い、傷病手当金を受給する場合などです。このような場合は、傷病手当金と障害厚生年金が併給されます。
 
一般的に言われている「まず、傷病手当金。次に、障害年金」は、すべての人にとって正解であるとはいえないのです。
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士