訪問看護ってどんなサービス?医療保険と介護保険でどう違う?
配信日: 2020.09.12
介護保険と医療保険の双方から、訪問看護を受けることができるのでしょうか。疑問にお答えします。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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訪問看護はどんなサービス?
訪問看護は、看護師、保健師など看護の専門職が家庭を訪問し、主治医の「訪問看護指示書」に従って、療養上の世話や医療処置などを行います。理学療養士などリハビリテーションの専門職が訪問することもあります。
看護等の具体的内容は、症状の観察、床ずれの処置、体位交換、清拭・洗髪、医療機器の管理(人工呼吸器、在宅酸素等)、医師の指示による医療処置(点滴、採血等)、リハビリテーション、食事・排泄の介助、介護方法の指導・助言、みとりの支援などです。
訪問看護を利用できる方は、病状が比較的安定した状態にあり、居宅で看護師等による療養上の世話や医療処置などが必要であると医師が認めた患者です。サービスの提供は、病院や訪問看護ステーションなどが行います。24時間365日対応している事業所もあります。
訪問看護を利用したい場合は、受診している医療機関や訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどで相談しましょう。
介護保険が優先されます
訪問看護は介護保険と医療保険で利用できます。サービスの内容に違いはありませんが、介護保険と医療保険の双方から訪問看護を受けることができません。介護保険からサービスを受けることができる場合は、介護保険からの給付が優先されます。
ただし、介護保険が利用できる場合でも、末期がんや厚生労働省が定めた疾病や状態に該当する利用者や、重度の褥瘡(じょくそう)、精神疾患など頻繁な訪問が必要な方は、医療保険による訪問看護を受けることができます。
医療保険と介護保険での違い
介護保険のサービスを利用するには、介護認定を受け、介護サービス提供事業者と契約し、ケアプランにサービスを組み込まなければなりません。一方、医療保険は保険証を持っていれば全国どこの医療機関でもサービスを受けることができます。
医療保険の訪問看護と介護保険の訪問看護を比べると、「利用者負担」「週当たりの利用可能日数」「支給限度額」などに違いがあります。主な違いを見てみましょう。
1.利用可能年齢と負担割合
医療保険では、「75歳以上」は1割負担、「0歳~小学校就学前および70~74歳」は2割負担、「小学校就学後~69歳」は3割負担です。ただし、70歳以上でも一定の所得のある人は3割負担です。一方、介護保険の場合、40~64歳で要介護認定を受けた方は1割負担、65歳以上で要介護認定を受けた方は所得に応じて1~3割です。
2.週当たりの利用可能日数
医療保険では週3回までです。ただし、厚生労働省が定めた疾病や状態に該当する利用者や頻繁な訪問が必要であるとして、「特別訪問看護指示書」が交付された場合は制限がありません。
一方、介護保険では制限がありません。ただし、要介護度に応じた利用限度額を超えると超えた分のサービスは全額自己負担になります。
3.1回の訪問時間
医療保険では、30分から1時間半程度です。介護保険では、20分未満、30分未満、1時間未満、1時間30分未満となっています。
4.1日当たりの利用可能回数
医療保険では、1日1回までです。ただし、厚生労働省が定めた疾病や状態に該当する利用者や頻繁な訪問が必要であるとして、「特別訪問看護指示書」が交付された場合は制限がありません。
一方、介護保険では制限がありません。ただし、要介護度に応じた利用限度額を超えると、超えた分のサービスは全額自己負担になります。
5.利用可能事業者数
医療保険では1カ所のみですが、介護保険では制限がありません。
6.訪問看護の費用の目安
訪問看護ステーションからの訪問看護で、週1回、1回1時間の訪問看護(加算料金なし)の場合、介護保険(1割負担)では1回 約816円、医療保険(3割負担)では1日約3000円となります(公益財団法人日本訪問看護財団の資料より引用。なお、金額は平成30年度)。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。