更新日: 2020.11.20 その他保険

介護保険料ってどうやって決まるの? 65歳未満と以上でどう違う?

介護保険料ってどうやって決まるの? 65歳未満と以上でどう違う?
介護保険は少子高齢化の深刻化に伴い、近い将来発生するであろう「介護」に備えるため、2000年4月から運用が開始された比較的新しい公的保険制度です。
 
介護保険は全ての国民が対象となるわけではなく、40歳に達すると介護保険の対象者となって保険料の徴収が始まります。しかし、40歳以上の第2号被保険者と65歳以上からの第1号被保険者では保険内容や保険の徴収方法などが異なるといった複雑な面もあります。
 
今回は介護保険の仕組みや保険料の算出方法についてシミュレーションを交えながら解説していきます。
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

介護保険の仕組み

介護保険の対象となる人

介護保険は、40歳に達した時点で自動的に第2号被保険者となって保険料の徴収が始まり、その後、65歳以上に達すると第1号被保険者に移行し、より充実した保障が得られるようになります。
 
また、扶養に入っている配偶者が夫より先に40歳に達した場合は第2号被保険者に該当しますが、夫の年齢が40歳未満であれば介護保険料の徴収は基本的には行われません。
 

第1号被保険者と第2号被保険者の違い

介護保険では被保険者の年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に区分されます。主な違いとして、第1号被保険者は原因を問わず要介護・要支援状態の認定を受ければ介護保険の対象となることができます。
 
しかし、第2号被保険者が介護保険の適用を受けるには、がんや脳卒中などの脳血管疾患といった加齢に起因する「特定疾病」で要介護・要支援状態の認定を受けた場合のみとなります。この他にも第1号被保険者と第2号被保険者には、表1のようにさまざまな違いがあります。
 
表1.第1号被保険者と第2号被保険者の主な相違点

第1号被保険者 第2号被保険者
対象者 65歳以上の全員 40歳以上65歳未満の健康保険加入者で、認定者のみ
保険料 ・市区町村が徴収
・地域によって保険料が異なる
・協会けんぽなどの場合、介護保険料は全国一律で、負担は労使折半となる。
・国民健康保険の場合は、市区町村が徴収し、地域によって保険料が異なる。
受給権の発生 要介護・要支援状態となった場合 特定疾病(末期がん・関節リウマチなど)により要介護・要支援状態となった場合
自己負担 食費・居住費以外の費用について
1割を自己負担
食費・居住費以外の費用について
1割を自己負担

第2号被保険者の保険料支払い

【協会けんぽの場合】

第2号被保険者の保険料は所属している健康保険制度によって異なります。会社員などが加入している協会けんぽなどでは健康保険料と合わせて給与などから天引きされています。介護保険料の負担は2020年現在で全国一律の1.79%となっていますが、これは使用者と従業員の労使折半となっています。
 
従業員が負担する保険料は、50等級に区分されている標準報酬月額に1.79%の半分である0.895%を乗じた金額となります。
 

【国民健康保険の場合】

自営業の方が多く加入している国民健康保険では、加入している市区町村ごとに異なる保険料率が設定されており、国民健康保険の保険料と合わせて介護保険料の支払いを行うことになりますが、介護保険料の負担額は以下の要素によって変化します。
 
・均等割:第2号被保険者の人数に市区町村ごとに定められた一定額を乗じたもの。
・所得割:第2号被保険者の基礎控除後の総所得金額に市区町村ごとに定められた一定の割合を乗じたもの。
・資産割:固定資産税の額に市区町村ごとに定められた一定の割合を乗じたもの。
・平等割:世帯ごとに市区町村ごとに定められた一定額を負担するもの。

第1号被保険者の保険料支払い

65歳以上の方が対象となる第1号被保険者の介護保険料の徴収方法は、主に国民年金や厚生年金などの公的年金からの天引き(特別徴収)によって行われます。
 
第2号被保険者の場合には不要であった扶養に入っている配偶者も独自に加入することとなるため、本人および配偶者の保険料負担が生じることになります。
 
第1号被保険者の介護保険料は、「基準額×所得段階」に応じた保険料率で算出されますが、基準額は市区町村によってそれぞれ異なっているため、同程度の所得であっても居住地によって介護保険料が変化することになります。

どれくらいの金額になる?

【第2号被保険者のシミュレーション】

協会けんぽに加入している第2号被保険者の2020年の介護保険料はいくらになるのかを以下の条件で算出を行います。
 
月収30万円(22等級、標準報酬月額30万円)
賞与額50万円×年2回(標準賞与額50万円)
2020年介護保険料率1.79%を労使折半で従業員負担率0.895%
 
1.標準報酬月額30万円×従業員の介護保険料負担率0.895%×12ヶ月=3万2220円
2.標準賞与額50万円×従業員の介護保険料負担率0.895%×2回=8950円
 
年間の介護保険料合計=4万1170円となります。
 

【第1号被保険者の家庭のシミュレーション】

次に65歳以上に達し第1号被保険者となった年金生活者ご夫婦の2020年の介護保険料はいくらになるのかを以下の条件で算出を行います。なお、第1号被保険者の場合は市区町村によって負担額が変わるため、シミュレーションでは東京都江東区の場合を想定しています。
 
公的年金収入額:夫の年額180万円(保険料段階:第7段階)、妻の年額78万円(保険料段階:第4段階)
基準額:6万4800円
 
夫の介護保険料:6万4800円×1.30=年額8万4240円
妻の介護保険料:6万4800円×0.85=年額5万5080円
 
年間の介護保険料合計=13万9320円
 
第1号被保険者の場合、介護保険料の労使折半がなくなるほか、配偶者の介護保険料も発生するようになるため介護保険料負担が大きく増加するので注意しましょう。

保険料が払えないときは

介護保険は保険料の未納期間が1年以上に達した場合、表2に示すように給付金やサービスに段階的に制限が加えられていきます。
 
特に2年以上滞納してしまうと自己負担額が引き上げられてしまうなどの大きなペナルティーが課され、大きな金銭的負担が生じることになります。
 
表2.介護保険料未納期間ごとのペナルティー内容

未納期間 ペナルティー内容
未納期間が1年以上 介護費用の1割の自己負担分だけの支払いで済ますことができなくなります。介護費用の全額をいったん自己負担し、介護保険の給付金は後日申請を行うことで受け取ることができます。
未納期間が1年6ヶ月以上 介護費用の全額がいったん自己負担となりますが、給付金の申請を行っても介護保険料が納付されるまでは給付金を受け取ることができなくなります。
未納期間が2年以上 未納期間が2年を経過すると時効によって未納分の介護保険料を支払うことができなくなってしまいます。
高額介護サービス費が利用できなくなるほか、自己負担割合の引き上げも行われ、自己負担割合が1割の場合は3割となるなど大きな負担が生じることになります。

 

【新型コロナウイルスの流行に伴う介護保険料の減免制度について】

2020年は新型コロナウイルスの世界的な流行により営業自粛や自宅待機などを余儀なくされ収入が減少してしまうなど多くの経済的影響が発生しました。介護保険料の徴収においてもそうした事情を考慮し、感染症の影響により収入が一定程度減少した方の保険料徴収を減免するよう通達が発せられています。
 
減免の対象となるのは第1号被保険者で、生計を維持している方が死亡・重度疾病にかかった場合は介護保険料の全額が免除されたり、事業の廃止や収入の減少の場合は減免措置を受けたりすることができます。
 
減免の要件については介護保険を主管する市区町村ごとに独自に定められていますので収入の減少など要件に合致する可能性がある場合はお住まいの市区町村に問い合わせされることをおすすめします。なお、その際は、感染防止のため直接来庁せず電話やメールなどで相談を行いましょう。

まとめ

介護保険料率は少子高齢化の深化に伴って年々上昇が続いており、負担も無視できないものとなってきています。また、介護保険の制度内容も年齢によって保険内容や保険料が変わるなど比較的複雑なものとなっています。
 
しかし、介護保険は介護が必要なったときにその金銭的負担を軽減する重要な公的保険制度であり、上手に活用することで介護離職などのリスクを減らすことができます。
 
介護保険料を滞納してしまうと自己負担割合の増加や高額介護サービス費が利用できないなどの金銭的なペナルティーが発生する恐れがあるため、滞納には注意しましょう。
 
[出典]東京都江東区「令和2年度の保険料(年額)」
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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