ある事業所で派遣社員として働き始めたAさん。2つの「期間制限」に苦しまされた!?
配信日: 2018.03.22 更新日: 2019.07.04
それにより、派遣労働者は、一定の例外に該当する場合を除き「派遣先事業所単位の期間制限」と「派遣労働者個人単位の期間制限」による制限を受けることとなりました。
「派遣先事業所単位の期間制限」と「派遣労働者個人単位の期間制限」とは、一体どういった内容の制限なのでしょうか。
2015年9月30日からとある事業所で派遣社員として働き始めたAさんの例をもとに解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
「派遣先事業所単位の期間制限」とは
「派遣先事業所単位の期間制限」とは、同一の事業所において、派遣労働者について3年を超えて受け入れてはならない。という制限のことをいいます。
例えば、派遣先となる事業所において、初めて受け入れる派遣社員がAさんであれば、その事業所では2018年9月30日以降、派遣社員を受け入れることができなくなるのです。
この後、Bさんが2018年9月1日から同じ事業所へ派遣されてきたとしても、Aさんと同じく、2018年9月30日以降は就業することができません。
ただし、この期間は、3年を迎える日の1カ月前までに、事業所において、過半数の労働組合などへ意見聴取手続きをとることで、最大3年間延長することができます。
延長回数に制限はありませんので、適正に手続きをとることで、何度でも延長することができます。
ちなみに、ここでいう事業所とは場所的に独立していることはもちろん、経営の単位がある程度独立していることなどが必要とされます。
また、派遣労働者を受け入れていない期間が3カ月を超えると、派遣先事業所単位の期間制限はリセットされることとなります。
「派遣労働者個人単位の期間制限」
「派遣労働者個人単位の期間制限」とは、派遣労働者が同一の組織単位(課やグループなど)で3年を超えて働いてはいけないという制限です。
この制限は個人単位であるため事業所の制限と異なり、派遣労働者個人によって制限となる日が異なります。
つまり、2015年9月30日に派遣されたAさんは、2018年9月30日に個人単位の制限を迎える日となります。
その後、Bさんが2016年9月30日に派遣されてくると、Bさんにおいては、2019年9月30日が個人単位の制限を迎える日となります。
個人の期間制限については、別の組織単位へ移動するか、同一の組織単位から離れた期間が3カ月を超えることでリセットされます。組織単位の同一性は、業務の内容や指揮命令者、組織の形態などの実態を考慮して判断されます。
そのため、所属する組織単位の名称が変わっただけでは3年の期間がリセットされません。
また、実際に組織単位が変わったとしても、業務の内容が同様であり、指揮命令者やその系統にも変更が見られないと、組織的にほぼ同様だと判断されてしまうことがあります。
そうなってしまうと、組織単位が変わったとは認められず、3年の期間がリセットされないこともあり、注意が必要です。
事業所単位の抵触日と個人単位の抵触日はセットで考えましょう
仮に、Aさんが2017年の9月30日に営業課から経理課へ移動し、個人単位の制限がリセットされたと仮定します。
この場合、Aさんの個人単位の制限となる日は2020年9月30日までに延長されます。
しかし、個人単位の期間制限が延長されていたとしても、事業所単位の期間制限についての延長手続きがとられていないと、2018年9月30日に事業所単位の期間制限が到来してしまいます。
その結果、Aさんは当該事業所において就業することができなくなってしまうのです。
事業所単位と個人単位の期間制限は必ず確認しておきましょう
派遣労働者にとって、派遣期間の制限は非常に重要な問題となります。
一定の例外事由やクーリング期間などが存在するものの、基本的には期間制限に縛られることになります。直前になって慌ててしまうことのないよう、2つの期間制限について、派遣元へ確認しておくようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー