更新日: 2019.08.30 その他暮らし

実録「漫画業界」の厳しさ。デビューできないアシスタントの収入と現実

実録「漫画業界」の厳しさ。デビューできないアシスタントの収入と現実
才能さえあれば、小学生でもプロデビューできるのが「漫画家」という職業。
 
ただし、漫画家になれたとしても、漫画を描くだけで生活できる人はほんの一握りです。
 
今回は、漫画家を目指して、6年間漫画家のアシスタントを続けた末に、夢をあきらめたM子さんにお話を伺いました。

FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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漫画家デビューするには数百人の投稿者の中から選ばれないといけない

M子さんは小さな頃から絵を描くのが好きで、小学校3年生頃からノートにコマを割って、漫画を描いていました。「漫画一本でいく」と決意したM子さんは高校卒業後、進学も就職もせず、出版社の漫画賞に自作の漫画を投稿しました。
 
出版社が発行する漫画雑誌の多くは「漫画賞」を設けています。漫画家志望者は漫画賞に作品を送り、それを編集者やプロの漫画家が選考します。今活躍している漫画家も、ほとんどが漫画賞への投稿者時代を経て、プロデビューしています。
 
M子さんが投稿していた当時は、ひとつの漫画雑誌にひと月100から200本ほどの漫画が投稿されていました。ただし、「デビュー該当作なし」という月も珍しくありません。大体、3~4カ月に1人、デビューが出るくらいの割合だったそうです。
 
M子さんが送った漫画は賞金10万円の賞に入選し、その月投稿された漫画の中で一番の成績でした。しかし、デビューには及ばず、M子さんには出版社の担当編集者が付きました。
 

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アシスタントは一日14時間労働で日給1万5千円。4泊5日の泊まり込み

担当編集者が付くと、担当編集者のOKが出て初めて漫画賞に投稿することができます。M子さんはバイトをしつつ、週に2回ほど出版社に通い、担当編集者に漫画を見せる日々が続きました。M子さんはなかなか担当編集者のOKがもらえず、苦戦していました。
 
そんな時に、担当編集者から紹介されたのが漫画家のアシスタントの仕事です。プロの技術を学べるうえに、お給料ももらえます。
 
M子さんがレギュラーとして仕事をしていた職場は、先生の家に泊まり込む形で、月に4泊5日を2回でした。先生の意向で、8時間睡眠厳守。睡眠時間と食事の時間、シャワーを浴びる時間を除いて、常に作業をします。
 
そのため、一日の作業時間は約14時間。日給制で一日1万5000円だったそうです。
 
アシスタントの給料や仕事の形は、漫画家の先生のさじ加減ひとつです。先生がベテランか新人かでも変わります。M子さんの職場は先生が売れっ子だったこともあり、M子さんいわくかなり良い環境だったといいます。
 
他のアシスタントの話を聞くと、「プロの技を勉強させてやってるんだから」と給料を払わない先生や、3日間丸々徹夜で、眠ることを許さない先生などもいたそうです。
 
また、アシスタントは契約を結んでいるわけではないので、先生がもう呼ばないと決めたら呼ばれなくなりますし、アシスタントの方が行きたくなければ断ることもできます。
 
漫画家として大御所になれば、法人化してスタジオで漫画を制作する人もいます。その場合は、アシスタントも雇用契約を結んで働くことになるそうです。
 

漫画家になれなくても「プロアシスタント」という道もある

M子さんはレギュラーのアシスタントと、単発のアシスタントで月に16万円ほど稼いでいました。
 
実家暮らしということもあり、収入で困ったことはありませんでしたが、アシスタントという働き口があることでプロデビューしなくても暮らしていけるという甘えが出てきてしまったそうです。
 
実際に、M子さんの周りには漫画で成功することをあきらめてアシスタントを続けている人もたくさんいました。
 
そのような人はアシスタントとしての技術が上がり、先生の意向でチーフアシスタントになったり、給料が上がったりします。そうすると、金銭的にも会社に勤めている人と同じくらいになり、いよいよ「漫画家になる」という意志が失われていきます。
 
また、金銭的に多くもらえていないとしても、「有名な漫画家のアシスタント」というポジションに満足してしまうこともあるようです。
 
漫画家としての成功をあきらめた人の多くは、漫画家の元でアシスタントとして生計を立てるプロアシスタントになるか、漫画は趣味として別に仕事をする人の2つに分かれます。
 

「漫画家はプロデビューがスタート地点」。M子さんはデビューすらできずに夢をあきらめた

M子さんは一番初めに付いた担当編集者と1年以上やりとりをしましたが、投稿さえ許されない状況が嫌になり、別の出版社の漫画賞に投稿をしたそうです。
 
そこでも賞をもらい、担当編集者が付きましたが、しばらくやりとりをした後に「雑誌の色と合わないかも」と思い、さらに別の漫画雑誌に投稿しました。
 
M子さんはどこの出版社に投稿しても、投稿者の中では1番の成績で担当編集者が付きましたが、デビューに至る作品を描くことはできませんでした。
 
25歳まで漫画投稿や編集者とのやりとりを続けましたが、限界を感じて夢をあきらめたそうです。現在は、全く関係ない仕事をしています。
 
「漫画家はプロデビューがスタート地点」とよくいわれます。M子さんの通っていた漫画家の先生は雑誌の看板作家であり、漫画だけで食べていける数少ない一人です。
 
その先生がデビューを果たしたのは15年前。同じ頃にデビューした十数人の漫画家の内、今も漫画を描いているのはその先生だけだそうです。
 

漫画家の世界と自身について、M子さんに一問一答

Q.漫画家を目指したことについて、後悔はありますか?
 
A.後悔していません。漫画家は小さな頃からの夢だったので、人生で一度思いきり挑戦することができて満足しています。もし中途半端であきらめることになっていたら後悔していたと思います。
 
Q.M子さんからみて、漫画で成功している人の共通点はありますか?
 
A.自分が思う「面白い、かわいい、かっこいい」などに、ぶれない自信があることかなと思います。私の場合、そこがぶれぶれだったので作風を確立することができませんでした。
 
あと、売れっ子の漫画家さんは、尋常じゃなく絵を描くことが好きなんだなと感じることが多かったです。
 
Q.漫画家を目指されている方に一言
 
A.今はネットで漫画をあげたり、同人誌を販売したり、いろいろな形で漫画を公開することができます。商業誌にこだわらず、自分に合った方法で夢を追いかけるのもありだと思います。どんな形でも、後悔だけはしないように全力で挑戦してみてほしいです。
 

物腰の柔らかさとは別に芯の強さを持つM子さん

M子さんに、インタビューをしていると、物腰の柔らかさとは別に、心の中に持っている強い芯を感じました。自分の夢に全力で挑戦したからこそ持っているもののように感じます。
 
漫画業界は成功する人が一握りの厳しい世界ではありますが、芸人さんや、声優さんと比べると、アシスタントという別の収入源があるのは少し違う点かもしれませんね。
 
漫画家に限らないことですが、夢をかなえるには才能だけでなく、目標をやりきろうとする強い意志が必要です。M子さんから、改めてそのことを学ばせてもらいました。
 
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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