更新日: 2019.01.10 その他暮らし

海外留学を機に国際結婚をした若者。結婚したのに「結婚ビザ」が取れない?日本で無事新婚生活をスタートできるのか

執筆者 : 佐野誠

海外留学を機に国際結婚をした若者。結婚したのに「結婚ビザ」が取れない?日本で無事新婚生活をスタートできるのか
人の流れの国際化などにより、最近では大都市を中心に国際結婚をするカップルも珍しくなくなってきました。
 
日本人が海外留学した際に現地の人と出会う、日本人が日本に滞在していた外国人旅行者と出会うなど、さまざまな出会いをきっかけに結婚に至るケースがあります。
 
しかし、外国人と結婚して、日本で新婚生活をスタートさせる場合、結婚相手は「日本人の配偶者」としてのビザが必要です。
 
「結婚が正式に成立していれば、ビザなんて必ずもらえるのでは…」と思われがちですが、現実はそう簡単ではありません。
 
今回は国際結婚に伴うビザ取得について、そして取得時の最大の難関である“収入”について説明します。
佐野誠

Text:佐野誠(さの まこと)

ACROSEEDグループ 代表・行政書士

行政書士法人、社会保険労務士法人、税理士法人を併設したACROSEEDグループを設立し、外国人向け法務サービスを提供しています。
外国人やそれに関わる人々に”信頼と安心”のプロフェッショナルサービスを提供し、日本社会の調和と活力あるグローバル化に貢献しています。
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そもそも、結婚ビザとは何?

数カ月の観光などを除いて、外国人が日本に長期滞在するためには海外の日本大使館などでビザの発給を受けて、入国時に在留資格を取得しなければなりません。
 
よく結婚ビザといわれるものは正確には「日本人の配偶者等」という在留資格のことで、日本国籍の人と婚姻した外国人、それにその子供などが日本に滞在するためのものです(正確にいうとビザと在留資格は違うものですが、一般的には同じ意味合いで使われています)。
 
この在留資格により、(1)日本で行える活動内容、それに、(2)滞在できる期間が定められます。この場合の活動内容は日本人の配偶者としての活動となり、当然、日本人との婚姻が成立していなければ在留資格には該当しないことになります。
 
一方、滞在期間については、6カ月、1年、3年、5年の4種類があり、入国管理局での審査結果で決定されることになります。
 
また、この期間を超えて日本に滞在する場合には、在留資格の更新申請を行うことで期間を延長させることも可能です。
 

結婚ビザ取得時の必要書類は?

 結婚ビザを取得する際には、一般的には以下のような書類の提出が求められます。(状況により異なりますので、必ず確認してください)
 
 1.顔写真 
 2.戸籍謄本
 3.海外での結婚証明書
 4.日本人配偶者の住民税の課税証明書と納税証明書
 5.日本人配偶者の住民票
 6.身元保証書
 7.質問書
 
たったこれだけの資料を提出すれば、結婚ビザが必ずもらえるかといえばそうではありません。提出された資料を基に入国管理局で厳しい審査が行われます。
 
そこで許可が出れば結婚ビザがもらえ、晴れて日本人の配偶者として日本で生活することができるようになります。しかし、その一方で何度申請を行っても不許可となる人もいます。この違いはどこからくるのでしょうか。
 

結婚ビザの審査ポイント

 結婚ビザの審査では多くの項目が細かくチェックされますが、最大の審査ポイントは、(1)結婚が本物であるか、(2)安定した収入があるか、の2点です。
 
(1)については偽装結婚などを排除するためのものであり、提出された戸籍謄本や結婚証明書が本物かどうか、それに交際が始まってから結婚に至るまでの経緯などが審査の対象となります。
 
一般的に考えてあまりにも不自然な交際の場合、例えば、出会い系サイトで知り合い翌日に結婚したケース、夫婦間の年齢差が大きすぎるケース、さらに、日本人の親族が誰も婚姻の事実を知らないケースなどは、慎重な対応がなされます。
 
とはいえ、通常の生活を送っており真剣に結婚を考えている人がこのケースで問題になるのは例外的といえます。
  

結婚ビザと収入

もう一つの審査ポイントである“安定した収入”の方ですが、そもそも安定した収入とはいくらぐらいのものなのでしょうか。これに対しての明確な決まりなどはありませんが、一般的には家族全員が余裕をもって生活ができる程度の収入が求められます。
 
入国管理局から具体的な数字が示されることはありせんが、夫婦2人であれば少なくても年収で250~300万円前後は必要になるのではないかと思います。
 
提出資料の中で住民税の課税証明書と納税証明書が求められているのも、こちらの収入と納税状況を確認するためのものとなります。
  

収入が問題となるケース

一般的に日本人配偶者が男性で既に仕事に就いている場合には、必要資料の提出等を含めてあまり問題となることはありません。
 
ところが、海外で日本人女性と外国人男性が知り合った場合などには、2人で帰国してこれから仕事を探そうとしても、日本語や日本社会に不慣れな外国人男性が就職先を見つけることはそう簡単ではありません。
 
必然的に日本人女性が仕事を探すことになりますが、最初の就職で2人分の生活費をねん出できるか、過去の課税証明が提出できるかどうか、といった問題が生じます。
 
これについては事情を詳しく説明し、それに伴い生活は安定していることを自ら立証していくしかありません。
 
場合によっては日本人女性だけが帰国し生活準備を整えてから、数年後に外国人の配偶者を呼び寄せることにもなりかねません。
 
国際結婚においてビザ申請は重要であり、これが許可されなければ日本で一緒に生活することもできません。要件さえ満たせば婚姻することはできますが、結婚ビザが下りるかどうかは別の話です。
 
日本人配偶者が将来のビザ申請も考慮して、収入の確保などを含めたビザの要件を確認しておくことが重要です。
 
Text:佐野 誠(さの まこと)
ACROSEEDグループ 代表・行政書士