最終更新日:2019.01.11 公開日:2018.07.27
暮らし

身近な電気の話 ㊷ 発電機車の復旧支援 西日本豪雨

日本列島を猛烈な暑さが襲っています。電気は十分ありますので、エアコンをフルに活用し、熱中症を避けましょう。電力会社は電力不足にならないよう、万全の態勢で臨んでいるそうです。
 
それにしても7月初めに突如襲った西日本豪雨は、広島、岡山、愛媛の3県に大変な被害をもたらしました。3県の死者は210人を超え、大きな岩石(コアストーン)を飲み込んだ土石流や濁流による浸水被害で、住宅地域に壊滅的被害をもたらしました。
 
各地で多発した土砂災害は道路、橋梁、鉄道、上下水道、ガス、電気など生活インフラを次々と破壊し、各地でライフラインが寸断されました。残されたのは大量の土砂と岩石、流木と流失廃棄物です。
 
記録的な猛暑の中で自衛隊、消防、警察などの懸命に進める救命活動と復旧作業、二次被害が出なければ良いですね。
 
しかし、この暑さと住宅地域に大量に流入した土石流や流木が、復旧作業を阻んでいます。未曽有の豪雨災害です。復旧されつつあるとはいえ、被災住民の生活が元に戻るめどはついていません。
 

ライフラインを守れ

「ライフラインを守れ」。救命・救助活動と並行し進められる電気事業者、ガス事業者、水道事業者などによる設備復旧作業はまさに命を守る戦いです。
 
流木や流出土砂の除去が遅れ、上下水道やガスの復旧には時間がかかっています。なかでも深刻なのが水の確保です。下水道の復旧ができないと、水道の復旧ができないというのです。水道の復旧は手間取りそうですね。地震の被害とは異なる難しさがあります。
 
電気はどうでしょう。電力も配電線など流通関係設備に大きな被害が出ました。正確な数字は把握できませんが、山崩れや土石流で電柱の倒壊・折損、配電線の断線が至るところで発生していて、3県で最大25万軒が停電し、電力各社は他社の協力も得ながら、早期仮復旧に取り組んでいました。災害発生5日後にはほぼ復旧しました。
 
広島、岡山の2県で広域的な停電が発生した中国電力は、災害発生を受けて直ちに隣接する九州、関西、中部、北陸の4電力会社に災害支援要請を行いました。各社も要請に応じ直ちに支援体制を整え、支援隊を派遣しました。
 
変電所が被災したことから高圧発電機車(電源車)を中心の派遣となりました。九州電力が20台、関西電力が8台、中部電力が19台、北陸電力が6台、これに自社の40台を加えて80台を超える電源車が、水没した沼田変電所を取り巻くように配置され、それぞれの電源車と配電線が接続されました。
 
復旧作業に当たっては電源車の他、高所作業車などの60台の作業車両と復旧支援作業員およそ400人が中国電力の指揮の下、昼夜を違わず早期復旧に向けて懸命に仮復旧作業に取り組んだそうです。
 

ヘリコプターで発電機を輸送配置

愛媛県で大きな被害が出た四国電力は、電源車が出動するほどの被害では、自社での復旧作業対応となりました。山間部被災地の緊急電力供給対策として災害ヘリコプターでポータブル発電機の配置を行いました。道路寸断により陸路でのアプローチができないため、災害ヘリコプターを活用となりました。
 
病院、避難所、市役所、交通信号機などは一刻も早い供給を待っています。電気がなければ医療機器が使えず、患者を救えません。電気がなければ災害情報の発信も入手も困難です。熱中症の心配のある避難所での生活にエアコンや扇風機などの冷房機器は不可欠です。
 
今回の豪雨災害でも停電は短期間で解消できました。電力業界には地震や台風などの災害時には相互に支援しあう災害支援システムがあり、今回も見事に機能しました。最長でも5日間で停電は解消され、ライフラインに中では最も早い復旧でした。
 

お隣同士の協力が大事

電力各社は災害や非常事態に備えて、日ごろから災害復旧の訓練を行っています。全国規模の訓練も毎年行っています。大規模災害の発生時には、電力設備の被害状況や復旧資機材の保有状況などの情報を共有し、連絡体制を強化しています。
 
応援可能な車両や資機材の準備などは、要請が無くても自主的に実施する体制が出来上がっているそうです。阪神大震災や東日本大震災などの際は、すべての電力会社が寝食を忘れて大規模な支援を行ってきた経験と実績があるそうです。
今回も応援復旧は順調に行われたようです。
 
あとは本格復旧を待つだけです。中国電力に対する支援は中部、関西、北陸、九州の4電力だけで、東京、東北、北海道の東地域3電力会社からの支援はありませんでした。しかし、これは3社が異なる周波数の会社だったからで、非協力的だったわけではありません。50Hz系の会社の電源車は60Hzの中国電力では使えないのです。
 

情報途絶した社会に

それにしても、集中豪雨や河川氾濫、土砂崩れなどの「水を伴う大災害」は家庭や職場から家財道具、家電製品、機械を根こそぎ奪ってしまいます。せっかく電気が届いても被災者はエアコンもない、テレビもない、冷蔵庫もない、炊飯器も電子レンジもない生活になってしまいました。
 
ライフラインが回復すれば、被災地域や被災家族の状況に関する情報は発信されますが、被災者に向けた情報は、被災者には届かない現実があります。
 
新聞もない、テレビもない、ラジオもない、携帯電話もないので、生活に必要な情報が得られない情報孤立集落になってしまいます。
 
Text:藤森 禮一郎(ふじもり れいいちろう)
フリージャーナリスト

藤森禮一郎

執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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