知っておきたい奨学金と教育ローンの利子を軽減する仕組み
配信日: 2020.01.11 更新日: 2024.09.18
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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お金を借りないと大学に行けないの?
多くの高校生は私立の大学等に進学します。文部科学省「平成29年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によると、入学料・授業料・施設設備費の合計は、文科系学部で116万5310円、理科系学部で154万896円です。
単純計算すると4年間で入学金も含め、文科系学部は約397万円、理系学部は約540万円となります。実際には、この他にも実験実習料や諸会費などがかかる場合があります。
子どもが1人であれば保護者が学費を支払うことも可能かもしれませんが、2人以上となると保護者がすべて学費を負担するのは難しいのではないでしょうか。
実際、最も利用されている日本学生支援機構の奨学金は大学生の約3人に1人が利用していますし、日本政策金融公庫が取り扱う「国の教育ローン」は、昨年度約12万件利用されています。
奨学金と教育ローンは両方借りないといけないの?
多くの私立大学では、合格すると、1~2週間以内に入学手続時納付金として、最小限、入学金と前期分を支払うのが一般的です。私大文科系学部であれば70万円程度、理科系学部であれば100万円程度必要です。
もし、このお金が不足したら、奨学金で賄うことができません。なぜなら、奨学金は入学後に振り込まれるからです。したがって、教育ローンを利用せざるを得ません。
受験から入学までの費用の準備ができている方は教育ローンを利用する必要はありませんが、そうでなければ教育ローンを借りる必要があります。入学後の学費等の不足額は教育ローンと奨学金の2つの選択肢があります。なお、教育ローンと奨学金の併用はできます。
ここで、日本学生支援機構の奨学金と日本政策金融機構の「国の教育ローン」を例にとって、奨学金と教育ローンの主な違いを確認しておきましょう。
教育ローンは「保護者」が借りて返済する義務がありますが、奨学金は「学生」が借りて返還する義務があります。教育ローンは、いつでも申し込めて、まとまったお金を借りることができますが、奨学金は入学後に毎月一定額が振り込まれます。
奨学金と教育ローンの利子を軽減する仕組み
自治体や大学には、奨学金や教育ローンの利子を補給する仕組みがあります。いくつか見てみましょう。自治体の中には、「国の教育ローン」の利用者に対して、その利子(保証料)の一部または全部に相当する金額を給付する制度や、助成金を支給する制度を設けている場合があります。
「国の教育ローン」の資料によると、平成30年9月現在、北海道名寄市、北海道阿寒郡鶴居村、青森県つがる市、宮城県仙台市、山形県酒田市、福島県南相馬市、茨城県神栖市、埼玉県深谷市、埼玉県富士見市、埼玉県吉川市、 埼玉県児玉郡美里町、埼玉県北葛飾郡松伏町、長野県東御市、長野県上伊那郡南箕輪村、長野県下伊那郡下條村、東京都足立区、千葉県成田市、千葉県市原市、千葉県白井市、神奈川県箱根町、富山県中新川郡立山町、岐阜県山県市、岐阜県郡上市、静岡県下田市、静岡県賀茂郡東伊豆町、鳥取県、香川県高松市、熊本県阿蘇郡南阿蘇村が、「国の教育ローン」利子(保証料)補給・助成制度実施しています。
「国の教育ローン」以外の教育ローンを借り入れた場合にも、利子補給をしている自治体があります。
例えば、東京都江戸川区では、私立校へ進学、または海外留学される際の入学手続き時に必要な資金を、区内の信用金庫から低利で借りられるように、融資あっせん制度を実施し、利子の一部を助成するとともに、信用保証保険料の全額を負担しています。
大学独自の奨学金としては、大学提携教育ローンに対しては在学中に支払った利子を補てんする奨学金もあります。奨学金については埼玉県ふじみ野や大阪府茨木市などが利子補給を行っています。
普段、お住まいの自治体のホームページを見る機会は多くないと思いますが、お得な情報も掲載されています。事前の情報収集をしっかり行うようにしましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー