「奨学金の利率はかなり低いので借りないと損」って本当?奨学金についてよくある誤解とは
配信日: 2020.06.13
選択肢としては貸与型奨学金が現実的ですが、貸与型奨学金についてよく誤解されている点があります。
5月10日放送の日曜報道THE PRIME(フジテレビ)の中でも、現文科相(2020年5月現在)が第二種奨学金でも所得連動返還方式を選択できるような発言をしていました。一般的に、誤解が多い事項2点について確認しておきましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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奨学金の利率はかなり低いので借りないと損だ
有利子の第二種奨学金の利率算定方式には、「利率固定方式」(貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用)と、「利率見直し方式」(返還期間中、おおむね5年ごとに見直された利率が適用)の2つがあります。
令和2年3月中に貸与終了した者の貸与利率は、「利率固定方式」が0.070%、「利率見直し方式」が0.002%となっています。
確かに、これらの利率はかなり低いといえます。問題は利率がいつ決まるかです。多くの方は、奨学金の利率は借入時に決まると誤解していないでしょうか。
利率が決まるのは借入時ではなく、貸与終了時である点に注意しなければなりません。借入時に利率が低くても、卒業などの貸与終了時の利率が低いとは限りません。そのため、利率は3%を超えないというルールになっています。なお、在学中は無利息です。
したがって、借入時点で「奨学金の利率はかなり低いので借りないと損だ」とは一概にいえません。
社会人になってから収入に応じて計画的に返還できるので安心だ
奨学金の返還は貸与終了後7ヶ月目から始まります。3月卒業であれば10月から返還が始まります。返還方式には、「定額返還方式」と「所得連動返還方式」があります。「定額返還方式」(月賦返還)は、返還期間(回数)が貸与総額で決まり、毎月定額で返還していく方法です。
一方、「所得連動返還方式」は、前年の課税総所得金額に応じて返還月額が決まる返還方式です。返還月額は「課税総所得金額×9%÷12」(最低返還月額は2000円)で算出されます。
なお、所得連動返還方式を選択した方の返還初年度(返還開始から1年以内の最初の9月)の返還月額は、定額返還方式により算出された返還月額の半額と定められています。この金額での返還が困難な場合は、申請により2000円(最低返還月額)での返還が可能です。
所得に応じた返還月額となるため、所得が少ない場合は少ない返還月額ですが、所得が多い場合は返還月額が多くなります。この方式であれば、社会人になって収入が少なくなっても無理なく返済ができます。
しかし、所得連動返還方式は平成29年度以降に第一種奨学金に採用され、この方式を選択した方しか利用できません。有利子の第二種奨学金の返還方式は定額返還方式のみです。また、保証制度は機関保証を選択する必要があります。
したがって、「社会人になってから収入に応じて計画的に返還できるので安心だ」というのは無利子の第一種奨学金に採用された方にしか当てはまりません。
なお、病気や失業等で返還が困難になった方には、「減額返還」「返還期限猶予」といった救済措置があります。ただし、所得連動方式を選択している第一種奨学金については「減額返還」は利用できません。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー