公開日: 2020.11.05 暮らし

住まいを変えずに離婚する方法 ~賃貸の場合~

執筆者 : 酒井 乙

「離婚しても、今の賃貸アパート(またはマンション)は変えたくない!」
 
離婚を考えているご夫婦に子どもがいたり、職場が近かったりすると、そう考えることは自然なことです。
 
しかし、その賃貸マンションが自分で契約したものではなく、(元)配偶者が契約している場合、(元)配偶者との話し合い(または交渉)から大家との手続きまで、多くの労力が必要となります。
 
そこで本記事では、現在の住まいが「賃貸物件」である方に向けて、離婚後も同じ場所で住むために必要な「(元)配偶者」「大家」「連帯保証人」への賢い対処方法をやさしく解説します。
 
酒井 乙

執筆者:

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

酒井 乙

執筆者:

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

(元)配偶者との話し合いで行き詰まったら、時間をおいて考えを整理する

現在の住居に住み続けるための最初のハードルは(元)配偶者との話し合いです。
 
例えば、子どもがいる場合を想定しましょう。「離婚しても、子どもは慣れ親しんだ今の環境を変えないほうがよい」と、自分と(元)配偶者の間でそのように意見が一致していれば問題ありません。
 
しかし、2人の間の感情的なもつれが激しいと、配偶者の一方だけが家賃を負担してきた場合、これまで家賃を支払ってきた(元)配偶者が、自ら出て行って新しい住居を探してくれる可能性は決して高くないでしょう。
 
その場合、賃貸に関わる義務をすべて負ってきた(元)配偶者との立場の違いから、自分が住居に関して妥協せざるを得なくなってしまいます。
 
もし議論の中でそのような危険を感じたら、いったん時間をおいて「なぜ今の家に住み続ける必要があるのか」を自問してみてください。その際は、できるだけ多くの「客観的な理由」を書き出すことが大切です。「客観的な理由」とは、第三者でも納得、理解できる理由です。
 
以下に例を示します。


 
もちろん、このようなリストを作れば必ず相手を説得できるわけではありません。しかし、自分の頭を整理することで話す内容にも説得力が増します。また、調停など第三者の助けが必要となった場合でも、自身の置かれた立場を明確に説明できるので、サポートを受けやすくなることが期待できます。
 
それでは次に「大家」への対処について見てみましょう。
 

大家には、賃貸条件の変更点等を事前に確かめておく

最初に忘れてはならないことは、大家(または不動産管理会社)へ「賃借人を変更したい」旨を伝えることです。その上で、大家さんや不動産管理会社には、最低でも以下の5点を確認しておきましょう。


 
これらの質問は、今の住まいを続ける上で、突然予期せぬ出費に見舞われるのを防ぐためです。親などの援助がなければ、家賃を含めた今後の家計を1人で切り盛りするのはとても不安です。できるだけ、ネガティブサプライズの出費がないようにするだけでも、気が楽になるものです。
 
なお、大家さんが賃貸人変更に難色を示すようなことがあった場合(※1)、現在の住居を賃借する権利は、元の賃借人である(元)配偶者から家族であった自分へ引き継がれる、との判例(※2)があることは覚えておくとよいでしょう。
 

連帯保証人が見つからなければ家賃保証会社の利用を検討

さらに頭を悩ませるのが「連帯保証人」の確保です。信頼でき、かつ十分な収入や資産がある家族や親族、友人などがいればよいのですが、たとえいても離婚という後ろめたさから頼みにくいものです。
 
そんな時は、「家賃保証会社」を利用することで連帯保証人の代わりとすることが可能か、大家または管理会社へ相談してみましょう(※3)。
 
「家賃保証会社」とは、賃借人が家賃を支払えなくなった場合、一時的に肩代わりしてくれる会社です。大家もしくは不動産会社が利用している家賃保証会社によって保証料は異なりますが、おおむね1カ月の賃料の50%から100%が一般的です。また、1年ごとに更新料がかかります。
 
従って費用はかかりますが、連帯保証人を見つけずに済むことはありがたい一方、「請求が不明瞭」「保証人がいないにも関わらず、保証会社から保証人を付けるよう求められた」などの苦情が近年高止まりしていることに注意が必要です(※4)。もし納得いかない点があれば、消費生活センター等へ相談してみましょう。
 

自身の心身ケアが何より大切

ここまで、離婚後も同じ賃貸物件に住むための対処方法をご紹介しました。
 
実際、その対処は簡単でないのが事実です。しかし、最も大切なことは、これから生活を背負うご自身の心と体のケアです。住居の問題は無理せず焦らず取り組むことを心がけるようにしてください。
 
(※1)国土交通省「家賃債務保証の現状 P2」
同レポートによると、「子育て世帯」の入居に対して、大家の1割が拒否感を抱いている。その理由として、家賃の支払いに対する不安(57.3%)、住宅の使用方法に対する不安(33.5%)などが挙げられる。
(※2)公益社団法人 全日本不動産協会ホームページ
「裁判例においても、賃借人が貸室を退去し、残された家族が賃借建物の独立の占有者となった場合は、賃借権の譲渡又は賃貸物の転貸とされています(東京地判昭和42年4月24日判例時報488号) 」
(※3)国土交通省「家賃債務保証の現状」P1によると、平成26年度において、家賃債務保証を「連帯保証人のみ」としている大家が41%あり、連帯保証人が必要な物件が依然として多いことを示唆している。
(※4)国土交通省「家賃債務保証の現状 P15」
同レポートによると、家賃債務保証をめぐる全国の消費生活センター等への相談件数は、平成21年度より年間700件前後で高止まりしている。
 
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。

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