更新日: 2021.09.20 子育て

子どもの学費が支払えるか不安……。学費関連の公的支援策を紹介!

執筆者 : 上山由紀子

子どもの学費が支払えるか不安……。学費関連の公的支援策を紹介!
文部科学省の「第3期教育振興基本計画」では、人生100年時代の到来により、生涯に2つ、3つの仕事を持つことや、働きながら地域や社会で課題を解決していくことが一般的になるのではといわれています(※1)。現在の子どもたちは生きていく未来を自分自身で考え、切り開いていくことが必要な時代がやってくるのではないでしょうか。
 
未来を生き抜くためには多様な環境に順応していくことが大切で、そのためには教育を受けることはとても重要ですが、教育費を軽減するための支援も考えられています。今回は、その支援制度をお伝えします。
上山由紀子

執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
 
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
 

幼児期から高等教育までの教育支援は?

文部科学省では家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある子どもが教育を受けられるようにと、教育の段階に応じて教育費の負担を軽減するための支援を行っています。幼児期から高等教育まで1つずつ見ていきたいと思います。
 

出典:文部科学省 「教育の支援を必要とする方へ」
 

幼児期(幼稚園)の支援

2019年10月から「幼児教育・保育の無償化」がスタートしていますが、これは世帯の所得や子どもの数に応じた保護者負担の軽減のための新制度です(※2)。
 

1.幼稚園、保育所、認定こども園等などを利用する子どもへの支援

対象施設としては、幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育事業となります。ただし、企業主導型保育事業は標準的な利用料(利用者負担相当額)が無償化の対象となっていますので確認が必要です。
 

【3~5歳の場合】

●原則、小学校就学前の3年間を無償化。幼稚園は満3歳から無償化
●保護者から実費で徴収している費用(通園送迎費、食材料費、行事費など)は無償化の対象外。ただし食材料費は、年収360万円未満相当世帯は副食費の費用が免除、また全世帯の第3子以降も免除となります。
●新制度の対象とならない幼稚園については、月額上限2万5700円までの無償化となりますので注意が必要です。

 

【0~2歳の場合】

上記の施設を利用する住民税非課税世帯を対象として無償化。

 

2.幼稚園の預かり保育

「保育の必要性の認定」を受けた場合は幼稚園に加え、利用実態に応じ、月額1万1300円までの範囲で無償化。
 
●月内の預かり保育利用日数に450円を乗じた金額と、預かり保育の利用料とを比較し、小さい方が無償化となります。
 
(注)「保育の必要性の認定」とは、保育の必要とする事由(就労、疾病など)と保育の必要量(保育標準時間、保育短時間など)を勘案して、お住まいの 市町村で認定を受けることになります(※3)。
 

3.認可外保育施設等

【3~5歳の場合】

保育の必要性の認定を受けた場合、月額3万7000円までの利用料を無償化。

 

【0~2歳の場合】

保育の必要性があると認定された住民税非課税世帯の子どもを対象とし、月額4万2000円までの利用料を無償化。

●認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業が対象
●保育所、認定こども園等を利用できない方が対象
●都道府県等に届け出を行い、国が定める基準を満たす認可外保育施設のみ

 

4.就学前の障害児の発達支援

●満3歳になって最初の4月1日から小学校入学までの3年間
●就学前の障害児の発達支援を利用する子どもの利用料を無償化
●幼稚園、保育所、認定こども園等と、これらの発達支援の両方を利用する場合はともに無償化の対象

 

義務教育段階(小学校~中学校)

家庭の収入に応じて学用品費や修学旅行費、学校給食費などの補助が受けられる就学援助制度があり、各市町村での手続きが必要です(※4)。現在の新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減った方も、お住まいの市町村で手続きをすることで受けられる援助制度なので、利用できるものはぜひ利用してください。
 
就学援助の対象者、補助対象品目などを説明します。
 

【就学援助の対象者】

●要保護者と準要保護者
 
(注)要保護者とは現に保護を受けている、受けていないにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう(生活保護法第6条第2項)。準要保護者とは要保護者に準じるくらいに困窮している者。
 

【要保護者等にかかる支援】

補助対象品目

学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費等、通学用品費、通学費、修学旅行費、校外活動費、医療費、学校給食費、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費、卒業アルバム代等、オンライン学習通信費

 

【準要保護者にかかる支援】

準要保護者に対する就学援助は、認定基準や実施は各市町村です。お住まいの市町村にご確認ください。
 

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた就学援助の実施状況について、下図のように「申請期限の延長を行った」、「就学援助制度について再度周知を行った」と回答をしている市町村も多いため、新型コロナウイルスの影響で収入減となった方は、ぜひ早めに相談・申し込みをしてください(※5)。活用できるものは活用していくことが大切です。
 

出典:文部科学省 「就学援助実施状況等調査結果」(令和2年度就学援助実施状況調査 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた対応について)
 

高等学校段階

家庭の収入に応じて、授業料や授業料以外の支援(高校生等奨学給付金)などがあります。
 

1.高等学校等就学支援金制度

高校等に通う生徒の教育費負担の軽減を図るための、国による授業料支援の仕組みです(※6)。
 
【対象者】
高校等(高専、高等専修学校などを含む)に在学し、日本国内に住所のある方。ただし、次のいずれかに該当する方は対象となりません。
 

●保護者等の所得が以下の算定式で月30万4200円以上の方(年収目安約910万円以上)
算定式:課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除の額
●高校等(修業年限が3年未満を除く)を卒業または修了した方
●高校等に在学した期間が通算して36月(定時制・通信制などの場合は別途算定)を超えた方

 
【支給額】
公立学校に通う生徒は、公立高校授業料相当額(年額11万8800円)。国公立高校は授業料負担が実質0円になります。私立学校等に通う生徒は、所得や家族構成、親の働き方に応じて支給額が変わります(※7)。入学時などに学校から案内がありますが、参考までに下図2つをご覧ください。
 

                  
出典:文部科学省 「高等学校等就学支援金制度」
 

出典:文部科学省 「高校生の学びを支えます 高等学校等就学支援金」
 

2.高校生等奨学給付金

授業料以外の教育費負担を軽減するため、高校生などがいる低所得者世帯を対象に支援を行っています(※8)。家計が急変して非課税相当になった世帯も対象になるほか、新入生は4月から6月に一部早期支給の申請ができる場合もあります。なお、この制度は各都道府県において制度の詳細は異なります。
 

【授業料以外の教育費】

教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費などです。

 

3.その他の修学支援策

【家計急変への支援】
保護者の失職、倒産などで収入が激減し、低所得となった世帯に対して、収入の変動が就学支援金の支給額に反映されるまでの間、就学支援金と同等の支援を行う制度です(※9)。各都道府県で制度の詳細は異なるため、在籍する進学先の学校または学校の所在する都道府県に問い合わせしてください(※10)。
 

●授業料軽減(授業料支援の仕組み)

お住まいの都道府県が定める要件に該当する方が対象

 

●高校生等奨学給付金(授業料以外の教育費支援の仕組み)

年収約270万円未満相当(住民税所得割非課税相当)になった世帯が対象

 

特別支援学校(幼稚部~高等部)・特別支援学級

家庭の収入に応じて、就学に必要な経費の補助が受けられます。
 
【特別支援教育就学奨励費】
特別支援学校(幼稚部・小学部・中等部・高等部)、および小・中学校の特別支援学級等への就学の特殊事情を踏まえて、就学に必要な経費を経済的負担能力に応じて補助し、保護者の経済的負担の軽減を図る制度です(※11)。
 

●対象

国公私立特別支援学校、および小・中学校の特別支援学級等に在籍する幼児児童生徒の保護者など

 

大学・大学院、専門学校等

家庭の収入に応じて、授業料減免や奨学金などの支援が受けられます(※12)。
 

1.国立大学等の授業料等の減免

国立大学等では、意欲と能力のある学生が経済状況にかかわらず修学の機会を得られるように、授業料の免除・減免措置を用意しています
 

2.私立大学等の授業料等の減免

私立大学等経常費補助金(特別補助)で、私立大学等が経済的に修学困難な学生に対して授業料の減免措置を行う場合、その2分の1以内を補助しています。
 

3.公立大学等の授業料等の減免

意欲と能力のある学生が経済状況にかかわらず修学の機会を得られるように、授業料の減免措置が設けられています。
 

4.専門学校等の減免

生活保護など経済的理由により修学困難な生徒に対して、授業料の減免措置を行っている場合があります。
 

高等教育の修学支援新制度

文部科学省では、しっかりとした進路への意識や進学意欲があれば、家庭の経済状況にかかわらず、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校に進学するチャンスを確保できるよう、令和2年4月から高等教育の修学支援新制度を実施しています(※13)。
 

【制度の概要】

1.授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)
2.給付型奨学金の支給

 
上記の2つの支援を活用し、大学や専門学校などで安心して学べます。
(注)制度の対象となるのは一定の要件を満たした学校です。自分の進学したい学校が対象校となっているか確認する必要があります。
 

【支援の対象者】

1.世帯収入や資産の要件を満たしている
2.進学先で学ぶ意欲がある学生

 
上記の2つの要件を満たす学生全員が支援の対象です。
(注)対象となる世帯収入や受けられる給付奨学金などは、日本学生支援機構のホームページの進学資金シミュレーターで試算することができます。
 

【支援の金額】

支援を受けられる金額は、世帯収入や進学先の学校の種類(大学、短期大学、高等専門学校、専門学校)、自宅通学か下宿か、などといった条件によっても異なります。下図の支援の金額例を参考にしてください。
 

出典:文部科学省 「高校生の皆さんへ 学びたい気持ちを応援します」
 

【手続きの方法】

1.高校生の場合

●給付型奨学金は、進学する前年の4月下旬から高校などを通じて日本学生支援機構(JASSO)へ申し込みます。
●授業料等減免は、進学先の大学等に入学時に申し込みます。

 

出典:文部科学省 「高校生の皆さんへ 学びたい気持ちを応援します」
 

2.大学生の場合

●給付型奨学金は年2回、毎年春と秋に在学中の大学等を通じて日本学生支援機構に申し込みます。このときに併せて授業料等減免の申し込みをします。受付期間は学校によって異なるため、窓口などで確認してください(※14)。

 

出典:文部科学省 「大学生の皆さんへ 学びたい気持ちを応援します」
 
(注)詳しくは日本学生支援機構のホームページで確認してください(※15)。
 

まとめ

今回は、幼児期から高等教育までを大まかにお伝えしました。気になるところをピックアップして確認してください。現在は教育によって格差が生まれる時代なのかもしれません。親の貧困が子どもにもつながる可能性は大いにあると思います。本人に学習意欲があるのに進学できないとしたら、とても悲しいです。
 
将来の日本を背負っていく子どもたちには、貧困に負けずに学業に励むことのできる制度をぜひ利用していただきたいと願います。
 
出典
(※1)文部科学省 第3期教育振興基本計画パンフレット
(※2)内閣府 幼児教育・保育の無償化について(日本語)
(※3)内閣府 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」
(※4)文部科学省 就学援助制度について(就学援助ポータルサイト)
(※5)文部科学省 就学援助実施状況等調査結果
(※6)文部科学省 高等学校等就学支援金制度
(※7)文部科学省 高校生の学びを支えます 高等学校等就学支援金
(※8)文部科学省 高校生等への修学支援 高校生等奨学給付金
(※9)文部科学省 高校生等への修学支援 その他の修学支援策
(※10)文部科学省 高校生への修学支援リーフレット(高等学校等就学支援金、高校生等奨学給付金、家計急変支援)
(※11)文部科学省 家庭の教育費負担や公財政による教育分野への支出等 特別支援学校
(※12)文部科学省 家庭の教育費負担や公財政による教育分野への支出等 大学・大学院等
(※13)文部科学省 高校生の皆さんへ 学びたい気持ちを応援します
(※14)文部科学省 大学生の皆さんへ 学びたい気持ちを応援します
(※15)独立行政法人 日本学生支援機構 奨学金
子供の貧困対策の推進に係る取組
 
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

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