賃貸借契約の基本「家賃債務保証会社」と「連帯保証人」とは?
配信日: 2021.03.18
以前は、親(家族)や親戚に連帯保証人を引き受けてもらうことが多かったようですが、昨今では「親が既にリタイアして収入がない」、「疎遠となっている親戚には頼めない」、「会社関係者には頼みづらい」など、高齢化、核家族化、孤立化などの影響もあってか、連帯保証人を「気軽に」お願いできる人がいないケースも多いようです。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
連帯保証人の責任
「連帯保証人の責任は極めて重い」とよくいわれます。これは賃借人(債務者)が家賃などを滞納した場合、連帯保証人は債務者とほぼ同等の責任を負うことを意味しています。
たとえ債務者が滞納し、連絡が取れなくなったようなケースでも、債権者は連帯保証人に対して直接請求することができます。また、連帯保証人は債権者からの請求に対して、「催告の抗弁権」(先に主たる債務者に請求を求める権利)や「検索の抗弁権」(主たる債務者の給与の差し押さえなどを求める権利)などを主張することはできません。
結果的に、連帯保証人である家族や親戚に直接的に迷惑をかける可能性があります。
民法(債権法)の改正
2020年4月施行の民法(債権法)では、個人が保証人となった場合に、想定以上の負担を強いられたなどのトラブルに対応するため、個人保証人を保護する改正がなされています。
賃貸借契約の保証は「根保証」に当たります。根保証とは、1回の契約で不特定の回数の債務(債務の金額が確定していない)の責任を負うものです。家賃支払いの滞納が長期化すればするほど、滞納額(債務額)は大きくなります。
改正民法では、根保証契約について、家賃滞納などで保証する債務に関しても、その限度額となる「極度額」を定めることとしました。これ以降は、極度額の定めのない根保証契約は全て無効となります。例えば、「100万円」、「月額家賃の12ヶ月分」などを極度額として、賃貸借契約書などの書面に明記することとなります。
家賃債務保証会社の利用増加
以上のような状況を背景に、最近では「家賃債務保証会社」を利用するケースが多くなっています。これは、前述のように賃借人(債務者)側の要因だけではなく、不動産オーナーや不動産会社側からも確実な保証を得る手段として、家賃債務保証会社の利用を条件とする賃貸物件も増えているようです。中には、連帯保証人と家賃債務保証会社の両方の利用を求める場合もあります。
家賃債務保証会社のメリット、デメリット
家賃債務保証会社を利用する最大のメリットは、保証人を頼める人がいない場合でも契約できるという点でしょう。人それぞれさまざまな状況がありますが、どうしても保証人をお願いできない場合に、家賃債務保証会社を利用するケースがあります。結果として、家族などに迷惑をかけることもありません。
逆にデメリットとしては、当然ですが、家賃債務保証会社への保証料を負担する必要があります。通常、親に連帯保証人をお願いする場合には、ほぼ金銭的な負担はありません。
例えば、「契約時月額家賃の50%、1年ごとに1万円」など家賃債務保証会社が設定する条件により保証料を負担します。また、家賃債務保証会社を選ぶ際には、通常は不動産会社が提携している会社と契約するケースが多く、当然、審査に通らないと利用することができません。
まとめ
わが国における高齢化、核家族化などの状況は、今後さらに進展していくことと思います。そして、賃貸借契約についても家賃債務保証会社の利用割合が今後さらに増加していくこととなるでしょう。何事にもお金がかかるということです。
また、連帯保証人を家族や親族にお願いするときには、お願いする側とお願いされる側の双方がしっかりとその影響や責任の内容を理解しておくことが重要となるでしょう。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー