更新日: 2021.03.27 その他暮らし
離婚する前に知っておきたいお金のこと。離婚を決めたらどこに相談し、どう進めていけばいい?
その中には、いつか離婚したいと思いながら、コロナ禍で過ごすうち、衝動的に我慢できず離婚してしまった方もいるでしょう。ただ、本来離婚をするためには計画性が必要です。今回は、離婚に際して知っておくべき知識についてお話しします。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
そもそも財産分与ってどういうこと?
漠然と「離婚時に夫から妻へ財産を渡す制度」が財産分与であるとわかっている方は多いでしょう。法務省のホームページでは、「財産分与は、(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配、(2)離婚後の生活保障、(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質がある」と解されており、特に(1)が基本であると考えられていますと記載されています(法務省ホームページより抜粋)。
ただ、財産分与が定義されているからといって、自動的に分与がされるわけではありませんし、そもそも夫婦の共有財産とはどこまで入るのか、正確に確定すること自体が難しいものです。
例えば、便宜上、銀行の通帳や不動産の名義をどちらか一方の名義に貯蓄することもあるでしょう。その場合でも、一概に「名義」で判断せず、婚姻期間中に夫婦の協力によって財産を形成した財産は、すべてが財産分与の対象となります。財産分与は、「共有財産を確定させる」→「個別事情を考慮して分与をする」ということを考えれば、衝動的な離婚ではなく、計画性が必要だということがわかるでしょう。
不動産などは登記をしているので、所有者を確認することは難しくはありませんが、通帳など最近は記帳をせず、ネットバンキングなどウェブ上で残高を見るくらいの方も多いでしょう。ネットバンキングの場合、明細を見られる期間には制約がありますので、定期的に通帳を記帳しておくか、印刷などをしておくことが望ましいでしょう。
離婚の準備には年金分割の請求を忘れずに!
今では、夫婦共働き世帯が専業主婦(夫)家庭を上回っていますが、夫と妻が「同程度に稼ぐ」というご家庭は、まだまだ少数派です。離婚等をした場合には、ぜひ「離婚の年金分割」の請求を検討しましょう。離婚後2年以内に請求は可能ですが、離婚後の生活設計を考える意味でも、分割請求をした場合に自分の年金がどうなるのか、これを年金事務所で調べるのは離婚前でも可能です。老後の安心につながるはずです。
ただ、誤解しないでください。年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、合意分割の対象となる期間の場合、自動的に夫(妻)の年金額を半分受け取れるわけではありません。当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割割合を決める制度ですので、必ずしも半分ずつに分けるわけではありません。
さらに、基礎年金部分などは夫婦それぞれ自分で受け取るものですから、分割はできません。
扶養家族であった期間である3号被保険者であれば、半分の分割は請求さえすれば可能ですが、そうでない期間については「合意すること」が、離婚する当事者にとって一番の困難となります。離婚後2年以内でも請求できますが、できれば離婚までに話し合いをして、公正証書にしておくことが望ましいでしょう。
(参考:公証人連合会ホームページ(※1))
離婚を思い立ったら、どこから何を?
いざ離婚をしようとしたときに、どこに相談し、どう進めていくべきか、いくつかの選択肢があります。一番費用が掛からないのは、当事者間の話し合いによる、協議離婚です。
費用が掛かってもちゃんと決めるべきことは決めたいという場合には、弁護士に依頼するのがすべてお任せできて安心でしょうが、費用を心配して尻込みする方にお勧めなのは、家庭裁判所で調停の申立をすることです。申立費用は1200円です。
必要な書類などは、以下のホームページ(※2)を参照してください。ただ、財産分与であれば、参考になるべき給与が確認できる給与明細や源泉徴収票、学資保険や、通帳などのコピーなどが求められる場合があります。
普段から、心掛けておきたいのは、しっかりと家計の内容を把握しておくこと。共働き家庭であれば、お互いの財産はわからない、専業主婦(夫)でも定額を毎月渡されているだけ、というご家庭もあります。
いざ、離婚をしようと思ったとき、何から始めるか、誰に相談するのか、迷うこともあるでしょう。普通の生活をしていた方が、いきなり、家庭裁判所に行くというのも高いハードルかもしれません。そんなときでも、相談窓口はたくさんあります。法律相談ではなくても民間の相談窓口もあります。
(出所:法務省ホームページ(※3))
コロナ禍の中、たくさんの我慢を重ね、離婚に至るということは、本当につらいことでしょう。ただ、衝動的に行動を起こしてしまうと、その後、生活が苦しくなってしまうこともあります。特に子どもがいる場合には、公的な助成を含めてしっかりと理解し、ライフプランを立てていかないと、教育費のねん出が困難になりがちです。ぜひ、離婚を考えたときには、計画的に進めることが大事だということを覚えておいてください。
(※1)日本公証人連合会「5 離婚」
(※2)裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)」
(※3)法務省「離婚を考えている方へ〜離婚をするときに考えておくべきこと〜」
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。