更新日: 2021.04.21 その他暮らし
新しく設けられた大型補助金「事業再構築補助金」をご存じですか?
これは、補助金の限度額が1億円。予算額1.1兆円と非常に大きな補助金ということで注目を集めています。今回は、この補助金について書いてみたいと思います。
(※2021年3月時点の情報です)
執筆者:長崎元(ながさき はじめ)
行政書士/特定行政書士
長崎元行政書士事務所 代表
学校を卒業後、IT企業に就職。約15年勤めた後、行政書士として開業。前職で培ったITの技術と知識を活かし、効率的で、お客様にストレスのかからないサービスを提供している。主な取扱業務は、「許可の取得」や「補助金の申請」。
長崎元行政書士事務所 HP
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事業再構築補助金の概要
ひと言でいうと「思い切った事業再構築」をサポートするための補助金です。
新型コロナウイルスにより生活様式がガラッと変わったことで、今までの業態では収益が見込めなくなった、またはこれを機として新しい事業を展開しようと考えている事業者の“挑戦”を支援することを目的としています。
図 1 補助金活用イメージ(経産省公表資料より抜粋)
上の図は、補助金のホームページで公表されている補助金の活用イメージです。例えば、飲食店が宅配事業を始めたり、製造業がECサイトを作成してインターネットを通じた商品の販売を行ったりといったことが例示されています。
これらを行うには通常、店舗の改修やECサイトの構築が必須であり、まとまった資金が必要となります。そのため、これまで構想はあっても実現には至らなかったという事業者も少なくないと思います。
そのような事業者を支援し、事業拡大の手伝いをする。それが「事業再構築補助金」です。補助額は100万円から1億円。補助率が3分の2なので、掛かった経費の3分の2が補助金として受け取れます。補助額の最低が100万円なので、少なくとも150万円の経費を掛ける必要があります。
この補助金、「思い切った事業再構築」であれば何にでも使えるかというと、そうではありません。他の補助金と同様に、“要件”と呼ばれる補助金を申請するための条件が設定されており、これをクリアする必要があります。
その要件は以下の3点です。
要件(1) 申請前の直近6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、新型コロナウイルス感染拡大以前の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
要件(2) 事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。
要件(3) 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、または従業員1人あたり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。
要件(2)に出てくる認定経営革新等支援機関とは、中小企業に対して経営課題等の解決に向けた専門的な支援などを行う機関です。要件(2)では、つまり、事業者単独での申請はできず、必ず専門的な知識を持った機関と一緒になって、今後の計画を練ることと書かれています。
今回の補助金は最大1億円。大規模な事業を始めようと考えている事業者もいることでしょう。そうなると、融資も関係してくることが多いので、金融機関との連携も必要となります。
自分1人で突っ走ることなく、専門家の意見を取り入れ、実現可能な計画を練りましょうというのが、要件(2)です。さらに、これら要件に加えて新規性と呼ばれる要件もクリアする必要があります。
この要件が非常に厳しく、作ろうとしているものが新しいか? 進出使用している分野は新規の分野か? 等、これまで行っていた事業とは違う、という点を示さなければいけません。補助金を申請される事業者は、この点を客観的に示す方法を今のうちから考えておいたほうがよいでしょう。
申請時の注意点
今回の補助金は、インターネットを通じて申請手続きを行う、電子申請と呼ばれる方法です。この際、「GビズIDプライム」という電子申請システム用のアカウントが必要となります。
このアカウントを発行するためには、事業者の印鑑証明書が必要であり、そもそも発効までに数週間を要するなど、いろいろと手間が掛かります。
補助金の申請準備がすべて整い、さあ、あとは申請するだけ! という状態でGビズIDプライムのアカウント発行を行うと、時間がかかった揚げ句、肝心の補助金申請に間に合わなくなってしまうことも十分に考えられます。
今回の事業者構築補助金について、少しでも興味を持った方は、まずはGビズIDプライムのアカウントを取得してしまうことを強くお勧めします。アカウントの取得にかかる費用は、印鑑証明書の取得手数料と書類等の送料のみです。
最後に、補助金は申請すればお金が入るというシステムにはなっていません。審査があります。今回の補助金は新しく設けられたものであるため、どの程度の事業者が審査をパスするか? その情報がまだありません。
申請を考えている事業者は、少しでも自身が補助金を受け取れる確率を上げるため、「何をやるか」「なぜやりたいか」「やるとどうなるか」など、新しい取り組みについて深く考えてみてください。
「やりたいことはあるが、具体的なイメージができていない」事業者と、「やりたいこと、そのために必要なモノ、今後の見通し」を明確に答えられる事業者では、やはり後者のほうが支持されるでしょう。
また、このような補助金では、必ずといってよいほど、申請サポートと称し高額な報酬を要求する人が出てきます。くれぐれもご注意ください。しかし、正規に専門的に補助金を取り扱っている人は、申請書の書き方などについて要点を心得ていることも確かであり、申請を有利に運ぶことができます。
悪質な業者と補助金のプロ、なかなか見分けがつきにくいのが難点ですが、信頼できるプロが身近にいるなら、頼るのも選択肢の1つです
執筆者:長崎元
行政書士/特定行政書士
長崎元行政書士事務所 代表