更新日: 2021.05.05 その他暮らし
奨学金の返済はいつから始まるの?延滞した場合に起こることとは
今後、続く返済期間をどう乗り越えるか、考えてみましょう。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
「返済いつからいくら?」は、自分しだい
学校を卒業しても、すぐに返済が始まるわけではないことは、奨学金を借りる際のしおりなどにも説明されていますし、ご存じの方も多いでしょう。貸与終了後7ヶ月目、すなわち貸与された学費が3月までということでしたら、10月から奨学金の返済が口座振替により始まるわけです。
そのまま無事に返済期間が終了できればよいですが、人生は山あり谷ありです。就職した企業で業績が悪化し給料が下がったり、職場になじめず退職せざるをえなかったり、さらには結婚して、いったん専業主婦(夫)になるということもあるかもしれません。
通常であれば、月々地道に返済していく「月賦」が返済方法として無理のない方法であると思うかもしれませんが、「月賦と半年賦併用払い」や「繰り上げ返還」など、返済には選択肢があります。
利子付きの第二種奨学金を借り、かつ保証機関に保証してもらっていた場合には、繰り上げ期間にあたる期間の利子はかかりません。少しでも早めに返すことで、得をすることもあるのです。人生の谷が来る前に「備える」ことはとても大切なことです。
「ちょっとだけ滞納」は絶対してはいけない
新社会人の給料がどのように変化するかは、会社しだいです。筆者は社会保険労務士としてさまざまな会社の就業規則を見ることがありますが、昇給や賞与を「必ず〇〇円支給する」と約束をしている就業規則にはあまりお目にかかれません。
しっかりとした労働組合があれば、会社との交渉で、ある程度の成果は上げられるでしょうが、通常は、昇給や賞与などの金額は毎年会社の業績によって変動しますし、今回のコロナ禍のように不測の事態に陥った場合、賞与が支給されなかった業種はたくさんあります。
予想とは異なる給料になって生活が苦しくなっても、「少しくらいなら延滞してもよいだろう」とは思わないでください。返済が困難になった場合には、救済制度が設けられています。月々返済する金額を2分の1もしくは3分の1に減らす「減額返還」と、月々の返還を先送りする「返還期限猶予」です。
ただ、いずれも申請をして承認されなくてはいけませんし、どちらも利子を含む返還予定の総額は変わりません。待ってもらっても、返済しなければならない金額に変更はないのです。問題の先送りにしかなりません。
大学院生の、特に優れた業績による返還免除や、死亡・精神もしくは体の障害のため返済が困難になったときの、「全部」または「一部」の返還免除もありますが、条件はかなり厳しいといわざるをえません。
例えば、精神もしくは体の障害による免除は、「回復の見込みがない」もしくは「労働能力が喪失」などの条件ですから、かなりのレアケースといえるでしょう。
放置することで起こる怖い結末
生活苦が続き、奨学金の返済ができずに「ちょっとくらいならよいだろう」とそのまま放置していればどうなるでしょうか。
延滞は、自分だけの問題ではありません。督促は文書だけではなく、電話でも行われます。連帯保証人や保証人にも連絡がいきます。仕事中に、督促の電話がかかることで、職場の方に迷惑がかかることもあるでしょう。借金は放置してもなくなりませんし、延滞した日数に対しての延滞金も課されます。
さらに怖いことは、延滞3ヶ月以上となったときに個人信用情報機関に登録されることです。
新社会人になって、クレジットカードを作るとき、自動車ローンを組むとき、住宅ローンを申し込むときなど、登録されたことで融資してほしい金額が承認されず、予定していた人生設計が崩れることもあるでしょう。いったん登録されると、返還を終了しても、すぐに情報は消されません。5年間は登録が残るのです。
そして、自分で返還できず、さらに保証人などでも返還できない場合には、裁判所へ支払督促の申し立てなどがされるという、法的措置へと移行することもあります。
奨学金は、「借金」です。借りたお金は返さないと、当然利子もつきますし、返さなければ、法的措置まで行われるという、借金以外の何物でもないのです。
「学生はみんな借りているから」「これくらいなら返済できる」など、甘い考えは捨てましょう。奨学金は、養うべき家族もまだいない新社会人のうちだからこそ、早めに計画性をもって返済するという強い意志を持ちたいものです。
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。