預貯金などの資産があると生活保護を受けられないって本当?

配信日: 2021.05.19

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預貯金などの資産があると生活保護を受けられないって本当?
コロナ禍の影響で解雇や雇止めにあい、生活が困窮する人が増えています。いよいよ生活が成り立たなくなってきたとき、最後のセーフティーネットに生活保護があります。預貯金などの資産があると、それらを使い切らないと生活保護を利用できないと思っている方は少なくありません。本当でしょうか。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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補足性の原理

生活保護法第4条第1項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と規定しています(補足性の原理)。
 
つまり、生活保護は、世帯単位で行い、世帯員全員がその資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。
 
ここで、資産の活用とは、預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば、原則、売却等し生活費にあてることを意味しますが、例外もあります。以下に主な資産についての取り扱いを確認しましょう。
 

現預金がある場合

現在の運用では、生活保護申請時に、最低生活費の月額を上回る預貯金を保有している場合は、生活保護利用開始は認められていません。最低生活費の月額を下回る場合は、最低生活費の月額の半額を超える部分が収入認定され、生活保護開始月の生活保護費が減額されます。
 

生命保険がある場合

保険の解約返戻金は、資産として活用を求められるのが原則です。ただし、解約返戻金と保険料が一定以下の生命保険契約は、保有することが認められています。
 
具体的には、解約返戻金については、医療扶助を除く最低生活費のおおむね3ヶ月程度以下が目安とされています。保険料については、医療扶助を除く最低生活費の1割程度が目安とされています。
 
この取り扱いは、生命保険は払い戻しを当然予定している預貯金と異なり、保障のために加入するもので、生活費のために解約するというのは例外であるという性質の違いによるものです。
 
なお、学資保険については、生活保護申請時に次の3つの条件に保有を認める取り扱いがされています。
 

(1)満期金の受取時期が15歳満期または18歳満期の学資保険であること
(2)世帯内の子の就学に要する費用にあてることを目的としたものであること
(3)保護開始時における解約返戻金の金額が50万円以下であること

 

土地・家屋がある場合

土地・家屋は、原則売却する必要があります。ただし、現在に居住の用に供されているものについては、利用価値に比べ処分価値が著しく大きいものを除き、保有が容認されます。
 
また、65歳以上の方は、社会福祉協議会の「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」(リバースモーゲージ)の利用を求められます。
 

自動車がある場合

自動車については、原則として保有は認められません。ただし、障害者や山間へき地に居住する者等が通勤のため必要とする場合や、障害者が通院・通所および通学のため必要とする場合などは、保有が認められる場合があります。
 
なお、125cc以下のオートバイについては、自賠責保険および任意保険に加入するなどの要件を満たせば、保有が認められる場合があります。
 

その他の資産がある場合

それ以外の生活用品については、当該地域の普及率が70%を超えるものについては、地域住民との均衡などを勘案の上、原則として保有が認められます。パソコンやスマートフォンなども今日においては必需品となっていますので、よほど高額な機種でない限り保有が認められています。
 
ペット(法律上は動産)は生活必需品とまではいえないかもしれませんが、家族の一員として生活を支える力ですので社会通念上、保有が認められています。
 

能力の活用

生活保護を受けるには、資産のほか能力の活用も要件となっていますので、簡単に確認しておきましょう。
 
稼働能力を活用しているか否かについては、

(1)稼働能力を有するか否か
(2)その稼働能力を活用する意思があるか否か
(3)実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か

の3つの要素により判断されます。
 
出典
厚生労働省「生活保護制度」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
 

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