緊急小口資金の対象は? 利用できないのはどんな人?
配信日: 2021.08.21
なお、緊急事態宣言の期間が延長される地域や、新たに発令される地域があります。今後の緊急小口資金の申請期間にも変更が生じるかもしれません。
では、内容を見ていきましょう。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
緊急小口資金の対象となるのは?
緊急小口資金の対象となるのは、「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、休業等による収入の減少がある方」です。
「休業等」とありますが、実際に休業している必要はなく、収入の減少があれば対象になります。お勤めの方ですと、新型コロナウイルス感染症の影響で残業が減ることによって収入が減った、特に非正規雇用の方なら出勤日数が減って収入が減った、という方も対象です。
個人事業主、すなわちフリーランスの方ももちろん対象です。
なお、学校が休みで子どもの世話をするため、仕事を休んだり辞めざるを得なくなったりした方も対象になります。
緊急小口資金の目的と金額は?
緊急小口資金の目的は、「緊急かつ一時的な生計維持のための貸付」とされています。つまり、緊急かつ一時的な生活費を貸し付けることが目的です。貸付金額はこれまで、原則10万円が上限だったのですが、休業等による収入の減少等で生活費用の貸付が必要な場合には、20万円が上限となりました。
返済は?
緊急小口資金は、無利息・無保証の貸付制度です。つまり、借り入れた元金のみを返せば良いことになります。1年間は据え置き期間として返済の必要はありません。すでに利用している方は、最長2022年3月末までが据え置き期間です。
そして、据え置き期間後、返済期間は2年間です。上限の20万円を借りた場合、毎月の返済額は、20万円÷24ヶ月(2年間)=8333円となりますので、2年間にわたり、毎月8333円を返していくことなります。
なお、返済時に住民税が非課税世帯の方ですと、返済が免除されます。
留意点・・・緊急小口資金を利用することができないのは、どんな人?
では、緊急小口資金を利用することができないのは、どのような人でしょうか?
緊急小口資金は、新型コロナウイルス感染症の影響に対する、いわば特例です。つまり、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていないという方は対象外です。ただし、世帯員(つまり家族)に要介護者がいる方は対象となります。
「新型コロナウイルス感染症の影響」というものがどのようなものか判断に迷うこともあるでしょう。対象になるか否かは、まずは相談してみるとよいでしょう。
住民税などの滞納があると、緊急小口資金の利用はできません。滞納した住民税を分納している方の場合は、相談のうえ決定されます。
信用情報機関などに収集されている個人情報で、いわゆる「ブラック」になってしまっている方でも、緊急小口資金の利用の対象になります。つまり、自己破産を済ませた方でも、緊急小口資金が利用できる可能性があります。
ただし、自己破産や任意整理の手続き中の方、あるいは、それらの手続きをするための費用が必要な方、カードローン等の借金の返済に充てたいという方などは、緊急小口資金の利用の対象外です。
なお、総量規制の対象外です。緊急小口資金の利用が信用情報機関に載ることはありません。
意外に見落としがちなのは、共働き世帯でも片働き世帯でも、緊急小口資金を利用することができるのは、「世帯(=家族)につき1人」です。留意しておきましょう。
その他の留意点
緊急小口資金の利用の相談は、区市町村の社会福祉協議会が窓口になって行われています。もちろん、社会福祉協議会に出掛けて相談や申請を行うこともできますが、電話での相談も受け付けていますし、申請は郵送でも受け付けています。ただし、メールでの相談・申請受付は行っていません。
申請用紙は厚生労働省のサイト(※)からダウンロードできますが、インターネットから申請はできませんので注意してください。
窓口の混雑状況などによっては、申請から資金の受け取りまで時間がかかることがあります。申請を検討している方は、早めに確認・申請を行うことをおすすめします。
また、緊急小口資金はあくまで「貸付」です。先述のとおり返済が必要ですので、緊急小口資金で生計を立て直しつつ、据え置き期間以降の返済計画も慎重に検討しておきましょう。
(※)厚生労働省「緊急小口資金特例貸付借入申込書」
(参考)
厚生労働省「生活福祉資金の特例貸付」
厚生労働省「緊急小口資金特例貸付に関する重要事項説明書」
全国社会福祉協議会「新型コロナウイルス感染症を踏まえた生活福祉資金制度による緊急小口資金等の特例貸付を行っています」
厚生労働省「一時的な資金の緊急貸付(しばらくのあいだ必要なお金を借りることができます)のお知らせ」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役