更新日: 2021.09.09 その他暮らし

これは、やり過ぎかも。スーパー店頭で見た「OEM」の複雑な側面とは?

執筆者 : 上野慎一

これは、やり過ぎかも。スーパー店頭で見た「OEM」の複雑な側面とは?
以前に「OEM」について書きました。クルマやカップ麺を例に取ってみましたが、カップ麺に限らず食品ではよく見られるやり方です。
 
このOEM、もちろん良いことばかりではありません。あるスーパーの店頭で、ちょっと複雑な思いがする光景を目にしました。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「OEM」のおさらい

まず、OEM(オーイーエム)のおさらいです。「Original Equipment Manufacturer」の略語で、製造業者が他社からの委託によってその相手先の名前やブランドの製品を製造すること、あるいはそうしたメーカーのことを意味します。
 
つまり、A社のブランドの商品だけど、実はB社が製造してA社に納入したもの。クルマのような高額の消費財だけではなく、家電、アパレル、化粧品、食品など、いろいろな業界や分野で見られます。
 
メリットとデメリットは、【図表1】のとおりです。
 

 

スーパー店頭で見た光景

冒頭で言及した光景とは、あるスーパーの店頭。レジの近くに設けられた(何日かごとに陳列替えしていると思われる)特設コーナーでのことでした。そこに大量に積まれて並んでいたのは、缶ビールとつまみが1種類ずつで、つまみは「柿の種」。その名に似た色や形をした米菓にピーナツが混ざったものです。
 
そのスーパーほか同業数社が共同で企画開発した、いわゆる「プライベートブランド(PB)」商品で、小袋パックが12袋詰まったもの。製造者は新潟県に本拠を置く大手米菓メーカーで、まさに典型的なOEMでした。
 
やや驚いたのは、柿の種の段ボール箱が積まれた一角に何枚も大きく掲出されたポップ広告でした。売り出されている柿の種(仮にA商品と呼びます)の写真と、店内の本来の米菓コーナーで売られる別の柿の種(同じメーカーのオリジナル商品。仮にB商品と呼びます)の写真を並べて、次のような表示をしていたのです。
 

(1)キャッチフレーズ

●〇〇製菓が作っています!
●比べてみてみて!
●えっ!? メーカーは同じ〇〇製菓なのに

 

(2)各写真に添えられた数値等

 

(A商品) 

柿の種 12袋入 内容量340グラム 税込み321円 100グラムあたり94円

 

(B商品) 

柿の種 6袋入 内容量200グラム 税込み235円 100グラムあたり118円

 

 
文章だけでは臨場感があまり伝わりませんが、写真や文字そして“吹き出し”のレイアウト、文字の大きさ・フォント、色の使い分けなど、いかにもスーパーらしさが感じられる、印象の強いポップ広告でした。
 
そして、A商品の100グラムあたり単価の脇には、「(B商品よりも)24円お得!」の“吹き出し”も添えられていたのです。(販売価格は変動するため、上記の各数値はあくまでもイメージとしてお読みください)
 
要は、同時に隣り合わせの商品陳列こそしていないものの、結構はっきりした比較広告でした。同じ有名メーカー製造なのに、このスーパーのPBであるA商品は、メーカーオリジナルのB商品よりとてもおトクですよ!とアピールしていたのです。
 

考えさせられることとは

ちなみに、このメーカーのホームページで確認してもB商品の12袋詰めはありません。袋数まで同じにしている競合商品ではなく、A商品は袋数が多い分だけ割安になっているという設定のようです。
 
各内容量を割り算すると1袋あたりの量は違っていますが、その差はほんのわずか。筆者も実際に両方の商品を購入して、ビールを飲みながら食べ比べてみましたが、米菓・ピーナツとも見た目や食感の差はあまり感じませんでした。
 
カップ麺でも、スーパーPB商品がOEMで製造されメーカー商品に比べて安価で売られているケースは珍しくありません。しかも中小の無名メーカーや海外に製造を委託してコストを抑えているようなイメージもありますが、実は、国内有名メーカー製造の商品も少なくないのです。
 
こうしたカップ麺で、メーカー名を大きく打ち出しているものはあまりないと思います。また、メーカーオリジナル商品と並べてPB商品のほうの割安さを強調しているような陳列のシーンも、筆者は見た経験がありません。
 

まとめ

販売サイドが商品を企画・開発するパワー、そして製造サイドの技術力や効率化の能力がうまくコラボレーションすると、良いものを手頃な価格で手に入れられるようになり、買い物の選択肢も豊かなる。
 
OEMの前向きな点を、以前にもそう指摘しました。しかし販売する段階で、例示したような比較広告がもしもどんどん横行するとしたら、「製造」と「販売」の前向きな役割分担関係に水を差してしまうのではないか。そんな心配も否定はできません。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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