児童手当の所得制限の仕組みとは? 18歳以下の子どもへの10万円給付金との関係は?
配信日: 2021.11.30
しかし、960万円の所得制限、そして児童手当の仕組みを参考にしたことは明らかになっています。
この政策の目的は何か、「バラマキか」など議論はたくさんありますが、議論は別の場所で行っていただくとして、この記事では、児童手当の所得制限の仕組みと現時点(2021年11月)でわかっている今回の支援策の給付対象者との関係についてお伝えします。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
児童手当の取得制限の内容
児童手当の取得制限は図表1のとおりです。児童手当は扶養する人数によって所得制限額が異なります。例えば、専業主婦(夫)、子ども2人の4人家庭だと扶養人数は3人になり、赤枠の所得736万、収入目安960万円が該当します。
【図表1】
出典:内閣府「児童手当制度のご案内」(※)筆者加工
ちなみに扶養親族とは、児童手当の対象となっている子はもちろんですが、大学生や高校生の子を扶養している場合も扶養親族に含まれます。
今回の支援策の所得制限も扶養人数3人の場合の制限額である960万円と同じですが、支援策については扶養人数によって所得制限が変わるかどうかは不明です。4人世帯でない場合は、どうなるのでしょうか。そこまでは言及されていません。
年収は収入の高いほうで判断
児童手当の所得制限の基準となる収入は、共働きの場合、夫婦のうち収入の高いほうで判断されます。
今回の支援策でも、この判断基準は同じようです。メディアの報道では、例えば夫婦でそれぞれ年収800万円、世帯年収1600万円の世帯は給付され、夫が1200万円、妻は専業主婦の世帯年収1200万円だと給付されない、といった指摘を目にしますが、それは児童手当でも同じです。
実際、筆者のお客さまでも夫婦それぞれ700万円ずつ稼ぐ世帯年収1400万円の家庭は児童手当を受け取れていますが、夫が年収1000万円、妻が年収200万円、世帯年収1200万円の家庭は、手当を受け取れず5000円の特例給付を受け取っています。
所得制限は年収では判断しない
所得制限について年収ベースでお伝えしてきたものの、児童手当の所得制限は、収入では判断しません。所得制限は字のとおり「所得」による制限であって収入による制限ではないのです。
所得の考え方はやや複雑なので、目安として収入金額が用いられることが多いのですが、ここで、所得制限の概要をお伝えします。
まず、給与収入(年収)から給与所得控除といって、会社員に認められた必要経費を差し引きます。給与所得控除は、年収によって金額が決まっています。その金額から10万円を引き、そしてさらに医療費控除等、該当の控除があれば差し引き、最後に8万円を差し引きます。
また、給与以外にも不動産所得や事業所得があるなら、それも加えます。したがって年収はあくまでも目安です。
今回の支援策においては、970万円は支援対象外といった報道もありますが、児童手当の所得制限と今回の支援策の所得制限の計算式が同じなら970万円でも所得状況によっては、支援対象になる可能性はあります。
少なくとも児童手当の取得制限は960万円ならOK、970万円ならNGといった単純な計算体系にはなっていません。
児童手当は中学校卒業まで
今回の支援策は18歳以下の子どもが対象ですが、児童手当は中学校卒業までの子が対象です。この点は児童手当と異なる点です。
まとめ
今回の支援策に絡んで児童手当の取得制限をお伝えしましたが、どこまで児童手当の仕組みが適用されるのか今のところ未定です。いずれにせよ、国民が納得できる内容であってほしいものです。
出典
(※)内閣府「児童手当制度のご案内」
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ