更新日: 2021.11.30 その他暮らし
新型コロナウイルス感染症の影響で出生数が激減!?
どのような変化が起きていて、そのことによって今後何が起きそうなのか、ファイナンシャルプランナーの立場から考えてみました。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
目次
新型コロナウイルス感染症がなくても出生数は減っている
日本では少子化によりすでに人口が減り始めていますが、出生数の減少が止まらないことで人口減少も止まる気配がありません。どのくらい減っているのか、厚生労働省の人口動態調査から、長期間の年次別出生数をグラフにして確認してみました。
グラフは1950年以降の1年ごとの出生数で、1950年~2000年(薄い青色)は5年おきに、2000年~2020年(濃い青色)は毎年分を載せてあります。
資料:厚生労働省「人口動態調査」2020年確定数
戦後の1950年(昭和25年)は1年間で234万人、第2次ベビーブームあたりの1970年(昭和45年)でも193万人生まれていました。
ところが、不動産バブルの1990年(平成2年)には122 万人まで大幅に減り、その後は景気の停滞に連動するように徐々に減り、2016年には出生数が98万人でついに100万人割れし、2020年は84万人まで減ってしまっています。1970年と比べたらわずか3分の1程度です。
2000年以降では前年に比べて4回(2006年・2008年・2010年・2015年)増加していますが、どれも微増のため、少子化の流れをまったく止められません。2010年から2015年が6万5584人の減少に対し、2015年から2020年は16万4886人の減少なので、減少スピードが加速している状況です。
このまま状況が変わらないと、あっという間に50万人を割ってしまいそうです。
2021年1月と2月の出生数激減は新型コロナウイルス感染症ショックか!?
減少スピードが早まっている最近の出生数状況をさらに詳しく確認するため、今度は2016年以降を月別で確認しグラフにしてみました。概算や速報値を含めて2021年8月までの数字を拾ってあります。また、比較対象として2000年の出生数も載せてあります。
資料:厚生労働省「人口動態調査」2020年確定数・2021年5月月報(概数)・2021年6~8月速報をもとに筆者作成
少子化が進んでいることから、月単位で見ても毎年前年よりグラフの位置が下にきています。2000年は毎月10万人前後の出生数ですが、2016年は最も多い7月で8万5030人、最も少ない2月で7万6766人まで大幅に減っています。
さらに4年後の2020年は最も多い7月で7万4292人、最も少ない2月で6万4497人となり、7月も2月もわずか4年間で1万人以上減少しています。きわめつけは2021年の1月で、前年から1万3572人も減っています。翌2月も7164人減っています。
出生数は新型コロナウイルス感染症拡大から時間差で減少
最近の出生数の減り方があまりにも急なので、2017年1月以降の各月で、前年同月に比べてどのくらいの割合で出生数が減っているのかを計算し、グラフにしてみました。
資料:厚生労働省「人口動態調査」2020年確定数・2021年5月月報(概数)・2021年6~8月速報をもとに筆者作成
2017年1月以降では毎月安定して前年比マイナスで推移しています。微増の月も若干ありますが、5%を超えて減少している月も多いです。
そして、2020年12月~2月は減少幅が一気に急拡大し、12月8.1%減、1月19.1%減、2月11.1%減と相当大きな減少率になっています。人口の増減はわずか1%でも相当な衝撃なので、1月の19%減は衝撃どころか恐怖のレベルではないでしょうか。
妊娠期間を考慮すると、ちょうど新型コロナウイルス感染症が広まり始めた時期と重なります。未知の感染症が人々に与えた衝撃は非常に大きく、妊活どころではなかったのかもしれません。
少子化は社会保障制度への影響が大きい
新型コロナウイルス感染症が少子化のスピードを速めてしまったといえますが、大幅な改善なく時間がたっていくと、今以上に少子高齢化社会になります。私たちの家計目線からどのような影響があるか考えてみると、公的な社会保障制度の維持がさらに困難になっていくと考えられます。
例えば公的年金は、今の高齢者の年金を今の現役世代が支えていますが、今後はさらに少ない人数で多くの高齢者を支えなければなりません。
すでに厳しい状況にあることから年金保険料を大幅に上げ、年金給付額を抑えてきましたが、制度を維持していくにはもっと踏み込んで改善していく必要が生じるでしょう。家計から見れば支出増(年金保険料の値上げ)や収入減(年金給付額の減少)となります。
「老後2000万円問題」を知っている方もいらっしゃるでしょう。日本の長寿化も進んでいますので、リタイア後の老後生活が長くなることが想定できます。
若いうちから老後の生活資金の準備が必要だと叫ばれる昨今、貯蓄に励む現役世代の年金保険料の値上げやリタイア後の年金給付額の減少といった可能性があることも覚えておきましょう。
社会保障制度は、家計にダイレクトに影響があります。自分たちの将来に希望を残すためにも、将来を見据えて積極的な家計防衛をしていきましょう。
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者