更新日: 2022.06.08 その他暮らし

うつ病で休職後、「復職」をしたらクビに…「不当解雇」にあたりますか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

うつ病で休職後、「復職」をしたらクビに…「不当解雇」にあたりますか?
近年、うつ病などの精神疾患で仕事を休む人も増えています。なかには、復職したもののなじめなかったり、病気を再発したりして会社から解雇を言い渡される人もいるようです。うつ病からの復職後に解雇となるのは「不当解雇」となるのでしょうか。
 
ここでは、労働基準法やこれまでの判例を交えながら「不当解雇」となるケース・ならないケースについて解説していきます。
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労災だと解雇制限がある

休職期間とは、従業員が病気やけがなどを理由に長期間仕事ができなくなったときに、年次有給休暇とは別に長期休暇を与えることです。この期間、従業員は業務を免除されている状態にあり、解雇を猶予してもらっている状態となります。休職期間の定めは企業ごとに違いますが、制度を設けている企業では3カ月から3年程度です。
 
労働災害が認められれば、療養のために休職している期間と復職後30日間は会社側が解雇を言い渡すことはできません。労働災害とは仕事中に起きた病気やけがのことで、解雇制限については労働基準法19条で決められています。
 
ただし、業務が原因で病気やけがを発症してから3年が経過しても復職できない場合は「打切補償」となり、1200日分の平均賃金か傷病補償年金を従業員に支払う代わりに、解雇できるようになります。ちなみに、災害などが起こって事業の継続そのものが難しくなってしまったケースでは、従業員が業務上の病気やけがを理由に休職中であっても解雇することが可能です。
 
また、業務とは関係のないことが原因で病気やけがになり、休職期間を過ぎても復職できないときに会社は解雇することが可能です。
 

不当解雇と判断された事例

けがと比べてうつ病などの精神疾患は、労災を証明するのが難しいです。厚生労働省は2011年に出した「心理的負荷による精神障害の認定基準について」という通達の中で、発症前6カ月の間に業務によって強い心理的負荷がかけられていることを挙げています。
 
うつ病で休職後の解雇が「不当解雇」と判断された判例を紹介します。大手企業に勤めていた従業員は、長時間労働がきっかけでうつ病を発症しましたが、会社が定める休職期間を経ても復職できなかったため、会社は解雇を言い渡しました。そのため、従業員は損害賠償と解雇の無効を訴える裁判を起こしました。
 
2014年3月に出された最高裁判所の判決では、休職する前の6カ月間の残業時間が長時間であったことを認め、うつ病が業務に起因しているものだと認めました。その上で、会社が命じた解雇は不当なものだとして6000万円の損害賠償を命じました。精神疾患の場合、休職の6カ月前の業務内容を精査し、病気と業務に因果関係が認められれば労災となります。その場合、休職期間の満了のみを理由に解雇とすることはできません。
 

復職後の解雇は無効?

一般的に、復職をするということは病気が治癒したとみなされます。「治癒」とは病気になる前と同じ水準で働ける状態のことで、復職をした際に元の水準で仕事をすることができなくなっていれば、1カ月以上経過してから解雇を言い渡されることかもしれません。
 
うつ病から復職する際には精神科医とよく相談の上、慎重に時期を判断する必要があります。うつ病は再発をくり返すケースも多く、「治癒」の判断が難しいことも徐々に知られてきました。うつ病から復職をさせる際には、産業医などとの面談や試し期間を設けるなどの復職プログラムを組み、判断を慎重に行う企業も増えています。
 

復職後30日以内の解雇は「不当解雇」

仕事が原因でうつ病となった場合、休職中と復職後30日間は原則解雇することができませんが、30日を超えてから解雇を言い渡されたとしても不当解雇とは言えません。また、労災の場合、休職期間を満了したことを理由に解雇することは「不当解雇」となるでしょう。
 
ただし、休職期間が3年を超えても治癒しない場合には、企業は1200日分の平均賃金か傷病補償年金にあたる「打切補償」を支払うことで、解雇することができます。
 

出典

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徳島労働局労働条件:解雇、退職(解雇制限、解雇の予告、退職時の証明)
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執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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