円安は損で円高が得? 「円安」の今、どんなメリットがあるの?
配信日: 2022.06.10
自分の国の通貨が下がるということは、海外からの輸入品に対して、より多くの円を払わなければ買えないということです。普通に考えると損をしているように感じますが、円安にもメリットがあります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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そもそも円安とは?
経済関連のニュースで「1ドル〇〇円台まで円安が進みました」と言っているのを聞いたことがある人も多いでしょう。円安とは、為替取引において日本の通貨である「円」が、相手方の通貨、例えばアメリカの通貨である「ドル」に対して価値が下がる(安くなる)ということです。
ある時点での為替相場で「1ドル=100円」だったとします。これは、「1ドルと交換するために100円が必要」ということを意味します。その後「1ドル=110円」になったとしましょう。このとき「1ドルと交換するために110円が必要」となり、同じ1ドルを手に入れるために、それまでより10円多く支払う必要があるということです。
これだけ見ますと、ドルが高くなったと理解するのは簡単ですが、円が安くなったと感じにくいかもしれません。そこで、分かりやすく100円を基準で考えますと、「1ドル=100円」は、「100円で1ドルを手に入れられた」のに対して、「1ドル=110円」の時は、「100円でおよそ0.91ドルしか手に入らない」ということを意味しており、円の価値が下がった(安くなった)ということになるのです。
円安と豊富な観光資源で「インバウンド」の起爆剤に
円を基準に考えますと、他国の通貨(例ではドル)に対して値下がりしていることを実感しやすくなったのではないでしょうか。実際、現在進んでいる円安によって、輸入に頼る食品や燃料は値上がりしていますし、海外旅行へ行くにも円高の時より出費がかさんでしまいます。
デメリットばかりのようですが、逆の立場で考えたらどうでしょう。「アメリカ・ドル」を使っている人から見ますと、円安は日本の高級なホテルや旅館に安く泊まれ、たくさん買い物をするチャンスです。
海外から日本へ旅行へ来ることを「インバウンド」といい、日本国内の多くの業種に利益をもたらしてくれます。
新型コロナウィルスの感染が広がる前までは、海外からの観光客による「爆買い」という現象が見られ、旅行会社、航空会社、百貨店やドラッグストアだけでなく、観光地の土産物屋のような規模の小さな小売業にまで多くの恩恵がありました。幸い日本には世界中の人を魅了する観光資源がたくさんあります。円安と観光資源は、再びインバウンド需要を喚起する起爆剤となり得ます。
そして、コロナ禍で停滞していた経済活動を再始動するきっかけにもなるでしょう。
円安が農林水産物の輸出の追い風に?
今、日本から海外向けに輸出が伸びつつあるのが「農林水産物」です。特にここ10年は右肩上がりで輸出額が増えています。農林水産省のウェブサイトで公表されている「農林水産物輸出入概況」によると、さかのぼって閲覧できる最も古い2003年の農林水産物輸出額は3402億円でしたが、2021年は1兆1626億円と3倍以上に伸びています。その前年比25%以上の増加となっています。
かねてより日本の食料自給率の低さが論じられてきましたが、海外の安い輸入食品に頼ったままでした。急激に進んだ円安に加えてロシアのウクライナ侵攻によって、食料を過剰に海外に依存することへの危機感が一気に高まるにつれ「食糧安全保障」という言葉を耳にするようになりました。現在の円安は身近な生活に負の影響を与えていますが、これを機に日本が食糧自給の向上を進めるために農業政策を見直すと同時に、農林水産物が新たな日本の輸出品として成長することが期待されます。
円安が新たな経済成長の起爆剤になるかも
コロナ禍でインバウンドが途絶え、観光や小売りなどの業種は苦境にあえいでいますが、ようやく海外観光客の受け入れが再開されようとしています。円安は海外観光客にとって日本に来るには好条件です。また、新たな輸出品として成長している農林水産物を売り込むにも、円安はまたとないチャンスです。現状は生活に負の影響が大きい円安ですが、日本の新たな成長の起爆剤になるかもしれません。
出典
農林水産省 農林水産物輸出入情報・概況
農林水産省 農林水産物輸出入概況(2003年)
農林水産省 農林水産物輸出入概況2021年(令和3年)
農林水産省 2021年1-12月農林水産物・食品の輸出額
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部