更新日: 2022.06.14 その他暮らし
経済産業省が警鐘する「2025年の崖」、ご存じですか?
DXとは、企業がAI、IoT、ICTなど先進のデジタル技術を活用して変革を実現することをいい、それによって新たなビジネスが生まれたり、消費者の生活にも影響を及ぼすものとされています。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
経済産業省によるDXレポート
2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」と呼ばれる資料で、「2025年の崖」という言葉が初めて登場しました。
DXレポートにおいて、日本の企業が国内外の市場で競争を勝ち抜いていくためには、DXのさらなる推進が不可欠であり、もし推進できない場合は、業務効率や競争力の低下が避けられないとしています。
そして、業務効率や競争力の低下によって生じる経済損失は、2025年以降、年間で現在の約3倍の最大12兆円になるとの想定が示されており、これを「2025年の崖」といっています。
「2025年の崖」を克服するための課題
「2025年の崖」を克服するためには、現状でどのような課題があるのでしょうか? 主な課題を以下に列挙します。
(1)レガシーシステムの存在
企業が長年にわたって使用してきた基幹システムなどの多くは、古いプログラム言語で作成されていたり、長期間で何度もメンテンスを繰り返し、過度なカスタマイズを行ってきたことで、極めて複雑な構造となっている場合も少なくありません。
また、古いシステム(レガシーシステム)では、例えば受発注システム、請求システムといった単独の業務を個別に管理するものが多いため、ほかの業務とのデータ連携がシームレスに行えないなどの課題があります。
(2)レガシーシステムの維持が困難
レガシーシステムを継続して維持していくためには、古いプログラム言語を使えたり、度重なるカスタマイズで複雑化したシステムに対応できるエンジニアの人材確保が必要となります。
しかし、ほとんどの業界において、そのようなエンジニアの人材は不足しています。また、今後も継続してレガシーシステムを維持していくためには、保守・メンテンナスにかかるコストがかさんでしまうことを覚悟しなければなりません。
(3)OS、アプリケーションのサポート期限
マイクロソフト社のWindowsをはじめとするOSやアプリケーションにはサポート期限があり、サポート切れになると、セキュリティー更新プログラムが提供されなくなるなどの弊害が生じます。
特に、これまで多くの企業を支えてきたWindowsやSAPなどのOSやアプリケーションの中には、サポート期間が2025年までに終了するバージョンも多いとされています。当然ながら、それによってセキュリティーに対するリスクは格段に増大することとなります。
レガシーシステムの問題は中小企業のみならず、歴史の古い上場企業などで多く存在しています。レガシーシステムを使い続けたままでは最新技術の導入が困難となり、企業の競争力の低下につながって、2025年以降にそれが顕在化されていくというのがDXレポートの指摘です。
レガシーシステムの刷新へ
レガシーシステムを刷新し、企業が競争力を高めていく段階に出てくるキーワードとして、「デジタル化」と「DX化」が挙げられます。デジタル化とは、分かりやすくいえば、これまでは紙媒体だったものを電子化することを指します。
例えば、紙で作成していた契約書を電子契約にするケースなどです。また、DX化とは、デジタル化を進めた上で、ビジネスに変革(トランスフォーメーション)をもたらすことを指します。
つまり、ただ単にデジタル化によって業務効率を向上させるだけでなく、新たなビジネスや新規顧客層の開拓などにつなげていくことが必要です。例えば、デジタル化で得られた購買データや顧客ごとの属性を分析し、新規の事業展開につなげるケースなどが挙げられます。
まとめ
レガシーシステムに関連する身近な例として、新型コロナウイルス感染症の感染者数の集計にファクスが使われていたことが話題となりました。
「なぜ、いまだにファクス?」と思った方も多いでしょうが、それ以前に、紙に書かれた情報をファクスでどうやって送るのか、その方法を知らないという世代も存在することを認識しなくてはなりません。
私たちの身の回りでも多くのレガシーシステムが残っています。会社員の方はご自身の会社のDX戦略はどれだけ進んでいるか、ぜひ関心を持って確認してみてください。それが会社の将来性を左右する要素の1つかもしれません。
出典
経済産業省 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー