更新日: 2022.06.23 その他暮らし

「お客様は神様だろ!」カスハラは「脅迫・強要・不退去罪」に当てはまる!? 遭遇したらどうすればいい?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

「お客様は神様だろ!」カスハラは「脅迫・強要・不退去罪」に当てはまる!? 遭遇したらどうすればいい?
店などに対して理不尽な要求を突きつけるカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)。
 
厚生労働省が2020年度、全国の企業と労働者を対象に行った「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に顧客による著しい迷惑行為を1度以上経験した人の割合は15%となりました。カスハラは企業の生産性を下げるため社会問題ともなっています。ここではカスハラの特徴やどのような罪に該当するのかということ、カスハラに遭遇した場合の対応について説明します。
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クレームとカスタマーハラスメントの違い


商品やサービスに顧客が不満を抱いたときに、企業や店に対応を求めるという点でクレームとカスタマーハラスメントは似ていますが、違いは何でしょう。公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)は関係省庁連携会議で両者の違いを次のように説明しました。
 

正当なクレームとは……

●商品やサービスの瑕疵(かし)や債務の不履行などに対する訴え。また法的に問題があるにもかかわらず正当な対応をされない場合の反応
●法的に問題がないまでも、提供された商品・サービス・顧客対応に関する不満足の表明

 

カスタマーハラスメントとは……

●法的にも倫理観的にも正当とはいえない要求を執拗に繰り返したり、威喝する行為
●自分の訴えが受け入れられない場合に、販売員、オペレーター等の対応者に対し暴力を振るったり、人格を傷つける発言等をする行為

 
クレームは企業のサービスを向上させるために必要な情報である一方、カスタマーハラスメントはクレームの範囲を超えて企業や店の正常な営業を妨害するため「悪質クレーム」とも呼ばれています。
 
厚生労働省は2022年2月、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成しました。職場内での研修や対策マニュアルの作成時に参考になる指針です。両者の違いについて定義づけすることができても、目の前の顧客がどちらに該当するのかを現場で判断することは難しいケースも想定されます。
 
また、当初は正当なクレーム処理で済むケースだったのに、クレーム対応自体に瑕疵があったために顧客を逆上させてしまい、結果的にクレームからカスハラを引き起こしてしまうケースも想定されます。そうしたことも研修やマニュアル作成を重ねることで防止に役立てることができます。
 

カスタマーハラスメントはどんな罪になるのか


先述の調査でカスハラを経験した者のうち、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)」が52.0%と最も多く、「名誉棄損・侮辱・ひどい暴言」が46.9%と続きました。顧客による迷惑行為は次のような罪に該当する可能性があります。一部を紹介します。
 
・脅迫罪、恐喝罪
要求が通らなければ経営者や従業員の生命・身体・自由・名誉・財産や企業の名誉・財産に損害を与えることを告知して、無理やり要求を通そうとする行為は脅迫罪に該当し、2年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。なお、慰謝料や「誠意を見せろ」などと言って金品を要求する行為は、脅迫罪より重い恐喝罪で、10年以下の懲役となる場合もあるでしょう。
 
・不退去罪
店や建物の所有者や管理者から要求があったにもかかわらず退去しなかった人は、正当な理由なく第三者が所有する建物などに侵入する住居侵入罪と同様、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
 
・強要罪
脅迫や暴力などを用いて、相手にやらなくてもよいことを押しつける行為は強要罪に当てはまります。土下座やクビなどの要求などが当てはまり、3年以下の懲役になる場合があります。出掛けた先で「帰りたい」と言っているにもかかわらず帰さない行為も強要罪、方法次第では監禁罪になる場合もあるでしょう。
 
・威力業務妨害罪
店内で大声を出したり、店の物を倒したりして従業員や周りの人たちを怖がらせる行為は威力業務妨害罪に当てはまり、3年以下の懲役または50万円の罰金が科せられます。迷惑電話を何時間も続けたり、何千回もかけたりする行為も威力業務妨害罪に当てはまります。
 

カスタマーハラスメントに遭遇したら

店や事業所で理不尽な要求を受けた場合は、素早くその行為を録音するようにしましょう。大声で謝罪を要求してくる場合は、声のトーンを静かで落ち着いたトーンにするのではなく、相手と同じぐらいの声の大きさで謝罪するほうが理不尽な要求が早くやむことが分かっています。
 
暴力や強要行為に対しては、上司を含めた複数の人で対応することが大切です。迷惑行為の中止や退去を求めても従わない場合は、危険から身を守る行為をとりながら警察に連絡しましょう。
 
電話やメールなどで理不尽なクレームが複数回にわたって来たら注意しましょう。厚生労働省は5回以上繰り返された場合には威力業務妨害罪で警察へ通報してよいとしています。SNSなどで見ず知らずの人から理不尽なクレームを受けた場合には、その管理者に削除を求めます。その対応が難しいときには法務局に相談をしてください。
 

もはや客ではない!?カスハラは罪!毅然とした対応と予防策を

「お客様は神様」というのは、お客様が企業に有益だからであって、企業に損害を与える人は「お客様」ではありません。カスタマーハラスメントはさまざまな刑法犯罪に問われる場合もあります。万が一、遭遇した場合には、録音などで証拠を残しつつ毅然とした態度で迷惑行為の中止や退去を求めましょう。中止の求めに応じない場合や迷惑行為が繰り返される場合には、警察に連絡をしてください。
 
ただし、ハラスメント問題を刑事事件として解決できても、被害に遭った従業員が離職したり、騒動になったりすることで、トラブル解決後も人材の採用活動などに影響を残す恐れがあります。カスハラ被害に遭った従業員のケアはもちろん、カスハラを生み出さないための対策マニュアルの作成や研修を重ねていくことが重要です。
 

出典

厚生労働省 職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
厚生労働省 「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
厚生労働省 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました!
厚生労働省 顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 消費者の立場から見たカスタマーハラスメント
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 

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