雇用保険マルチジョブホルダー制度を知っていますか?
配信日: 2022.12.30
実は、すでに手当の合算での支給が実施されているのです。ただし、65歳以上の方が対象です。これを「雇用保険マルチジョブホルダー制度」といいます。詳しい内容を見ていきましょう。
執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。
人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。
雇用保険マルチジョブホルダー制度とは
従来の雇用保険制度は、主な企業での労働条件が週所定労働時間20時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合に適用されることになっています。
しかし、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」は、複数の会社で勤務する65歳以上の方が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して適用対象者の要件を満たす場合に、自分でハローワークに申し出を行うことで、申し出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(「マルチ高年齢被保険者」という)となることができる制度です。
通常は雇用保険の被保険者資格取得は、雇用された会社が手続きを取りますが、マルチ高年齢被保険者になるためには、本人がハローワークで直接手続きする必要があるので注意してください。
対象者
マルチ高年齢被保険者になるには、下記1~3の要件をすべて満たすことが必要です。加入後の取り扱いは通常の雇用保険の被保険者と同じで、任意脱退はできませんので注意してください。
雇用保険に加入後、別の企業で雇用されたときも、下記の要件1~3を満たさなくなった場合を除き、加入する企業を任意に切り替えることはできません。
1. 複数の会社に雇用される65歳以上の労働者であること
2. 2つの企業(1つの企業における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
3. 2つの企業のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
(厚生労働省 Q&A〜雇用保険マルチジョブホルダー制度〜 より一部抜粋)
失業した場合の給付
マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合(1つの会社だけの離職でも適用)には、一定の要件(離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること等)を満たせば、「高年齢求職者給付金」を一時金として受給できます。すでに65歳以上となっていますので、65歳未満の方のように、基本手当をもらうことはできません。
給付額は、原則として、離職の日以前の6ヶ月に支払われた賃金の合計(2つの事業所のうち1つの事業所のみを離職した場合は、離職をしていない事業所の賃金は含めない)を180で割って算出した金額(賃金日額)の約5割~8割となる「基本手当日額」の30日分(被保険者期間が1年未満)、または50日分(被保険者期間が1年以上)が一時金でもらえます。
(※ そのほか、育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付等も対象になります)
手続きの流れ
マルチ高年齢被保険者としての適用を、希望している本人が手続きを行います。住んでいる住所を管轄するハローワークで手続きをしてください。
(出典:厚生労働省 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します 2022年1月1日スタートより抜粋)
注意点
・この制度は、副業をしている方本人がハローワークに申し出を行った日から被保険者となるため、申出日より前にさかのぼって被保険者となることはできません。
・複数の企業で勤務している方がマルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から、雇用保険料を納付する義務が発生します。
・事業主は、複数の企業で勤務している方が、雇用保険の資格の取得・喪失手続きを行う際に、必要な証明を行わなければならないことが法令で定められています。
(事業主の協力が得られない場合には、ハローワークから事業主に対して確認を行いますので、ハローワークに相談しましょう)
・事業主は、複数の企業で勤務している方が申し出を行ったことを理由に、雇止め、解雇、労働条件の不利益な変更など、不利益な取り扱いを行ってはいけないことになっています。
この制度に興味のある方は、お近くのハローワークへご確認ください。
出典
厚生労働省 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します 2022年1月1日スタート
厚生労働省 Q&A〜雇用保険マルチジョブホルダー制度〜
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント