更新日: 2023.01.04 その他暮らし
退職前に「有給消化」を拒否されたら、どうしたらいい? 対策を解説!
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
有給休暇という制度
有給休暇(年次有給休暇)とは、正社員やパート・アルバイトといった雇用形態に関係なく、一定期間勤続した労働者に対して付与される賃金が保障された休暇のことで、法律で定められた労働者の権利です。
有給休暇は、下記の2点を満たすことで取得できます。
●半年以上継続して雇用されている
●全労働日の8割以上出勤している
付与される日数は、勤続年数や所定の労働日数、時間によって、1日から20日の範囲となっています。
図表
出典:「厚生労働省 年次有給休暇取得促進特設サイト 労働者の方へ」
労働者は付与された有給休暇について原則、自由に使うことができます。雇用主は、事業の正常な運営を妨げるという場合にのみ、労働者が有給休暇を取得する時期の変更を行うことはできますが、有給休暇の取得そのものを拒否することはできないようになっています。
退職前の有給休暇の消化は拒否できないのが原則
労働者が退職する前の有給休暇の消化について、雇用主は拒否できないのが原則です。前述したとおり、有給休暇の取得は労働者の権利で、雇用主は一定の場合にのみ時期の変更ができるに過ぎないからです。
個別の事情にもよりますが、厚生労働省 長野労働局ホームページの有給休暇に関する相談の事例では、退職日まで残りの日にちが少なく、会社が有給休暇の取得時期の変更に指定できる他の日がない場合、労働者の請求どおり有給休暇を与えなければならないとしています。
有給休暇の消化を拒否されてしまった場合はどうすればいい?
退職前の有給休暇の消化は原則とはいえ、雇用主がそのことを知らなかったり、理解を得られないこともあります。そういった場合は、以下のような対応を検討してください。
有給休暇の取得について会社と話し合う
まずは雇用主と、退職日までの有給休暇の消化について話し合ってみてください。そして、有給休暇の取得は労働者の権利であることへの理解を求めてみましょう。
業務の引き継ぎなどをしっかり行った上で有給休暇を消化できることや、可能であれば退職日を延ばし、会社が変更を指定する日に有給を取得することで話がまとまる場合もあります。
有給休暇を買い取りにしてもらう
有給休暇の消化が不可能になった場合、雇用主による有給の買い取りについても検討の余地があります。
有給の買い取りは、労働者の権利でも雇用主の義務でもないため、必ず買い取りに応じてもらえるわけではありません。有給休暇は原則、労働者が休暇のために利用するものだからです。
ただし、有給休暇の消化が難しい場合、雇用主によっては退職日まで出勤してもらえるのであれば、有給の買い取りに応じるという考えを示すケースもあります。
労働基準監督署などに相談する
会社との話し合いがうまくいかなかったり、有給の買い取りも認められず、退職日までに有給が消化できないという場合は、労働基準監督署に相談することも有効です。
勤務先を管轄する労働基準監督署に相談することで的確なアドバイスを得られたり、勤務先に対して指導や確認などの対応をしてもらえることもあるからです。
また、勤務先への直接的な対応は望まないが、解決につながるような情報の提供を受けたいという場合、総合労働相談センターを利用してみてください。
有給休暇の取得は労働者の権利です
有給休暇の取得は労働者の権利であり、退職前の有給の消化について基本的に雇用主は拒否できないことになっています。
しかし、状況次第では自身の都合で有給を消化するよりも、例えば退職日を先に延ばして有給の取得を会社と調整したり、有給を買い取ってもらう方向に変えた方が、円滑に話を進められることもあります。
退職前の有給の消化を拒否された場合、会社と話し合いながら、必要に応じて労働基準監督署に相談するなどして、有給の取得について会社の理解を求めてみてください。
出典
厚生労働省 年次有給休暇取得促進特設サイト 労働者の方へ
厚生労働省 長野労働局 年次有給休暇に関する相談
厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内
執筆者:柘植輝
行政書士