借金問題を解決する3つの手段。 特定調停、個人再生、自己破産とは?
配信日: 2023.01.11
この記事では、債務整理の方法として、特定調停、個人再生、自己破産のそれぞれの概要、デメリットについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
特定調停とは
特定調停の概要とメリット、デメリットを解説します。
特定調停の概要
特定調停とは、簡易裁判所が、借金返済が困難な債務者(借り主)の申し立てにより、その債務者(借り主)と債権者(貸主)との話し合いの間に入って、返済条件の軽減ができるよう働きかけ、債務者(借り主)が生活を立て直せるようにする手続きのことをいいます。
特定調停では、借金をした当初にさかのぼって利息制限法の上限金利で計算して減額された元本を基に、分割して返済していくことになります。
特定調停のメリット
・自分の力だけで手続きできる
申し立ての手続きは裁判所の書記官が教えてくれ、調停では調停委員会が主導してくれるので、法律に詳しくない本人だけでも進めることが可能です。
・債務者本人が手続きをすれば、費用は安く済む
自分で手続きをする場合、かかる費用は1社当たり500円の手数料+予納郵券(郵便切手)のみです。債権者の数が少なければその分費用も安くなります。
・直接債務者と交渉しなくてよい
特定調停は、期日に申し立てた裁判所に出頭し、調停委員の主導で話し合いが進みます。調停委員の案に従って進行するため、債権者と口論になることはありません。
・借金整理をする債務を選べる
マイホームやマイカーを手放したくない場合は、そのローンを整理の対象から外して借金整理をすることができるので、財産が手元に残ります。
特定調停のデメリット
・裁判所出頭日は平日のみのため、仕事があると困難
特定調停の期日は最低でも2回あり、裁判所への出頭期日は平日になっているため、仕事を持っていれば休みを取る必要もあります。
・申立書や調停に必要な書類は債務者自身で作る
法的な手続きである特定調停は、申し立てから書類の作成までが非常に複雑で、時間もかかります。書類の作成に時間がかかって手続きが遅れると、その間は債権者からの取り立てが続きます。
・思ったように返済額が減らない可能性もある
特定調停を申し立てれば、必ず大きく借金額が減るとは限りません。自分が思うほどに返済額が減らない場合もあります。
個人再生とは
個人再生の概要とメリット、デメリットについて解説します。
個人再生の概要
個人再生とは、借金などの返済ができなくなった人が、裁判所に申し立てて返済総額を少なくし、原則3年間で分割して返済計画を立てる手続きのことをいいます。
債権者の意見を聞いて裁判所が認めれば、その計画どおりの返済をすることによって、残りの債務が免除されます。
個人再生のメリット
・借金を5分の1に圧縮できる
個人再生の場合、借金を5分の1程度まで圧縮でき、減額された借金を3年ほどで返済することになります。
・マイホームを残せる
住宅ローン特則の制度を利用することで、手続き期間中も自分が住んでいる住宅の住宅ローンだけは支払い続けられるため、自宅はそのまま所有し続けることができます。
ただし、
1.本人所有の家であること
2.床面積2分の1以上が居住用の建物であること
3.今本人が住んでいること
などの要件を満たす必要があります。
個人再生のデメリット
・手続きが煩雑で費用もかかる
個人再生は債務整理の中で最も難しく、裁判所に申し立てをするため、必要書類も多岐にわたります。
また、再生計画には多くの計算作業が必要となり、手間のかかる作業となるため、弁護士や司法書士など専門家へ報酬を払って依頼することになります。
・ブラックリストへ登録される
個人再生を行った場合、信用情報機関に約5~10年、事故情報が登録されます。登録されている間は、基本的にクレジットカードを作れなくなり、新たな借り入れもできなくなります。
・全ての借金が対象になる
個人再生では、債権者平等の原則という考えが適用され、住宅ローンを除く全ての借金が整理の対象となります。
自動車ローン、奨学金、個人からの借金など、債務といえるものは全て手続きの対象に入れなければなりません。このため、家族などに内緒で手続きを進めることは非常に困難です。
・官報に載る
個人再生を行うと、官報にも管轄裁判所・事件番号・氏名・住所などが掲載されます。一般の人はあまり見ることはないので、知人に知られる可能性は低いと思われますが、官報公告の情報を基に、闇金業者からダイレクトメールが届く恐れがあります。
自己破産とは
自己破産の概要、メリット、デメリットを解説します。
自己破産の概要
自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出して、支払不能状態であることを認めてもらい、免責許可が得られれば借金の支払義務が全て免除される手続きのことをいいます。
借金の支払義務が免除されれば、債権者からの支払催促もなくなり、債務者の精神的負担が軽減されます。
自己破産のメリット
・借金の支払いが全額免除される
自己破産をして免責される旨の決定が確定した後は、借金を支払う必要はありません。裁判所に支払不能状態と認めてもらうことで、債務者の支払い義務がなくなります。
・金融機関からの取り立てがなくなる
自己破産の手続きをしている間(免責許可が決定すればその後も)、金融機関からの取り立てがなくなります。
取り立てを行う金融機関であっても、弁護士が代理人として着任し、自己破産の手続きをする旨が金融機関に通知された時点で、債務者に直接に取り立てを行うことはできません。
・一部の財産は手元に残せる
自己破産すると、マイホームや自動車などの価値の高い財産は処分されるのが原則ですが、法律で自己破産後も所有が認められる「自由財産」については、手元に残しておくことができます。
手元に残せる自由財産には、「20万円未満の財産」「99万円以下の現金」「生活に必要な家具や家電」などがあります。
・家族に直接的な影響が及ぶことはない
自己破産した場合、信用情報機関に事故情報が登録されるのは破産者本人のみであり、家族の信用情報には影響はありません。
家族が保証人や連帯保証人になっていない場合は、自己破産によって家族が借金を肩代わりすることもありません。
自己破産のデメリット
・ブラックリストへ登録される
自己破産をすると、債権者が加盟する信用情報機関に、事故情報が一定の年数登録されることとなります。事故情報が登録されている間は、一般にクレジットカードの発行や新規の借り入れができなくなります。
・官報に載る
自己破産すると、破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回、破産者の氏名や住所などが官報に掲載されます。
一般の人はあまり見ることはないので、知人に知られる可能性は低いと思われますが、官報公告の情報をもとに闇金業者からダイレクトメールが届くおそれがあります。
・資格制限が課される
免責許可が得られるまでは一部の資格に制限が課され、当該資格の取得および使用ができなくなります。
制限対象となるのは
1.弁護士や司法書士、公認会計士などの士業
2.保険外交員
3.警備員
など、数多くの資格があります。免責が決定すれば、資格制限は解除されます。
・価値の高い財産が処分される
自己破産をしても全て処分されるわけではありませんが、自動車、持ち家、株式などの価値の高い財産を手元に残しておくことは困難です。
まとめ
特定調停、個人再生、自己破産のそれぞれの概要、メリット、デメリットについて解説しました。
債務整理の中には、自分でできるものもあれば、専門家でなければできないものもあります。自分でできると思っていても、書類作成などで手続きに時間がかかっていると、その間にも借金の取り立ては進んでしまいます。
どうすればいいのか迷うときは、早めに専門家に相談しましょう。
出典
裁判所 特定調停申立てQ&A
裁判所 個人再生手続利用にあたって
裁判所 自己破産の申立てを考えている方へ
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部