更新日: 2023.01.12 暮らし

「日本銀行総裁」が変わる? 日本経済の方向性を左右する「日本銀行人事」とは

執筆者 : 古田靖昭

「日本銀行総裁」が変わる? 日本経済の方向性を左右する「日本銀行人事」とは
現在の日本銀行総裁は、2012年12月に第2次安倍政権が発足し、その前の日銀総裁が任期満了する前に辞任したことに伴って就任した、黒田東彦(くろだはるひこ)氏です。任期が5年ですが異例の2期務めることになって現在に至ります。日銀の正副総裁人事は2023年3月に行われる予定で、すでに下馬評も飛び交っています。
 
本記事では、日本経済の方向性を左右する日本銀行正副総裁人事について解説します。
 
古田靖昭

執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

どうして日本銀行人事で日本経済が左右されるのか

日銀の目的は、紙幣の発行や、通貨・景気に応じた金融調節を行い、銀行間で行われる資金決済の円滑な確保を図ることで信用秩序を維持することです。とくに紙幣発行や金融調節によって物価を安定させ、銀行間決済を行うことで金融システムを安定させる役割があります。
 

日銀の役割

日本経済に直接的に関わってくるのが、通貨・景気に応じた金融調節です。金融調節は、「金利」や「通貨供給量の増減」を通じて行います。
 
物価が一定期間の間に下落する現象であるデフレーションが起きている場合、日銀が紙幣を発行して市場に流通している国債や社債などを購入し、通貨供給量を増加させて調節します。一方で物価が一定期間の間に上昇する現象であるインフレーションの場合、日銀が保有する国債や社債などを売却し、市場に流れている通貨供給量を減少させることで調節を行います。
 
もしデフレの際に通貨供給量を減少させてしまえば、さらなる物価下落が起こり、景気低迷を招くことになるでしょう。
 
また通貨供給量に併せて、日銀が短期金利の誘導目標を設定する政策金利を調節することで、デフレ時に金利を引き下げ、インフレ時に金利を引き上げることで調節します。しかしマイナス金利を導入したため、2016年9月の金融政策決定会合から長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、適切な水準に維持するために行うイールドカーブコントロールを導入しました。
 

日銀が実施する金融政策の影響力

日銀が実施した金融政策は日本経済において極めて効果があるものです。2012年12月に第2次安倍政権が発足し、経済政策としてアベノミクスを実施しました。アベノミクスは持続的な経済成長を実現するために、「3本の矢」を示し、その中の1本目の矢が「大胆な金融政策」です。
 
大胆な金融政策は、黒田東彦氏が日銀総裁に就任した後初めて行われた金融政策決定会合において、物価安定目標2%を定めて金融緩和を行ったことで実現しました。
 
日銀の金融緩和によって、図表1のようにGDPが増加し、GDPデフレーターが上昇に転じます。なおGDPとは、「Gross Domestic Product」の略称であり、国内において一定期間に生み出された付加価値の総額のことです。またGDPデフレーターは、物価動向を把握するために用いられる指標であり、インフレ傾向であれば上昇し、デフレ傾向になると下降を示します。
 
図表1 2013年を起点としたGDPとGDPデフレーター
 

 
内閣府 2020年度国民経済計算(2015年基準・2008SNA) 国内総生産(支出側)名目・デフレーター 暦年 より筆者作成
 
金融緩和を実施するために設定している物価安定目標は、図表2の消費者物価指数を見ることで検証が可能です。消費者物価指数は、世帯が購入する物やサービスの価格などを総合し、物価変動を時系列に測定した数値となります。
 
図表2 対前年比でみた消費者物価指数(生鮮食品およびエネルギーを除く総合)
 

 
総務省統計局 2020年基準消費者物価指数 年報 長期時系列指数 より筆者作成
 
アベノミクスによって瞬間的に2%を超えたもののその後下降に転じています。2013年から2014年の物価上昇は、金融緩和による影響といえるでしょう。しかし一時的なもので、デフレマインドの払拭には至らず安倍政権が終わり、菅政権、岸田政権へと続きました。
 

日本経済の方向性を決める金融政策決定会合

日本経済の方向性を決めるのは、第2次安倍政権が発足した後の日銀の金融政策の転換にあるように、金融政策決定会合です。
 
金融政策決定会合では、年に8回、2日間かけて金融政策の運営に関して集中的な審議を行って金融政策の方針を決定します。決定に際して行われる議決は、日本銀行法に根拠を持つ9人の政策委員である日銀総裁、副総裁2人、審議委員6人による多数決です。
 

日本銀行総裁は2023年4月8日に任期満了

日銀総裁は戦後になって14人が就任しており、1名を除き日銀出身者または財務省(旧大蔵省)出身者が交互に総裁に就任するいわゆる「たすき掛け人事」を行っていますが、改正日本銀行法が施行された1998年4月1日以降になると、3名の日銀出身者が就任し慣例が破られました。
 
財務省出身者の場合、現在の黒田東彦日銀総裁を除き財務(旧大蔵)事務次官経験者でなければ総裁になれず、また事務次官でも大物と認められる2年任期で行った人に限られてきました。
 
日銀総裁候補は、現在の副総裁で日銀出身者である雨宮正佳(あまみやまさよし)氏、または前副総裁で同じく日銀出身者の中曽宏氏です。そして副総裁候補は2年任期を全うした財務事務次官経験者としては、勝栄二郎氏と岡本薫明氏となります。また財務事務次官任期1年ではあるものの、消費税8%増税を実現させた木下康司氏も名が挙がっています。
 
もし慣例どおりになれば財務省出身者枠の副総裁は、2028年に日銀総裁になる可能性が高いでしょう。
 
現在の日本経済は、12月19日、20日に行われた金融政策決定会合において、いったんは長期金利の変動幅を拡大し、「事実上の利上げ」といわれたものの、景気の完全回復に至っていない現状です。仮に日銀の金融政策を転換し、利上げを行うことになれば、景気の腰折れが心配されます。
 
そこで持続可能な経済成長を実現するためには、現在出ている候補者だけではなくアベノミクスの政策理念に近しい若田部昌澄(わかたべまさずみ)日銀副総裁が日銀総裁になることで、黒田東彦日銀総裁が完全に実現できなかった政策を引き継いで、景気の完全回復を実現できる可能性が高まるともいわれています。
 

日本経済の方向性を左右する日銀正副総裁人事

日銀が実施する金融政策は、日本経済の動向に併せて適切な政策を行えば問題ありません。しかし政策を間違えてしまうと、景気が失速する可能性もあるでしょう。
 
日銀金融政策決定会合は多数決で行われるものの、金融政策の方向性を決めるのは日銀総裁や、補佐する副総裁です。つまり日銀正副総裁の発言や行動によって、日本経済の方向性が左右されてしまいます。
 
2023年3月に行われる日銀正副総裁人事は今後5年間の日本経済の方向性を占うため、注視する必要があるでしょう。
 

出典

日本銀行 日本銀行の概要

日本銀行 日本銀行の目的は何ですか?

首相官邸 アベノミクス「3本の矢」

内閣府 2020年度国民経済計算(2015年基準・2008SNA) 国内総生産(支出側)名目・デフレーター 暦年

総務省統計局 2020年基準消費者物価指数 年報 長期時系列指数(全国) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合

日本銀行 金融政策の概要 金融政策決定会合

日本銀行 金融緩和強化のための新しい枠組み:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(2016年9月21日)

日本銀行 金融政策決定会合における主な意見(2022年12月19、20日開催分)

 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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