更新日: 2023.01.13 子育て

国民の金融教育に「絶対外せないこと」とは? 経済で最も重要な役割をする「日本銀行」の存在

国民の金融教育に「絶対外せないこと」とは? 経済で最も重要な役割をする「日本銀行」の存在
2022年4月から高校で金融教育が義務化されました。文部科学省では「生きる力」を学習指導要領のテーマに掲げていることから、金融教育を導入して「生きる力」を育むことを目的としています。
 
金融教育において外せないのは、経済の動向を知ることです。とくに日本経済の方向性を左右する日本銀行の存在と役割については知っておく必要があるでしょう。
 
本記事では、金融教育で学ぶことや、外してはならない日本銀行の存在と役割を解説します。
古田靖昭

執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

金融教育の義務化によって何を学ぶことになったか

金融教育とは、お金や金融のさまざまな働きを理解することで、自分の暮らしや社会について考え、より豊かな生活や社会づくりに向けて主体的に行動できる態度を養う教育のことです。つまりお金を通じて自分自身の生き方や、豊かな生活、社会づくりに向けて自分事として行動できる人を育てていこうというものです。
 
金融教育は学習指導要領の改訂によって、高校の家庭科の授業で行うことになりました。学習指導要領には、「生活における経済の計画」として、「家計の構造の理解や経済と社会の関わり」や「経済の管理や計画、リスク管理の考え方」「ライフステージごとの課題や社会保障制度」といったことが項目に入っています。
 

具体的に学ぶこと

金融庁のホームページには、パンフレットや動画による解説などさまざまな教材があります。主な内容を紹介します。
 
・家計管理・生活設計
家計管理は適切な収支管理の習慣化が重要であり、手取り収入や支出の把握、お金の使い方の見直しなどを行うことを理解します。生活設計は、結婚や住宅購入、子どもの教育費などについて自分なりのプランを立てて、どのくらいお金が必要になるかを考えて予測します。
 
・預貯金
預貯金は金融機関を上手に利用する方法であり、金利や振込手数料、キャッシュカード管理、インターネットバンキングの注意点について理解します。
 
・株式・債券・投資信託
資産形成する方法として、リスクとリターンの関係や、分散投資、積立投資の効果、投資を始めるための準備などを理解します。とくに金融商品を選択して運用することについて、自己責任であることを学びます。
 
・生命保険・損害保険
生命保険や損害保険にどのような役割があり、どんなときに保障(補償)される内容なのかを理解します。また契約時に自分に合った保険を選択できているかなどの注意点も知ることができます。
 
・クレジット・ローン
クレジットカードやローンの仕組み、さまざまな機能について理解します。また返済方法や多重債務に陥る原因、依存症が引き起こす問題などを知ることができます。
 
・フィンテック
ITを活用した金融サービスとして、キャッシュレス決済や、家計簿アプリ、暗号資産などを理解します。
 
・金融トラブル
金融トラブルとして振り込め詐欺や、架空請求詐欺、還付金詐欺などがあり、ヤミ金融業者の種類について学びます。
 

金融教育において知るべき日銀の存在と役割

金融教育を学ぶ上で、物価や金利、経済の流れ、経済政策といった内容も重要になります。例えば銀行の普通預金を利用してもほとんど金利がつかない原因は、日銀の金融政策によるものです。つまり日銀の金融政策は、実際の生活にも深く関わります。
 
日銀の役割は、紙幣に「日本銀行券」とあるように紙幣の発行をしたり、過度な円高や円安、物価の継続的な上昇や下落、景気の過熱や後退といった際に金融調節を行ったりすることです。もし日銀が適切な金融調節を行わなければ、普通に生活している人に大きな影響を与えることになります。
 

2008年のリーマンショックの際の対応

2008年に起きたリーマンショックは、アメリカ大手の投資銀行であるリーマン・ブラザーズの倒産によって、世界的な金融危機が発生しました。
 
リーマンショックによる金融危機を回避するために、日本、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリアの主要先進国7カ国(G7)の中央銀行は、協調して政策金利を引き下げることに合意します。しかし日銀だけは協調利下げに加わらず政策金利を据え置いたことで、1ドル107円台だった為替相場が90円台に突入する円高になりました。
 
利下げを見送ったことで図表1のように翌年のGDPが大幅に減少し、GDPデフレーターも下降、経済が悪化しました。
 
【図表1】 2008年を起点としたGDPとGDPデフレーター


 
内閣府 2020年度国民経済計算(2015年基準・2008SNA) 国内総生産(支出側)名目・デフレーター 暦年 より筆者作成
 
日銀が金融政策を間違えてしまうと、日本経済に大きなマイナスの影響を与えてしまいます。
 

金融教育に必要なもの

現在行っている金融リテラシーや判断力をつける教育は当然必要なことです。金融庁が作成した教材を活用してお金についての学びを深めていくことも重要でしょう。さらにお金と金融政策が密接に関わっており、金融政策の失敗によって生活に悪影響を及ぼすこともまた併せて学ぶ必要があるのではないでしょうか。
 
ただし家庭科の授業の時間に行っているため、すべてを教えることは難しいかもしれません。その場合は、家庭科の他、「総合的な探求時間」を金融教育の時間に活用することを検討することも一つの方法でしょう。
 
総合的な探求時間では、実社会や実生活と自己との関わりから、自分で課題を立てて情報を集め、整理や分析しまとめた上で、生徒が発表などして表現することとしています。生徒自身がお金について考えてもらうためには、生徒自身が探求することも重要といえるでしょう。
 

出典

文部科学省 学習指導要領「生きる力」
金融広報中央委員会 知るぽると 金融教育プログラム (1)金融教育とは?
文部科学省 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 【家庭編】
金融庁 基礎から学べる金融ガイド
内閣府 2020年度国民経済計算(2015年基準・2008SNA) 国内総生産(支出側)名目・デフレーター 暦年
 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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